#8
「お前笑えるぐらい単純だよな。汚いことはなーんも知らない感じで」
夕夏は一呼吸置いて、軽い足取りで長い階段を降りていく。その様子は子どもみたいだ。
「掘られてもそんなあまっちょろいこと言ってられっかな?」
「だ、だから怖いこと言うな!」
でもやっぱり普通じゃない。いちいち脅す様なことを言って、人が悪すぎる。さっきまでの、弱々しくも可愛らしい様子はどこへ行ってしまったのか。
てゆーか、むしろこいつこそ“そういう”目に合わせてみたい……なんて、ちょっと想像してしまった。夕夏が、他の男に無理やり抱かれるところを。
男同士、って確か、後ろを使うんだよな。うーん、それは痛そう。俺は絶対ムリ。掘られるのはムリ。
でも、夕夏なら?
黙ってればマジで、男ということを忘れそうなほど綺麗だ。
その白い肌を汚して、艶のある髪を汗でぬらして、高い声で喘いだら。うん、意外と悪くない。いっそ直接いじめてみたい。
「わけないだろ!」
「急に何?」
あまりに卑猥な妄想をしてしまい、戒めとして頭を壁に叩きつけた。
いかんいかん。俺にそんな趣味はない。そんな変態的嗜好はないんだ。
今の下らない妄想は軽い皮肉みたいなもので、断じて自分の望みなんかじゃない。
でなきゃヤバすぎる……!!
俺をドン引きした眼で見ている彼は確かに、二度見……いや、ガン見したくなるほどの美貌だけど。
俺はゲイじゃないから関係ない!
そう思うと気が楽になってきた。
「あははは! よーし、帰ろっと」
「いまごろショックで頭がどうかしてきたか。不憫だな……」
夕夏は気の毒そうに俺を遠目で見てる。
でも大丈夫だ。変に意識してるなんてことはない。
……多分!




