#2
「須賀君か。編入試験のときは用事があって、立ち会えなくて悪かったね。俺は君がこれから過ごす二組の担任、笠置だ。これから一年よろしく!」
「よろしくお願いします!」
差し出されたすぐに手を取る。
朝の職員室で元気良く挨拶してくれたのは、担任になる男の先生。三年生の担当になるのは割と歳がいってる教師なのだと思ってたけど、この人はまだ若そうだ。
「これから朝のホームルームだし、一緒に教室に行こうか」
「はい!」
廊下へ出て、二人で雑談をしながら歩いていく。
この人に受験とかで色々お世話になるのかな、と考えて教室まで歩いていた矢先。
「お前、康太に告白したんだって?」
「告白……してたら、どうだって言うんだよ」
ちょっと揉めかけてる二人の男子生徒を見つけた。内容は何というか、恋愛のいざこざっぽいと瞬時に想像できた。
「あいつは俺と付き合ってんだよ。二度と手ぇ出さないでくれる?」
おおおっ。
なるほどなるほど、大体理解した。
でもそこの彼は多分知らなかったんじゃないかな。康太君、とやらに彼氏がいるって知ってたら、告白なんて……。
「……ん?」
ちょっと待て。ここは男子校だから男しかいないはず。 しかも康太って、どう考えても男の名前だから。
「うわあぁぁっ!!」
「ど、どうした!?」
突然絶叫した俺の元に、笠置先生は血相を変えて駆け寄る。
「お、おおお男が……男を、って……それは……アリなんでしょうか……?」
「な、何? もう一回言って」
「だから男が……!」
って待て待て。そんなこと聞いてどーすんだ。
同性愛ってどう思います? なんて言ってみろ。転校初日からヤバい奴だと思われる。大事な受験シーズンに担任から避けられたら終わるぞ。
咄嗟に我に返った自分に百イイネしたい。
気付けばさっきの二人もいなくなっていた。
ふー、焦った。でも冷静に考えて、誰が誰を好きになろうと自由じゃないか。
初めてのことでつい取り乱してしまったが、咳払いして振り返る。
「すいません先生、大丈夫でした」
「ほんとに大丈夫か? 悩みがあるなら聞くぞ。教室に入る前に」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ! ほら、早く教室行きましょ!」
「何か心配だな……」
先生は青い顔をして、教室の扉を開ける直前まで「本当に何も悩んでないんだな?」と優しく訊いてきた。俺はこの段階でそこそこ良くない第一印象がついた、と確信した。
「えっと、須賀智紀です。前の学校じゃサッカー部に入ってました。これから一年よろしくお願いします」
適当な自己紹介をすると、温かい拍手が教室に響いた。
嬉しいけど恥ずかしい時間だ。転校慣れしてるため緊張はしないが、こういうとき俺は大抵「ども」って言いながらヘコヘコする。
「じゃあ、早速授業始めるからな」
「えー、いっそ全員自己紹介しませんか! その方が親切でしょ」
「勉強したくないだけだろ! いいから始めるぞ!」
クラスの皆、笑ったりブーブー文句を言ってる。
良かった。朝の喧嘩事件から不安になってたけど、何だかんだで楽しくやってけそうだ。




