#2
ひたすら廊下を歩いていた。だが校舎の端、終わりがきてしまった。屋外に出たので、誰もいない裏庭の方を見渡す。
もちろん目的地はここじゃなくて、保健室だ。けど俺は保健室の場所なんか知らない。そんなこと、俺も夕夏もとっくの昔に気付いていた。
ただ止まりたくなかっただけ。
お互い気付かないふりをした。
「男が好き……」
夕夏は長い時間を置いて、瞼を伏せた。明るくはないが、だからと言って低くもない声で訊ねる。
「それが何で俺にしかできない相談なの?」
「……うん」
それに応えるのはかなりの勇気が必要で、迷いまくった。けど外の空気を吸って、まず自分を落ち着かせた。
それで後は、思った事をそのまま言う。行動あるのみ、というか……。彼に初めて会った時からそうしてきたように、ただ想いを紡いだ。
「お前が好きなんだ。男が好きかもしれないとか、そういうのは一旦置いといて、単純にお前ともっと一緒にいたい。……だからすごい困ってるんだよ! 朝も夜もお前のことばっか考えて、テスト勉強もままならないし!」
流れる、暫しの沈黙。
それを打ち消して聞こえてきた夕夏の声は、期待を裏切らない冷たさだった。
「最後のは絶対当て付けだし……真顔でそんなこと言って恥ずかしくないのかよ」
「恥ずかしい!」
夕夏の問い掛けに即答した。じゃ言うなよ。って顔をしてるけど、そこは察してほしい。
「恥ずかしいけど……気持ち悪いって思われる方が怖いよ。それでも告白した俺の勇気を評価してくれ」
「情緒不安定過ぎる」
的確なツッコミを受けたけど、聞こえないふりをする。頑張って平然を装っていたけど、夕夏はまた動き始めた。
「もう平気。降ろせ」
どうしようか迷ったけど、だいぶ顔色は良くなっていたからお姫様抱っこはやめた。彼が微妙な段差に座ったので、とりあえず隣に座る。
「そうだ、告白するのに勇気なんていらない場合があったな。真っ赤な嘘な。冗談の場合」
夕夏は思いついた様にポンと手を叩いて笑った。
でもこっちは笑えない。
「おま……俺が冗談で言ってると思ってんのか」
「さぁ……。怒んなよ。そういう場合もあるってことだろ」
そう言われても胸に引っ掛かる。茶化してると思われてるなら断固として否定しないといけない。
確かに、ゲイ嫌いだから仕方ないかもしれないけど。俺も自分が男を好きになるなんて思わなかったから。




