#1
「はあ……」
少し憂鬱な通学路。ここを歩くのはまだ二回目だ。高校三年生の須賀智紀はスマホを弄りながら溜息をついた。
三年生なのに、何故二回目の通学なのかというと。
もうすぐ五月になる、こんな時期に転校か……。
親の転勤による、避けようのない引越しからだった。転勤族の父親についていくしかないし、転校自体はもう慣れっこだけど、今回のダメージはかなりデカい。
実はたった今着いたこの学校。県内では有数の進学校で設備とか行事とかの評判は良いんだけど、……男子校なんだ。
今までがずっと共学だったし、この高校生活最後の夏は絶対青春しようと思ってた。夏=青春ではないし、青春=恋愛じゃない事はわかってますとも。
それでも退けない何かが俺にはあったんだ。なのに、くそぅ……親父は悪くないけど、最後の最後に男子校とは。
でも仕方ない。編入の試験も手続きもしっかりやったわけだし、今さら嫌だとは言えない。意を決して一歩踏み出した。
初めて来た時とは違う、登校時間の男子校の雰囲気ってどんなんかな?
「おぉ……!」
普通だった。
静かだ。運動部の朝練があるとか、校庭の方からは声が聞こえるけど。
どこも朝はこんなもんか。再びスマホに視線を移して歩き出そうとした。……けれど、目の前にある僅かな段差に気付かなくてバランスを崩してしまった。
やべっ……!
慌てて片方の足を前に出そうとする。けどそれより先に誰かに腕を掴まれ、後ろへ引き寄せられた。
「大丈夫?」
「あ、あぁ。ありがとう……!」
朝から心拍数が上がる。
いかんいかん、初日から恥かくとこだった!
支えてくれた少年に感謝しながら、ゆっくりと向き合う。そこでやっと気付いたけど、何か。
「良かった。スマホ見ながらは危ないよ。先生に見られてたら怒られると思うから……気をつけて」
すごいイケメンを見つけた。
身長はそこまで高くないけど、かなり整った顔をしてる。きっと共学ならモテてただろうなぁ。まぁどれだけ綺麗でも、やっぱ男だ。どうでもいい、というのが本音。
「どうも、気をつけるよ」
パッと見は下に見えたけど、タメ語使ってきたってことは同じ三年だろうか。とりあえず忠告通りスマホをポケットに仕舞い、職員室へ向かう。
……ちょっとだけ、不思議な感じの彼が気になりながら。




