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不気味令嬢は、氷の貴公子に溺愛される  作者: 青海きのこ
第1章アステリア編

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第37話 準聖女認定式

第37話 準聖女認定式


薄紫のローブは、銀糸で飾りが付けられた上品な仕上がりだった。この色を見て、エマのために誂えてくれたものだということは一目見て分かった。ローブを身にまとい、王宮の侍女たちに髪や化粧を整えられた姿を見ると、それなりに準聖女らしく見えるようになった気がした。


聞きなれた規則正しいノックが聞こえ、扉を開けると騎士の正装をしたヴィクトールが立っていた。


「教会まで、エスコートを」


エマはヴィクトールの右腕にそっと手を添えた。


「聖女さまをエスコートするのは緊張するな」

「おふざけは止してください。ヴィクトール様」


ヴィクトールは、緊張した様子のエマにふふっと笑った。


「本当なのに……。聖女の君も美しい」

「“準”聖女です」

「私にとっては、いつだって君が聖女だ」


ヴィクトールはマジマジとエマを見て言った。

いつものいでたちと違うヴィクトールに、ドキンと胸が飛び跳ねる……。

青地に金銀の糸をあしらった騎士服は華やかで、いつも素敵だけど、いつもよりもずっと――。


「髪飾り、してくれているんだね」


ヴィクトールはエマの髪の髪飾りに気付くと嬉しそうに笑った。


「ええ。私のお守りですもの」


もう魔石の力が働かないのは分かっていたけれど、エマにとっては大切なものだ。何度もエマのピンチを救ってくれた。これからもエマのピンチを救ってくれる気がしている。


大聖堂の入口までヴィクトールがエスコートをして入ると、既に教皇が礼拝の前に立っていた。認定式には限られた人間しか参加することができない。そのため、大聖堂には教会関係者のほかは、王宮関係者に限られていた。ヴィクトールと別れ、礼拝堂まで一人で進んだ。国王、王妃、カイル、ケイティ、ルシアンなどの姿が目に入った。会場の端の方に、両親がいることにも気が付いた。久しぶりに見る両親は、どこか他人のようで――でも、ここに来てくれたことは嬉しかった。


みんな、来てくれたのね。


エマはずいぶんと緊張していた。本当に準聖女として認定されることが正しいことなのか、いまだ迷いがないわけではなかった。魔獣討伐に尽力したのは事実ではあるが、やはりあの力が発動したのはケイティの魔力の存在が大きい。エマの価値はさほど大きいとは思えなかった。

それでも、私を助けてくれた人たちの言葉を信じたいと思っていた。


だから……――。


エマは教皇の前で恭しく礼をした。


「エメリン・リュクノール」

「はい」

「そなたを聖光教会の準聖女に認定する」


教皇は女神に宣誓をした。


「準聖女・エメリン、聖女・ケイティと共に、この国を平和へと導いてくれ」


教皇がエマに柔らかく微笑みかけた。

教皇を見上げると女神の銅像と目が合ったような気がした。私の決断は間違っていないと、言ってくれているようだった。エマは気持ちを引き締めて、教皇と女神に誓いを立てた。


その瞬間、大聖堂は大きな拍手に包まれた。


◇◇◇


「あんな不吉な見た目で聖女気取りだなんて……」

「ヴィクトール様の婚約者というだけでも腹立たしいのに」

「闇魔法を操っているそうよ……恐ろしいわ」

「ヴィクトール様も、あの女に操られているんじゃないかしら」


王宮貴族の中では、いまだエマに心無い言葉を浴びせるものはいた。

エマはその言葉を聞くと、落ち込むというより、まあそうだろうと言う気持ちになっていた。

なんとなく、そういう言葉の方が自分にはしっくりと馴染んでいた。


「エマ様~!」「ケイティ様~!」


お披露目式に現れたときの民衆の歓迎ムードの方が、どうにも慣れない。

認定式後、民衆へのお披露目式ということで王族や聖女と並んで、エマが紹介された。


国王が民衆に向かって声を張り上げた。


「アステリアへの魔獣襲来に、多くの人を不安にさせたことを申し訳なく思う。魔獣の襲来はアステリアにとっては非常に忌まわしき出来事であった。しかし、どこにも希望の光は差し込むものだ。あのとき、皆も目にしたであろう。こちらにおられる二人の聖女の力によって、光の柱が立ち上りアステリアを襲った魔獣たちが一瞬にして消え去った。我がルーク王国に、新たな聖女が現れたのだ!」


国王の言葉に、民衆の歓声が大きくなる。


「エメリン・リュクノール! 我が国の準聖女だ!」


エマは国王に紹介され、民衆に向かって恭しく礼をした。

エマが礼をした瞬間、一瞬静寂が訪れたが、すぐに辺りは大歓声に包まれた。


民衆に一体どんな反応をされるのだろうかと思っていたが、多くの民衆が歓迎してくれているようだった。控え目に手を振ると、興奮したような叫び声が上がる。


「人気者ね、お姉さま」

「ケイティに手を振っているんじゃないの?」

「今日はお姉さまのお披露目ですから。私はおまけのようなものですよ」


ケイティを呼ぶ声とともに、「エマ様~!」という歓声も至るところから聞こえていた。


よく見ると、ロイが家族と一緒に来てくれているようだ。

ロイに手を振ると、ロイが嬉しそうに手をぶんぶんと振ってくれている。

ロイのご家族だろう。エマにペコリと礼をした。

ケイティが会いたがっていると言ってくれていた兵士たちだろうか。

エマに笑顔を見せて手を振ってくれている。良かった、元気そう。


エマはお披露目式に集まってくれた民衆を見た。

私を受け入れていないものは当然いるだろう。でも、こうして私を歓迎してくれる人達もこんなにいる。そのことがエマにはとても尊いことのように思えた。

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