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第29話 魔王の娘がA級パーティーから見られる

「では、具体的な作成を説明しましょう」

 

 シャーイは紙を広げて、ダンジョン内での動きを説明していく。

 ダンジョンの内部は、詳細に判明していない。

 そのため、紙には冒険者たちの記憶だよりに書かれた簡易な地図が書かれていた。

 その地図の上に、冒険者たちの組を示す丸が描かれ、丸から引いた矢印で進むべき方向が示されている。

 もっとも、分かれ道の度に矢印が二つ別れることを繰り返しているだけだが。

 

「奥に行くほど人数が減るんですか? 危険では?」

「危険だと思ったら、すぐに後退してください。そして、直前の道で分かれた仲間と合流をお願いします。その後、さらに後退するか前進するかは、皆様の判断にお任せします」

 

 都度挟まれる冒険者たちからの質問にも、シャーイは速やかに答えていく。

 

「ふうむ。数の多い、人間らしい手じゃな」

 

 ムニはシャーイの説明を聞きながら、納得したように呟いた。

 魔王の娘として、ムニは魔王の采配を見ていた。

 同時に、敵として存在する人間たちの采配も見ていた。

 魔王の采配は、魔族一人ひとりが好き勝手に動くのを互いに妨げないためのもの。

 個の力を重視する、魔族にとって最適な形だ。

 一方、人間の采配は、それぞれが与えられた役割をこなすためのもの。

 個ではなく集団による目的を考えられていた。

 

 魔物の殲滅とダンジョン内部の構造確認、同時に二つを取ろうとするシャーイの采配は、ムニにはない視点だった。

 

「分かれた結果、単独になった場合は?」

「二人以上での行動を必須としてください。一人になってしまうと、行方不明になった時に死んだのか逃亡したのかわかりませんから」

「二人組の時に分かれ道と遭遇した場合は?」

「撤退か、二人組のまま片方の道に前進してください。どちらを選択するかは、現場での判断にお任せします」

 

 集団任務の場合、最も重要なのは規律を守ることだ。

 つまりここでは、シャーイの意思を絶対とすることだ。

 依頼をこなせば依頼主から依頼料が発生する通常の依頼と異なり、集団依頼ではシャーイが依頼料を受け取り、シャーイの采配によって依頼料が配分される。

 シャーイの意思を無視したとなれば、受け取ることのできる依頼料が大きく目減りすることは必然。

 冒険者たちは、シャーイから必要な情報を聞き出していく。

 

 質問がなくなったところで、シャーイは組み分けを発表する。

 発表されるのは、四つのグループまで。

 爽剣の毘沙のメンバー四人が、それぞれ指揮を執る四つのグループ。

 以降について明示されないのは、やはり現場の判断ということだ。

 

「ダンジョンに入るのは、二日後の朝。それまでに、各自準備を整えておいてください。同じグループとなったメンバーとも、足を引っ張らない程度には交流をお願いします」

 

 説明を終えると、シャーイは建物を後にした。

 途中、シャーイの視線がムニを捕らえたが、ムニは気づかない振りをした。

 人間と魔族が戦う際、前線に出るのはほとんどがA級冒険者だ。

 自身が魔族と関係があると思われないように、努めてただの子供を演じた。

 

「おんなじ組だね、アルハ!」

「そうだね。知ってる顔が一人でもいると、心強いよ」

 

 シャーイの去った後、冒険者たちは同じ組の人間と話したり、さっさと指定された宿泊先へ向かったりと、思い思いに動く。

 そんな中、ジアは真っ先にアルハの元へとやってきた。

 いつも通りの雑談が交わされると、アルハの気も楽になった。

 

「カファさんって、どんな人なの?」

 

 アルハはついでにと、シャーイたちと同じ依頼を受けたことがあるジアへと尋ねた。

 

 爽剣の毘沙、A級冒険者のカファ。

 今回、アルハとジアが振り分けられた組のリーダーを務めている。

 ジアは顎に手を当てて、過去の記憶を振り返る。

 

「うーんとね、結構若い人だよ。私たちと、三歳くらいしか変わらないんじゃないかな?」

「へえ」

「髪が、白と黒で半分こになってるから、見ればすぐにわかると思う。後は……当然だけど、職業は剣士。あんまり喋ってる記憶はないから、大人しめの性格かも」

「剣士は、豪胆な人と寡黙な人に分かれるって聞くしね」

 

 アルハとジアは、しばし他の冒険者たちとも交流をした後、指定された宿泊先へと向かった。

 

 

 

 

 

「ムニ。わかってると思うけど、ダンジョンには連れて行けないからね?」

 

 宿泊先の一室で、アルハはムニへ念押ししていた。

 モガによって、ムニの村までの同行が許可されはしたが、ダンジョンに入るまでは許可されていない。

 否、そもそもB級ダンジョンである以上、如何なる場合も許可されることはない。

 

「無論、わかっておるわい。妾を誰だと思っておる? てきとうにその辺で飯でも食って待っておるわ」

「……戻って来たときのお金の減りが不安だなあ」

 

 アルハは苦い顔をしながらも、ムニの言葉を信じてダンジョンへ入るための準備を始めた。

 持ってきた大きなカバンから小さな袋を取り出して、ダンジョンに持って入るものだけを詰め込んでいく。

 必要な物が足りているかを頭の中で考えながら、不足している物をメモに取り、明日買い出しに行かねばなどと考える。

 

 一方のムニは、自分がここにいる理由を考えていた。

 モガとの関係は悪くないつもりだったが、ムニのために一肌脱ぐほど関係が良いつもりもない。

 

(疑われているのは、妾かアルハか。どのみち、妾は大人しくしておいたほうが良かろう)

 

 アルハとムニが宿泊先へと向かって歩く間も、ムニは視線を感じていた。

 直接的な視線ではなく、魔法を使用した遠方からの視線。

 さすがに部屋に入った後は視線も消えたが、ムニにはきちんと疑念を残していた。

 

 ムニは荷詰めをしているアルハの背後に立って、その背中に人差し指を当てた。

 

「わっ!? 何?」

「なに。ちょっとした、まじないのような物じゃ」

 

 今のアルハならば、B級ダンジョンに入っても死にはしない。

 ムニは保険をかけつつも、安心してアルハを見送った。

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