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21話 出会ったSランクパーティ

20階層――



「はぁ、疲れたな……」


「魔物討伐は楽しいのう。」


「我は別にやる必要ないのだがな……」


「さすがに20階まで来るとちょっと強めだな?」


「強めだなと言いながら影響なさそうだがな?」


「お父様のおかげでとても強くなりましたからー。」


「棒読みだな、貴様……」


「はははー。」



あれから15階層まで上がり、ダンジョン内の休憩エリアで寝泊まりして、本日は20階層に到達。

5階層からレベルが格段に上がっているが、20階層ともなれば死人が出てもおかしくない。

そういうレベルの魔物のおかげで、俺のレベルも3つほど上がった。

ライオネル王は魔物討伐を心底楽しんでいて、ラミンは面倒くさそうに大技を繰り出してくれている。

魂なのに生きているその辺の人より強いって、反則だろうが……と心の中で一人突っ込んでいた。



「もしかして今日は30階層まで行く感じ?そのあとは40階層?」


「そうだな。見回りも兼ねて、たまには全階層行かねばな。」


「だよねー…」



今日は帰れるかなと思っていたけど、甘かったらしい。

「見回りも兼ねて」と言われたら、嫌とは言えないことをラミンは絶対分かっている。

そう思いながら探知魔法を発動した時、人の気配を感知して驚いた。


この辺りに入れるのは、暁の翼かシグナスか、あるいは他のSランク冒険者。

ただ、ダンジョンに潜る時は冒険者ギルドに事前申請が必要だ。

申請しなくても入れるけど、保証は一切ないため、ほとんどの冒険者は必ず申請している。

今日はこのダンジョンに入る予定はなかったはずなのに……



「5人……?まさか、シグナスか?」



感知したのが5人だったので、もしかしたらシグナスかもしれないと思い、進む足が止まった。

シグナスは5人組の女性だけのパーティ。


リーダーのヴァニスは剣士で、超一流の剣技を持つが、ど天然でどこか抜けている印象。茶色の長い髪を揺らしながら戦う姿が印象的だ。

攻撃系魔法使いのターニアは、オレンジ色の髪をしたロングボブで、元気いっぱいのムードメーカー。

サポート系魔法使いのアルテミスは、銀髪のボブヘアで控えめな性格。泣き虫だが、ここぞという時には頑張る努力家。

弓使いのネムスピアはエルフで、青い長髪が目立つクールな性格。冷静沈着で頼りになる。

回復系魔法使いのラクリナはアルパカの亜人。珍しい種族で、とても優しい癒やし手だ。


一見デコボコなメンバーに見えるけど、実際は息ピッタリ。

俺たちとの共同依頼の時も、めちゃくちゃ頼りになる女性陣だった。


そんなシグナスと当然面識がある俺は、クビになったことを伝えるのがちょっと気まずい。

荷物持ちだし、危険を避けるためだったんだから「しょうがないよね」と言われるだろうけど……

やっぱり気まずい。

そう思って足を前に動かせずにいると、不思議そうに二人が首を傾げた。



「オリオンよ。どうした?」


「いや……この階に俺がいた方じゃないSランクパーティがいるっぽくて。」


「暁の翼ではないな?確かシグナス……と言ったか?

別に良いではないか。今の貴様はそやつらよりもはるかにレベルも上なのだから。」


「いや、まぁそうなんだけどさ。気まずくない?」


「何がだ。貴様は自分の努力でここまで来たのだ。

誰にも文句は言わせんし、言われる筋合いはないだろうが、バカたれ。」


「ラミン……」


「そうだぞオリオン。そなたは自分の努力でのし上がってきているのだ。堂々としておれば良い。」


「ありがとうございます……ライオネル王…」


「その敬語もなしにしよう、オリオン。私はそなたのことをもう家族だと思うておる。」


「ええ?嬉しいけど……国王ですし……」


「良いのだ。これからは敬語など使わずとも良い。分かったな?」


「はぃ……あ、うん。ありがとう、ライオネル王。」



俺は色々と考えてしまい、気まずさや妙な不安があった。

けれど、この二人はそんなこと気にするなとあっけらかんとしていた。

それが王としての器、古代竜としての在り方なのかもしれない。

俺にはそんな風に割り切れなかったけど、二人にそう言ってもらえたことで、ほんの少しだけ「大丈夫かもしれない」という気持ちが芽生えた。

もし何か言われたとしても、この二人が庇ってくれるだろう。

そんな押し付けがましい考えが生まれたことで、重かった足を動かすことができた。



「何か言われたらちゃんと反論してくれよな。」


「情けない……女子相手にシャキッとせんか!バカたれ。」


「そんなこと言われても、俺そういうの苦手なんだって。だから頼むよ!」


「はぁ……しょうがない奴だな、本当に。」



出来れば避けて通りたかったけど、シグナスがいる方角に次の階層へ続く階段がある以上、仕方がない。

ラミンに呆れられながら進んでいくと、明らかに和やかではない声が聞こえてきた。



「ラクリナ!アルテミス!ねぇ、目を開けてよ!!ねぇってば!!」


「……ん?」


「様子が変ではないか?」


「あれは……明らかに倒れておるな……」



その声の主はヴァニスのようだった。

ラクリナとアルテミスの名前を叫びながら「目を開けて」と必死に呼びかけていた。

そう思うと同時に、ライオネル王もラミンも「おかしい」と口にした。

避けるわけにもいかず、俺は意を決してシグナスの元へと駆け寄った。



「皆!どうしたんだ?!」


「え?あ……オリオン!どうしてっ……?!

ここはあなたが来られるような場所じゃ……

それにその黒騎士の人は誰?」


「俺のことよりもどうしたんだよ!!

何で二人とも血だらけになってるんだ!!」


「あ……あのっ――

上の30階層にあるクリスタルフラワーを……

でも……このダンジョンに出る魔物が思ったよりも強くて。

気配を消していた魔物に不意を突かれて、

振り向いたら二人がもう倒れてて……

魔物はなんとか倒せたんだけど、二人とも血がいっぱいで……!」



駆け寄ると、そこには血まみれで倒れているラクリナとアルテミスがいた。

辺り一面は血に染まり、命の危険が迫っていることがすぐに分かった。


その二人を前に、絶望の表情を浮かべる三人がいた。

俺が声をかけると、ターニアが声を震わせながら必死に事情を説明してくれた。

ネムスピアは涙を流しながらも周囲を警戒し続け、ヴァニスは倒れ込む二人の前で大粒の涙を流しながら叫んでいた。


回復担当のラクリナがやられてしまったことが、この最悪の状況を引き起こしている。

そう思いライオネル王を見ると、助けてやりなさいと言わんばかりにゆっくりと頷いた。

ラミンも俺の頭をポンポンと叩き、しっかりしろと伝えてくれているようだった。



「皆、これからやることは口外しないで。」


「え?な、何をする気だ?オリオンは荷物持ちで魔法は使えないだろう?!」


「変なことをするんじゃないだろうな?!下手をすれば死ぬんだぞ!!」


「オリオン、こんなときにふざけないでっ!!」


「うるさいっ!!黙って見てろ!!二人を死なせたいのか!!」


「……オリオンッ?!」



ラミンとライオネル王に背中を押され、倒れた二人に近づく。

俺は荷物持ちだから何もできないと知っていた三人に必死に止められた。

そんな彼女たちに説明する余裕もなく、思わず怒鳴ってしまったけど…取り乱すのも無理はない。

荷物持ちで何もできなかった俺を知っているから、そうなるのも当然だ。

そう思いながら、俺は両手を二人にかざした――



「………グランド・ヒールーーー!!」


「グランド・ヒール?!最高位魔法の一つじゃないか?!」


「オリオン、あなたいつのまに?!」


「……いつから治癒師になったんだ、オリオン……」



一刻を争う事態で、まだ息があったこともあり、俺は「グランド・ヒール」を選択。

意識を集中して唱えると、ごっそり魔力が持っていかれるのを感じた。

だが、二人の体の傷はゆっくりと塞がっていく。

これはかなり魔力を消耗するな…。まぁ、精霊魔法よりはマシだけど……

そう思いながらも、青白かった顔が徐々に元の色を取り戻していくのが分かり、ホッとした。



「よくやった、オリオン。」


「これくらい、やれて当たり前だな。」


「良かったー。んじゃ、早く帰還石使って帰って、ちゃんと治癒師に診てもらってね。」



ひとまず命がつながったことが分かり、俺は皆に「早く帰ってな」と伝えてその場を離れた。

ライオネル王もラミンも「よくやった」と褒めてくれて、ちょっと嬉しい。

自分で頑張って取得した魔法を使って人を助けられるって、いいもんだなぁ。

そう思っていると、当たり前だけどすぐに呼び止められた。



「ちょっとオリオン待って!どこに行くの?!」


「どこって……今回は最上階まで行って魔物討伐しなきゃいけないから。

じゃあね、シグナスの皆!ちゃんと真っすぐ帰ってよね!バイバイ!」


「オリオンッ!危ないわよ!その先は!」



皆は俺が“あの頃の俺”しか知らないから、とても心配してくれた。

だから笑顔を向けて「大丈夫だよ」とアピール。

すると、側にいたライオネル王とラミンが言ってくれた。



「大丈夫だ。そなたたちが思っているよりも、オリオンははるかに強い。

そして、不器用だが優しい男だ。」


「我の息子だからな。」


「へっ?!い、今ぬいぐるみが喋った?!」


「ははは、じゃあお気をつけて。」


「ライオネル王、走るよー!」


「よしきた!」



何とも照れ臭い言葉を贈ってくれたライオネル王。

ラミンも「我の息子」と堂々と言ってくれて。

恥ずかしい気持ちを誤魔化すため、そしてこれ以上シグナスに質問されるのが嫌だった俺は、ライオネル王と共にダッシュして次の階層へと向かった。


シグナスとこんな形で会うなんて思っていなかったから、色々と不安はある。

けれど、命を見殺しにはできない。

きっとこの選択は間違っていない。そう自分に言い聞かせていた――

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