表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/42

第8話 能力試験と要救助者

王都から歩いて約1時間ほどで、今回俺が向かうダンジョンに到着した。

このダンジョンに来るのは2ヶ月ぶり。

暁の翼で嫌というほど通ったこともあり、思い出したくなくても、あの時のことが自然と浮かんでくる。



「くまなく探すとなると時間かかるなぁ。」


「探知スキルを使えば良かろう。」


「ああ、そうだったね。うっかり!」


「はぁ……しっかりせんか!」


「はは、ごめんごめんっ!」



1階ごとにすべての部屋を確認しなければならないと思うと、ちょっと気が重かった。

そんな俺に、すかさずラミンが探知スキルを使えと言ってきて、ハッとした。

いつもそうしてきたのに、どうも今日は抜けてる。

ここには思い出がありすぎるからか?

なんて思いながら、早速ダンジョンの中へと足を踏み入れた。


このフロアには、今は2組のパーティがいるようだった。

Aランクだとは思うけど、それ以下の冒険者なら出るように言わないとな。

本当に面倒なダンジョンで、下手すればSランクでも大怪我して帰ることになる。



「今、このフロアに出てる魔物、何匹だ?」


「えっと……こっちが5匹、向こうが8匹、で俺たちが今歩いてる方角に10匹だな。」


「そうだな。では、どうする?」


「え?俺、もしかして全部倒さなきゃダメなやつ?」


「全てとは言わん。今向かっている方向の10匹を、遠隔魔法で倒してみせよ。」


「……なんか試験みたいだな?じゃあ、やってみる。」



突如始まったラミン先生の魔法試験。なんてな。

俺は言われた通り、向かっている方角にいる魔物めがけて遠隔魔法を発動。

今いる魔物はゴブリンと、ポイズンウルフか。

雷魔法でいいよな?

そう思いながら、“サンダーボルト”で攻撃。

ドゴオオオオンッ!という岩が崩れるような音とともに、探知から魔物の気配が消えた。



「どうですか?ラミン先生!」


「誰が先生だ……まぁ、良いだろう。

というか貴様、詠唱しないところも竜族の血が濃い証拠だな?」


「へぇ。なんか詠唱って長いし、時間かかるからやめたんだよね。」


「やめたって……

普通は詠唱ありきの魔法なのは知っておるのだろう?」


「知ってるんだけど、面倒だから。」


「はぁ……貴様は本当に何と言うか、堕落しておるな。」


「失礼な!これでも詠唱なしで発動させるために、

けっこう頑張ったんだけど!」


「はいはい。では次の階に行くぞ。」



遠隔魔法でちゃんと仕事はしたのに、なぜか「堕落している」と呆れられた。

詠唱していると敵に気づかれやすいから、

どうにか詠唱なしでも使えるように日々努力してきたというのにさ!

堕落ってなんだよ、堕落って!努力の賜物って言ってほしいわ!

なんて文句を言いながら、俺は次の階へと向かった。



「我に強化魔法をかけてみよ。」


「ほつれたこの体を修繕してみせよ。」


「あのゴーレムを粉々にしてみせよ。」



2階、3階と進むたびに、ラミンから課題を言いつけられ、文句を言いながらも何とかこなしていた。

本当に何かの試験なんじゃないか?と思うほど、ラミンは俺の力を試しているようだった。

でも、その指示を出しているのがぬいぐるみの姿だから怒る気も失せて、ただひたすら課題をクリアしていった。



「さーて。5階まで来たな。

多分、この辺りから少しずつ魔物の強さが変わってくるんだよな。

さすがに一人で上がるには、この階が限界なんじゃないかな。」


「そうか。では、探知してみよ。」


「オッケー。じゃあ、やるね。」



このダンジョンは5階から一気に魔物のレベルが跳ね上がる。

たった一人でこれ以上先に進むのは本当に厳しいと思うから、

このフロアにいると信じて探知スキルを発動。


各部屋の様子をうかがうと、さすがに魔物以外の反応はない。

そりゃそうだろうと思ったその時、頻繁に宝箱が出現する小さな部屋に、ヒューマンの反応があった。



「いたかも……?」


「そうか。では行くぞ。気を抜くなよ。」


「うん。分かってる。」



探知に引っかかったということは、まだ生きている。

俺の探知スキルは生命反応がなければ反応しない。つまり、まだ息があるということ。

良かった……正直、もう死んでいるんじゃないかと半ば諦めていたから。

そう思いながら、途中で魔物を倒しつつ、例の小部屋の前へと到着した。



ギイッ――



「――おいっ!大丈夫か!!」



小部屋の扉をそっと開けると、宝箱の前にうつ伏せで倒れている男性を見つけて駆け寄った。

体を起こして顔をこちらに向けると、あの似顔絵の男性と一致。

呼吸は浅いが、まだある。これなら大丈夫だと思い、俺はハイ・ヒールを発動。

すると、みるみるうちに出血は止まり、体の傷が癒えていった。



「良かった。これで――」


「まだだ、オリオン。」


「え?」


「この男……何かを飲み込んでおるぞ。」


「飲み込んでる?何を?!毒?!」



体の傷も癒えたから、もう安心だと思っていたのに、

ラミンが「まだ終わっていない」と言う。

「何かを飲み込んでいる」と言いわれ、じっと目を凝らして男の体を見たあと、

俺はそっと右手を腹部に当てた。その時――



「えっ……何だ?急に手のひらが熱くなっていくんだけど?」


「この男の体の中には、精霊が宿る石、光の精霊石がある。

誤って飲み込むようなものではない。

どうにかして持ち帰ろうとしたのかもしれんな。」


「ええ?精霊石を持って帰ろうとして飲み込んだの?!何でまたそんなこと……

そんなことしなくても、普通に持ち運べる石なのに……」



突然熱くなった俺の右手。

ラミンはその原因が、男性が飲み込んだ精霊石のせいだと言った。

精霊石は、特定の詠唱によって精霊を呼び出すことができる特別な石。

呼び出した精霊と対話ができれば、そのまま契約して力を貸してもらえるようになる。


だけど、飲み込んだところでどうにかなるものじゃない。

なぜそんなことを……?

そう思っていたその時、男性の手がピクリと動き、ゆっくりとその目を開けた。



「あんたは……Sランク冒険者の……」


「元、だけどな。俺はオリオンだ。どうしてこんなところにいるんだ?

傷だらけになって…それに精霊石まで飲み込むって、どういうことだよ?」


「わか……るのか……」


「ああ。理由を話せるなら、教えてくれ。」


「俺の……彼女……病気で……

光の精霊が持つ力があれば…治せると治癒師に言われたんだ。

精霊石はダンジョン内で稀に見つかると教えられて。

でも、このダンジョンは上級者向け…Cランクの俺一人じゃ、とてもじゃないけど入れない……

だから、しつこくあんたらに同行を頼んでいたんだ……」


「そうだったのか……」



男性の話を聞いた俺は、何度も同行をお願いしていた理由が分かり、

もっとちゃんと話を聞いておくべきだったと後悔した。

そうすれば、この人がこんな無茶をして一人でダンジョンに来ることもなかったのに。

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

だけど、それはそれとして…

なぜ精霊石を飲み込んだのか、その理由はまだ分かっていない。

俺はもう一度、問いかけた。



「なぁ、なんで精霊石を飲み込んだ?手に持って帰れるだろ?」


「……」


「言いたくないか?」


「……いや。もう、ここから出られないだろうと踏んでいたから。

でも、いずれ彼女が捜索の依頼を出すと思ってたんだ。

だから、体の中に入れておけば誰かに取られる心配もないと思ったんだ……」


「……そういうことか。」



まさか、自分がもう死ぬと思って精霊石を飲み込んでいたとは思いもしなかった。

確かに、あれほどの大怪我を負っていれば、生きて帰れる望みは薄い。

それでも彼女を助けたいという気持ちが、彼をここまで動かしたと分かると、

バカなことをするなとは言えなかった。

だけど……これは、かなり深刻な問題が発生しているんだよな。



「どう……した?顔が強張ってるけど」


「いや……その……」


「何か問題が……起きてるのか?」


「……実は、、」


「精霊石はヒューマンにとっては毒なのだ。

精霊石に含まれる魔力は、通常の魔素とは異なり、

自然の力を蓄えた高濃度の魔素、いわば猛毒の魔力発生体だ。」


「え……え?ぬいぐるみが喋った……?」


「黙って聞け。精霊石は精霊と契約することで浄化され、清き石へと変わる。

その前に飲み込んだということは……猛毒を体に入れたということ。

先ほどオリオンがハイ・ヒールで回復させたが……

聖魔法との相性は最悪なのだ。

傷は治ったが、このままではその力が反発し、先ほどの傷が再び戻る可能性がある。」


「え?俺……じゃあ、このままだと……」


「確実に死ぬ。

そして、貴様の死と共に精霊石も消滅する可能性がある。」


「そんなっ……何のために俺はっ」



非常に言いづらい内容だっただけに、俺は自分の口から言うのを躊躇った。

すると、すぐさまラミンが代わりに話し始めた。

最初はぬいぐるみが喋ったことに驚いていた青年も、

自分が置かれた状況を理解するにつれ、どんどん顔が青ざめていった。


ラミンは言い方とか、ほんと全然考えないんだよな……

まぁ、内容が内容だけに、言い方を変えたところで現状が変わるわけじゃないし、意味ないか。

そう思いながらも、一刻も早くこの状況をどうにかしなきゃと、頭を悩ませていた――……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ