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不気味令嬢は、氷の貴公子に溺愛される  作者: 青海きのこ


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第29話 誓い

第29話 誓い


お昼は露店で買った星型の串焼きを食べた。

串が刺さったままのものを食べるのは初めての体験だったけど、楽しかった。

色んな露店も見て回って、お揃いのペンと、しおりを買った。


ケイティが正式に聖女に認定されてからは、毎年のように誘われていた。でも、行きたいと思ったことはなかった。この髪色も、瞳の色も、悪目立ちしてしまうと思っていたし、「ではない方の令嬢」「不気味令嬢」という王都の貴族に囁かれるあだ名も、エマを憂鬱にしていた。


でも、実際に来てみて、自分の考えが偏っていたことに気が付いた。

エマの髪色や瞳の色を見る人はいたが、それは全員ではなかった。もっと言うと、エマの容姿を気にする人のすべてが、悪感情を持っているようにも思えなかった。ただ珍しくて見ているだけかもしれない。


いつもフードで覆い隠していたことで、余計に注目を集めてしまっていたところはないだろうか。


エマは自分の行動を省みていた。


「楽しそうで良かったな。その服も、似合ってる」


久しぶりにレイヤードが傍らに来て、声を掛けてきた。

ヴィクトールがお手洗いに行っている間、レイヤードが傍にいてくれている。


ナタリーもそうだけど、レイヤードも、ずっと私の傍で見守ってくれていたのだ。

改めて、そのことに気が付いた。


「――ありがとう」


レイヤードは、服を褒めたことのお礼だと思っているのだろう。照れたように、目を反らした。


「レイヤード、これ」


エマは先ほど露店で、レイヤードやナタリーへの土産も選んでいた。

レイヤードには革小物、ナタリーには携帯用の鏡にした。どちらも星の意匠が凝っている。


「え?」

「いつも、お世話になりっぱなしだから。星まつりは大切な人に贈り物をするのでしょう? レイヤード、いつもありがとう」

「あ……エマ、嬉しい……んだけど、俺、殺されるかもしれない」

「え? 何言ってるの?」


レイヤードは初めは嬉しそうにエマの贈り物を受け取ったが、なぜかその表情が段々と青ざめていた。


「エマ、これはありがとう。エマが嬉しそうな姿を見られて俺は嬉しい。でも、まだ命は惜しいから離れることにするよ」


レイヤードは逃げるようにエマから離れた。


――変なレイヤード。


振り向くと、微笑を称えたヴィクトールが立っていた。


「エマ、待たせたね」

「いえ、全然」


戻ってきたヴィクトールから謎の圧を感じたが、エマからヴィクトールの手を取るとそれが少し和らいだ気がした。


「ヴィクトール様、今日は本当に楽しいです。誘っていただいて良かった」


エマはヴィクトールに微笑んだ。


◇◇◇


夜が更けて明るい街の雰囲気が、段々とロマンチックなものに変わっていくのを感じた。

ヴィクトールはカイルに連れられて、時々お忍びで街を訪れることもあるようで、街のお店にも詳しかった。いつの間に準備をしてくれていたのか。街で人気のレストランも予約してくれていた。


「アイツに連れられて来ているときは楽しいと思ったことはないが、エマと来るとこんなに楽しいんだな」


ヴィクトールは、カイルの名を出すわけに行かないからか、不敬にも「アイツ」と呼んでいる。私はカイルとヴィクールの気の置けないやり取りを知っているから、これはヴィクトール流のカイルへの親愛の情の示し方なのだと思っていた。カイルに不遜な態度を取るヴィクトールが面白くて、ふふと笑う。


「私は引きこもり生活でしたから、こういうことは初めてですけど。本当に、楽しいです。ここのレストランもとても美味しいです」


星まつり用のメニューなのだろう。随所に星があしらわれている。


窓からも夜景が見える。明日が星まつりの本番だけど、今日の星空も本当に美しい。

食事を終え、デザートを食べながら窓の外を眺める。

ヴィクトールと同じ、空を見上げていることが嬉しかった。


「美しいな……」

「ええ、本当にきれいな星空」

「星空もそうだけど……。エマ」


ヴィクトールは、窓の外を眺めるエマに呼び掛けた。振り返ると、ヴィクトールがポケットから箱を出した。


「これは……?」

「遅くなったが、婚約指輪だ」

「え……リュクノール領に送ったのでは……」

「王都への滞在が伸びただろう。王都での受け取に変更していたんだ」


――いつの間に……。


本当にヴィクトールは、仕事が早い。カイルがヴィクトールの手腕を買って離さなかったのも頷ける。


あのとき、一緒に選んだ指輪。

エマはヴィクトールに礼を言って受け取り、箱を開けた。


エマとヴィクトールの瞳の色が混ざり合ったようなタンザナイト。

ああ、やっぱりこの石にして良かった。

エマが指輪を手に取ると、指輪の裏に刻印が刻まれていた。


――私はあなたのもの。


ヴィクトールの名を刻印してくれと頼んだはずの指輪の裏には、そう刻まれ、彼のイニシャルが添えられていた。


「これ……」

「エマ、私につけさせてもらっても?」


ヴィクトールはエマの手から指輪を受け取り、エマの左手薬指に指輪をはめた。


「エマ、私のすべては君のものだ。何があっても君を守る。君から絶対に離れない」


指輪をはめたエマの指に、ヴィクトールは口づけを落とした。エマの手は、喜びで震えていた。


「ヴィー、私も……。私のすべても、あなたのものです。あなたの御身に何があっても、あなたを守ります」


エマは今まで人生で見た中で、最も美しい星空に、そう誓った。

昨日読みに来てくださった方、すみませんでした。投稿したつもりで最新話の投稿ができていないことに今朝気付きました。完結まで書いておりますので、途中でやめることはありませんのでご安心を。今後はうっかり未投稿ないよう気をつけて投稿いたします。本日は3話分投稿します!

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