#7
「今日はありがと、夕夏」
ジュースを飲みながら言うも、彼は無表情で頷くだけ。反応を期待してるわけじゃないんだけど、ちょっと疼く。
「なぁ、怒らないで聞いてほしいんだけど……俺といるの、いや?」
「え」
自分でも躊躇してしまうような質問だったけど、どうしても気になって怖々訊いてみた。
「猫といるときはともかく、他はあんまり楽しそうに見えなかったからさ。俺はお前といるの楽しかったけど、お前は違うのかなって……。強引に連れてきてめちゃくちゃ勝手だけど、あんまり無理はさせたくないから」
彼の笑顔が見たいけど、彼が苦痛に思うほど何かに付き合わせちゃいけない。それは本望じゃない。
だから少し距離を置くことも大事かな、なんて思った。以前なら絶対に離れないと決めていたけど、……ただでさえ彼は慎重に関わらないと逃げてしまいそうだから。
でも意外なことに夕夏は慌てて返事をした。
「待っ……楽し……いかは分かんないけど、少なくとも嫌じゃなかった!」
俺が先を歩いて、彼が立ち止まる。距離が空いたせいで、彼はけっこう大きい声で答えた。
「だから、迷惑じゃない。俺、しばらく誰かと遊ぶことなかったし、ずっと独りだったから。本当に楽しくても、何かよく分かんなくて」
夕夏は視線こそ外してるけど、真正面から向き合って不思議なカミングアウトをしている。
これもある意味告白だな。ちょっと一生懸命な感じが伝わってくるから面白い。
ていうか何だろ。段々と胸の中に熱いものが溢れていくこれは……。
「だから、その……っ」
でもこれ以上は可哀想な気がして、彼の方へ歩いた。
先へ繋げる言葉が見つからずに困ってる夕夏の頬を、軽くつねる。
「分かったよ、サンキュ。じゃあまた行こうな」
「……っ」
はにかんで言うと、夕夏は赤い顔のまま固まった。
「どうしたんだよ。また顔赤いけど、熱とかないよな?」
前髪をかきわけ額に手を当ててみる。熱いような、熱くないような。うーん、よく分からん。
「ひとりで帰れる?」
「あ、当たり前だろ」
「そっか。良かった」
気付けば駅に着き、もう別れの時間だ。
「寄り道しないで帰れよー。じゃあまた明日!」
手を高く上げて、大きく振る。彼は周りの目が気にして恥ずかしそうだったけど、最後は笑って手を振ってくれた。
あの笑顔は多分、苦笑に近い。
そう思ってもやっぱり嬉しかった。




