#5
七瀬は落ち込んでる。何にショックを受けてるのか分からないけど、それだけは感じ取れた。
励ましにはならないだろうけど、素直に想いを吐き出すことにした。
「……来てくれて、正直、嬉しかったよ」
本当はそれを一番に伝えたかった。
でもテンパってしまったせいで言いそびれた。
彼がどういうつもりで乱入してきたのだとしても、助けられたのは事実だ。お礼だけはちゃんと伝えときたい。
「お前からも散々聞かされてたし、ゲイには耐性ついてきてると思ってたんだ。でも、さっきは正直焦った。部長だし、友達だし、抵抗すんのも躊躇しちゃって。でも変なとこ触られんのは絶対いやだったから……」
「触られた?」
七瀬は眉根を寄せ、こちらに身を乗り出してきた。
「あぁ、ちょっとだけな。もちろん服の上から。でもその時にお前が来てくれたから、何とかなったよ」
「それでももっと早くに来ればよかった」
苦い表情が、打って変わって苦しげに歪む。
とても、赤の他人の心配をするような顔には見えなかった。
「……怖かったろ」
細くて小さくて、短い言葉。
だけど今までの彼からは想像もつかない言葉だった。
あっれ……。
おまけに、こんな時に不謹慎だけど、ドキっとしてしまった。
「い、いや! 確かにびびったけど、もう大丈夫だって! 俺も男だから!」
プラス、ずっと膝に彼の内腿が当たってんのが気になる。別に構わない。嫌じゃないんだけど……何故かすんごく気になる。
「だからそんな、辛そうな顔すんなよ」
俺まで辛くなってくる。なんて、それもよく分からない。
けど七瀬には笑っててほしい。いつもみたいに険しい顔をするんじゃなくて、……俺が笑わせてやりたい。
彼の頭に手を置く。振り払われると思ったけど、案外しばらく大人しくしていた。
「……とりあえず、襲われなくて良かった」
「おう! お前のおかげだよ。ありがとな」
つい、嬉しくて前へ出る。したら彼とめちゃくちゃ顔が近くなってしまった。男にしては長い睫毛だと思ってるうちに、みるみる彼の顔が赤くなる。
「おい、七瀬? お前顔が真っ赤だぞ。熱でもある?」
「ない。それより近過ぎんだよ、離れろ!」
「離れろって、お前が俺の上に乗ってんだろ!」




