第10.5話
魔王城で生活していた頃のムニは、次期魔王として英才教育を受けていた。
「ムニ様ー!?」
「お戻りくださいー!」
が、そんな生活は窮屈そのもの。
ムニは定期的に、魔王城からの脱出を試みていた。
「くくく。妾が本気を出せば、こんなものよ。さて、町に降りて、毒サソリ串でも食うとするかのう」
魔王の血筋からなる先天的な才能。
英才教育による後天的な才能。
両者を掛け合わせたムニの行動を、並の魔族では捉えることなどできなかった。
ムニは、魔王城に捕らわれている姫ではない。
ムニ自身の意思でとどまっている姫である。
故に、ひとたび外へ出ようとすれば、出ることなど容易だった。
「しばし、さらばじゃ。我が城よ」
ムニは窓を開けて、窓の縁へと足をかけた。
「……ん?」
その瞬間、縁に備え付けられたスプリングスネークの尾で作られた罠が作動。
縁が突き上がり、ムニの体が上に飛ばされた。
「ふんぎゅぶ!?」
が、ムニの頭上には窓の縁。
上にも下にも突き上がる縁。
「あばばばばばばばばば!?」
ムニの体は上下に弾き返され続け、ムニはその場から一歩も進めなくなった。
「おととととととととうさささささささささささささまままままままままままま!? ごごごごごごごごごごごめめめめめめめめめめ!?」
魔族たちが、ムニの元へと集まる。
迷惑をかけられたことにうんざりする魔族。
ムニの様子が滑稽で吹き出しそうにする魔族。
いくつかの視線がムニへと刺さる。
そんな魔族をかき分けて、魔王がムニの元へとやってきた。
歯をギラリと光らせて。
禿げ頭をキラリと光らせて。
「罰として、明日のおやつはなしね」
「そそそそそそそそそそんななななななななななああああああ!?」
魔王に許され、ムニが解放されるまで、後一時間。




