#7
「謝れ? ハッ、笑わせんな。どこにそんな要素あんだよ」
「ある。お前、さっきあいつに存在が迷惑って言ったろ? そういうの、絶対言うべきじゃないからな」
「あのさ……。さっきから何? 説教?」
あからさまにイラついた態度で、彼はテーブルの上に座った。
「転校してきてこっちの事情を知らないから優しくしてやろうと思ってたけど……あんまり調子のんなよ」
うお……っ。
あまりの変貌ぶりに怯んでしまう。でもそんな素振りを見せたらこいつの思うつぼだ。拳を握り、すかさず言い返す。
「その言葉そっくりそのまま返すっつーの! 何なんだよお前! 俺も別にゲイじゃないけど、あそこまで言えないし。ゲイが憎い理由でもあんのかよ?」
「……!」
彼は一瞬驚いた顔を浮かべた。何故そんな反応を見せたのか分からず、こっちも困惑した。
どうせすぐ元気を取り戻して反論してくるだろ、と思ったけど。
「……理由はない。気に入らないだけ」
先程までと打って変わって、弱々しい声が返ってきた。
理由ありますって言ってる様なもんだ。嘘下手か。
急に大人しくされると調子が狂う。しかし今回のことに関しては何も解決してないので、宥めるように問いかけた。
「七瀬は……恋愛とかしたことないの?」
「何、急に」
「性別がどうとか関係なしにさ。好き同士な奴らの仲を引き裂くのって、人を本気で好きになったことない奴がやんじゃないかな。……って思って」
かなり失礼なことを言った。これは相手が彼じゃなくても大噴火間違いなしだ。
でも何故か返答がない。怒り過ぎて放心でもしてるのかと思い、少し離れた位置からチラ見した。
「……っ!」
その瞬間、息を飲んだ。怒ってるどころか、七瀬は苦しそうな顔をしていた。
いや、苦しいというか純粋に、……悲しそうに見えた。
下手したら泣かせてしまうかもと、思わず謝りそうになる。
( でも元はと言えばこいつが暴行始めたからだしなぁ……どうしよ……! )
ここで謝ると暴力を肯定することになる気がして、とりあえず空気と同化することを選んだ。非常に気まずい。
何だろうな……。
七瀬はおかしい。でも何かが胸に引っ掛かる。
智紀はしばらく、夕焼けに染まる窓際を眺めていた。




