#2
智紀は動揺し、しばらくその場に佇んでいた。
頭を冷やそうと深呼吸をしてみたのだが、気持ちはそれほど変わらなかった。
「あ~……」
駄目だ。俺にも悪いところがあったのかもと考えたけど、やっぱりさっきの七瀬はムカつく。
このままじゃストレスで禿げる可能性があるので、何とか自分で自分を宥めた。
彼の態度に言葉。なにか急な事情ができたかもしれないし、気になる。
あいつこそ誰にも相談せず独りで溜め込みそうだし、心配だ。
本当はしつこく追いかけた方が良かったのかもな。……なんてことを思い始めていた。
でも追いかけた後どうしたらいいのか分からないから、いつも上手くいかない。
ここまで続けた部活を急に辞めるわけにはいかなくて、その日の放課後も行くことにした。
「須賀、喉渇かない? 自販機のとこ行こうよ」
無事に部活の練習が終わると、不田澤が話し掛けてきた。最近はもう毎日、この様に何かしらに誘われている。
智紀は上機嫌な不田澤と自販機がある校舎内まで戻った。道中、彼は淀みなく喋り続けていたけど。
「……それでさ、ふざけてくるからクラスの奴らほんとおかしくって!」
「へぇ……」
色々話してくれるところ悪いけど、話が頭に入ってこなかった。
七瀬は今、何しているのか。そればっかりだ。
「須賀、聞いてる?」
「あっ、ごめん! 何だっけ?」
駄目だ。また意識が別の方に……申し訳なく手を合わせると、強い力で引っ張られた。
「不田澤……?」
突然のことに反応できないでいると、誰も居ない教室に連れ込まれた。壁に押し付けられ、妙な所に彼の手が回っている。
「不田澤。ちょ、やめようぜ。くすぐったいから……っ」
これはもう、イヤな予感しかしない。それでも頑張って笑った。
「須賀はさ、こういうこと興味ないの?」
「ど、どういうこと?」
あくまでしらばっくれてると、とうとう手が脚の間をまさぐってきた。
「あ……っ!」
「そそる身体してるんだよ、須賀って。顔もタイプだし」
気のせいだと言い聞かせていたけど、今度ばかりは笑って流せない。確実に貞操の危機だ。
「ち、ちょっと……俺は無理だって!」
どんどん、手が良くない所に伸びていく。ベルトに手を掛けられた時は一気に鳥肌が立った。
怖い────!
その想いが爆発的に膨らんで、声にならない叫びを上げた。ただ一言、「助けて」と。
その直後に、不田澤の真後ろにあった椅子が勢いよく倒れた。うるさいぐらいの音が教室内に響き渡る。
何が起きたのかすぐには分からなかった。




