#6
存在が迷惑。
その言葉は、……言葉では表せないほど怒りを誘った。
「そんな言い方ないだろ!」
勢いって怖い。気付いたらドアを思いっきり開けて、自ら出陣してしまった。二人の視線を受けてから「こっち見ないで」ってちょっと思ってしまったから情けない。
けど、案外動揺が大きいのは俺より七瀬の方だった。
「智……紀、何でここに?」
「道に迷ったんだ。ここがどこか分からないけど、これだけは分かる。お前は人として言っちゃいけない事を言ったんだ」
とりあえず言うべきことは言えた。しかし七瀬の反応は非常にクールだった。
「そう、道に迷ったんだね。部屋出て突き当たりを右に曲がると音楽室が見えるからそこを」
「待った! 道はとりあえず後で……! それより何やってんだよ、離してやれって!」
案内を遮り、近くまで駆け寄る。七瀬を少年から引き剥がした。彼もかなり強い力で襟を掴んでいた為、手加減はできなかった。
変な話だけど、俺が思ってるより俺は怒ってたらしい。
「痛……っ」
綺麗な顔を歪ませる目の前の彼への罪悪感は少しで、後はいかにして謝らせるかって事ばかり考えていた。
「どう? 謝るなら離すけど」
「……ふ」
七瀬が何か言いかけた瞬間、
「くそっ! ふざけんな!」
解放された男子生徒は、生まれたての小鹿の様な足取りで走り去って行った。そんな……。
最終的に部屋に二人だけ取り残された。自分が勝手に乱入しただけなんだけど、こんなに虚しい気持ちにさせられるとは。
「おい、離せよ。もういいだろ、いないし」
パンッと手を払い除け、七瀬は自身の膝についた埃を落とす。
こっちはこっちで反省の色なし。くっそー。ここはガツンと言ってやらねば。
「おい、これで終わりだとか思ってないよな」
「思ってねえよ。ちゃんと別れたかどうか見届けるまでは逃がすつもりないから」
「じゃなくてっ! 後でもいいから、さっきの奴にちゃんと謝っとけって言ってんの!」
息切れしながら叫んだ。
こいつ、こんなに言葉が通じない奴だったなんて。
口も悪いし目つきも悪い。
性格も悪いし手癖も悪い。最悪じゃんか!




