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不気味令嬢は、氷の貴公子に溺愛される  作者: 青海きのこ
第2章ノクス編

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第5話 ルシアンの滞在(ヴィクトール視点)

――勝った。あの、くそ皇太子に思い知らせてやった。


忌々しい贈り物を思い出しながら、ヴィクトールは悦に入っていた。

昨夜のエマは可愛すぎて溜まらなかった。

この日をどれだけ待っていたことか……。


湯あみをしてから、夫婦の寝室に入ると、今日もまたエマがベッドサイドに座っている。

昨夜のような妖艶な夜着ではなく、今日は清楚なネグリジェに変わっていた。


――可愛すぎる。


顔が緩まないように、真顔を保つことに集中する。


――デレデレした顔ばかりして、呆れられてもいけないからな。


そっと横に座ると、エマが「あ」と顔を上げる。

ヴィクトールはエマの柔らかい髪を自分のもののように触れ、「エマ、身体は大丈夫?」と尋ねた。

昨夜のことを思い出したのか、エマが真っ赤に顔を赤らめている。


「昨夜は無理をさせてしまったね」


エマのネグリジェからは、昨夜思う存分に残したヴィクトールの所有印が見えている。

ヴィクトールがその跡をそっと指でなぞった。


「跡、いっぱい残してしまってごめんね。制御できなかったんだ」


制御できなかったのは本当だが、改善するつもりなど露ほどもない謝罪を口にした。

エマは困ったような顔をしてヴィクトールを見上げる。


「その……お気をつけください。こんなに跡が残っていると……服も、選べません」


エマはヴィクトールに恨みがましい視線を送った。


「気をつけるよ」


ヴィクトールはそう言って、エマの頭に口づけを落とした。

無論、気を付ける気は毛頭ない。

今日のエマは、首も全て見えないようにしていた。

季節外れの服装をさせるのは可哀そうではあったが、あの男が滞在している間は油断できない。

エマが既に既婚者となったことを、知らしめないといつまでも纏わりついて来る。

なんだって、さっさと国に帰らないのか。


「ヴィクトール様、あの……」

「ん? どうした?」


エマは何か言いにくそうにしている。


「その……本日のことですが……」

「うん」

「大変申し訳ないのですが……身体が……」

「……ああ、わかっている。君を壊すつもりはないよ」


そう囁くと、エマはほっとしたような顔をした。


――そんな顔されると、意地悪をしたくなるな。


言葉と裏腹に、ヴィクトールの指先は彼女の細い腰をがっしりと離さなかった。

自分の理性は、どれほど薄い氷の上を歩いているのか。


ヴィクトールは昨夜眠るように意識を失ったエマを抱きしめる満足感と、新たな欲望に苦しんでいた。

自分の体力とエマの体力を同じようには考えてはいない。昨夜は初体験に怯えるエマを優しく、ただ甘やかしたかった。エマを大切にしたいと思う一方で、独占欲を思い切り満たしたい思いがせめぎ合う。朝もあまりにエマが愛らしすぎて、剣術の稽古に励み、自分の熱を鎮めるのが大変だった。

そういうヴィクトールの苦労を、エマは分かっているのだろうか。


「じゃあ、寝ようか」と、エマを抱き上げた。

「ヴィクトール様! 何をなさるのですか」


エマを布団の中央に移動させると、覆いかぶさるように深い口づけをした。


「あっ……」


唇を離すと、焦点が定まらないような顔のエマがヴィクトールを見ると、さっと目を反らした。


「……なさらないって……おっしゃったのに」


潤んだ瞳で非難がましい言葉を口にした。

ヴィクトールは内心で深いため息をつく。


――本当に、そういう顔がどれほど私の独占欲を煽っているのか、自覚してほしい。まあ、それがエマの愛らしさでもあるが……。


彼女の首筋に残した自分の“痕跡”をなぞり、獲物を愛でるような微笑を浮かべる。


「うん。しないよ。最後までは。エマの身体に負担をかけたくないからね」


ヴィクトールはエマの腰をそっと撫でた。

エマの全身が、カアァ……と色づいた。

逃げ場を塞ぐように彼女を腕の中に閉じ込めると、エマの甘い香りが理性を焼き切ろうとする。


「口づけくらいはさせてよ。少しは、私の我慢の限界を思い知ってもらわないと困る」

「ヴィクトール様……」


エマの潤んだ瞳に吸い込まれように、ヴィクトールはエマの身体に顔を埋めた。


◇◇◇


朝食がいつもよりも一段と美味しく感じる。

母に「いつまで締まらない顔をしているの」と嫌味を言われても、何も気にならない。


昨夜は我慢したから、エマも少しずつ体力が回復していることだろう。

昨夜のエマも最高に愛らしかった。

エマの全身に触れて、口付けた。ヴィクトールの手や唇で与えられる慣れない快感に、悶えるエマが堪らなかった。あのまま、強引に奪わなかった自分の理性を誉め称えたい。


朝食を食べながら、つい昨夜のエマを思い出しては口元が緩む。

父にも「仕方ないな……」という顔で見られたが、そんなことは全く気にならないほどに、エマがヴィクトールの心を占めていた。


「エドワード殿はいつまでいられるんだ?」

「私は明後日には。いつまでも祖父母を二人にもできませんから」

「そうか。残念だな」

「私はもう少しご厄介になるぞ」


ルシアンがすかさず割って入った。

ルシアンの言葉に、上機嫌なヴィクトールの手がピタッと止まる。


「どうした? ヴィクトール。喜んでくれないのか?」


「ん?」とヴィクトールを見ながら、朝食を食べている。


「もちろん……、嬉しい、ですよ」

「エマ、エドワード、今日はノクス領を見て回らないか?」


エマも、エドワードも、ルシアンの提案に楽しそうな声をあげた。


「だったら、ヴィクトール。今日、皆さんをお連れして案内してあげなさい」と、父が言う。

エマはそんな父の言葉に恐縮して、「でも、ヴィクトール様は政務もおありでしょうから、私たちだけでも……。ノクス領に滞在していたときにも、地図はよく見ていましたから大丈夫だと思うんです」


エマの発言に、ヴィクトールがピクッと眉が動いた。


――エドワード殿がいるからと言って、私がいないところでルシアンと外出なんてさせるわけがないだろう。気を遣ったつもりなのだろうが……。まったく。


「何を言ってるんだ、エマ。私が連れて行くに決まっているだろう」

「そうそう、エマ。気にしなくていいのよ。あなただってノクス領をゆっくりと見て回るのははじめてでしょう? ヴィクトールは式の前に溜まっていた政務も、あなたと一緒に過ごすために死ぬ気で終わらせていたみたいだから」


母がエマに耳打ちする。

ヴィクトールが母を制するための咳払いをした。


「あまり余計なことをおっしゃらないでください」

「本当のことじゃない」


エマは自分との生活のために、頑張った夫の健気さに嬉しさを噛み締めるように微笑み、少し顔を赤らめながら「じゃあお願いします」と言った。


「ノクス領って初めて来たから、楽しみだな」と、エドワードが無邪気に言った。

エマの弟君は、年の割にずいぶん素直な気質で、まるで少年のようだ。

ルシアンもそんなエドワードに同調するように「楽しみだな」と、ヴィクトールを見て笑った。

昨日1万pv達成しました。皆さまのおかげです。

本当にありがとうございます。

活動報告も更新しましたので、良ければお読みください。

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