#1
梅雨明けが感じられる、快晴が続く。今日も智紀は部活へ顔を出そうとしていたが、その直前に“彼”から呼び出しが掛かった。
「何かお前と話すの久しぶりだな、七瀬?」
人気の無い階段の踊り場で、智紀は笑顔を浮かべる。教室でもすれ違うことが多かったせいか、二人きりになるのは本当に久しぶりだと思う。相も変わらず仏頂面の少年、七瀬と相対するのは。
「話があるんだろ。何?」
「あぁ。……めんどくさいから単刀直入に言う」
彼はなにかを躊躇っていたが、咳ばらいしてからハッキリ告げた。
「お前、サッカー部辞めろ」
「はぁ!? 何で!」
唐突だし、普通に耳を疑う言葉だった。
今一番頑張ってんのに、辞めろとか……!
「とにかく辞めろ、今日中に退部届け出しとけ」
「待て待て、だから何で! 理由を言えよ!」
「うるせえな。四の五の言わず従え」
彼のその問答無用な態度は、さすがにカチンときた。
「やだね。お前に従う筋合いはないし」
「あぁ? お前何様だよ……てっ!」
埒が明かない為、怒る七瀬の肩を掴み、強引に壁に押し付けた。
「こっちの台詞。部活入れって言ったり辞めろって言ったり。いくらなんでも勝手過ぎる」
「知るか。そう思うのはお前の勝手だろ」
答えにならない答えを吐いて、彼は抵抗する。
「俺は俺なりに考えて言ってんだよ。アンタみたく考えなしの馬鹿には難しいかもしれないけどな!」
「この……」
本当に、人を怒らせる才能はずば抜けてると思う。
故意じゃないとしても許せるレベルじゃなくなってきてるけど。
「かなり最初から気付いてはいたけどさ。お前、そうやって自分勝手に振る舞ってるから独りなんじゃねえのかよ?」
「だったら何だ!? いいから離せ!」
何かだんだん話とズレた取っ組み合いに変わってきてる。それでも今は無我夢中で、考える余裕はなかったけど。
「……大体俺が自分勝手になったのは独りになってからだ! だから関係ないんだよ!」
かなり強い力で押し返され、智紀は彼から手を離してしまった。
「おい、七瀬!」
止めようとしたけど向こうも相当ご立腹で、返事もせずに彼は階段を降りて行った。信じらんねぇ。アレじゃただのヤンキーだろ。
「何なんだよ……」
思い通りにいかないと怒る駄々っ子みたいだ。
それは一旦置いといて。“独りになってから”……ってどういう意味だったんだろう。




