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19話 欠けた翼

【エドSide】


オリオンが暁の翼を抜けてから、1ヶ月が過ぎた。

荷物持ちの役割がなくなると困るため、俺たちは新しく募集をかけ、一人の青年を採用した。

今回の荷物持ちは、最低限の攻撃魔法が使える“自衛できるタイプ”。

正直、オリオンの時は全員が常に気を配らなければならず、ペースが乱れる場面が多かった。

だから今回は「荷物持ち兼攻撃魔法が使える者」に絞り、ギルド長ハルクさんにも協力してもらった。


そして満場一致で採用を決めたのが、オリオンより少し年上のソロ冒険者、ジャック。

暁の翼に憧れていたらしく、熱意だけは人一倍。

静かなオリオンとは正反対で、やたら元気な奴だ。

ただ、この1ヶ月でちょっとした違和感を覚えていた。

別にジャックが悪いわけじゃない。荷物持ちをしながら自衛もするし、時には俺たちを助けてくれた。

だけど、思うんだ。


【うちはこんなに火力が低かったか?】と。


確かにジャックの魔力量は平均的だし、攻撃も問題なくこなしている。

正直、その辺はオリオンと大差ない。あいつも全て平均的な数値だったからな。

だから今は当時よりも強くなっていなければおかしい。


それなのに、パーティ全体の火力が“妙に伸びない”。

以前なら押し切れていた魔物相手に、じわじわと迫られているような感覚すらある。

オリオンが抜けてジャックが加入したこと以外は、いつもと変わらないはず。

それなのに、言葉にならない“違和感”が俺の中に少しずつ芽生えていた。

その違和感を払拭すべく、俺は一人冒険者ギルドへと向かった。



キィッ――



「ハルクさんいますか。」


「ん?エドか。どうした?今日はめずらしく休暇の日だろう?」


「ええ、あの……オリオンは今どこにいますか?

ちょっと話したいことがあって。」


「オリオン?さぁな。アイツは今、気ままに暮らしてるからな。

どこで何してるかは把握してねぇよ。急ぎの用事か?」


「あー……そうですか……やっぱり分かんないっすよね。」



ギルドに入ると、タイミングよくハルクさんがいたのでオリオンの居場所を尋ねた。

だが「知らない」と言われ、肩を落とした。

まぁ、そりゃそうだよな。俺たちがクビにしたんだ。一人で冒険者なんて出来るはずがない。

ここに顔を出さなくなっても当然だ。


そう思った時だった――

突然、ギルドの扉が勢いよく開き、王廷治癒師のローランドさんが血相を変えて飛び込んできた。

何か困ったことが起きたのか?俺たちが必要かもしれないと思い、聞き耳を立てた。



「ハルク殿!オリオン殿は今日はどちらにいらっしゃいますか?!」


「あ?あー……どした?急用か?今日はまだ顔出してねぇけどよ。」


「そうですか……

分かりました。探しに行ってきます!ありがとうございます!」



ローランドさんは何故かオリオンを探しているようで、いないと分かると即座にギルドを飛び出した。

どういうことだ?何故オリオンを探す必要があるんだ?

不思議に思った俺は、飛び出したローランドさんのあとを追った。


王廷治癒師ともあろう人が、ただの荷物持ちだったオリオンを探し求めるなんて、どう考えてもおかしい。

まさかオリオンの奴、治癒師に何かやらかしたのか?!自暴自棄になって暴れたのか?!

だとしたら俺が止めなければ……


そう思いながら後を追っていくと、西門の付近でローランドさんが大きく手を振り始めた。

チラリと見ると、そこには何故かぬいぐるみを頭に乗せているオリオンと、見たことのない黒騎士が一緒にいた。

そのことに驚いて咄嗟に物陰に隠れた。


……オリオンは俺たち以外に仲間がいたのか?

そんなこと、一度も聞いたことがなかった。

そう思いながら、俺は耳を澄ませた。



「良かった!オリオン殿!ライオウ様、ラミン様!お願いが…」


「……急患ですか?」


「ええ……毒素病です。

……まだ10歳にも満たない子供なんです。ぜひお力を――」


「子供が……子は国の宝ぞ、オリオン。治療しに行くぞ。よいな?」


「……分かった。じゃあ、行きましょう。」


「ありがとうございます!でも、本当に良かったです。

オリオン殿が光の上位精霊と契約したおかげで、毒素病で亡くなる患者が数段に減りましたからね。」


「こやつはそういう男だからな。上位精霊が付いて当たり前なのだ。」


「ふふふっ。ラミン様のご指導のおかげですね。」


「ふむ。そうであろう?

やはり我の力あってこそのオリオンだからな。」



ローランドさんとオリオンたちの会話を聞いた俺は、まったく意味が分からず理解できなかった。

何を言っているんだ?ローランドさんは。オリオンが上位精霊と契約?

そんなこと出来るはずがない。アイツはただの荷物持ちだぞ?

貧民街でくすぶっていたところを拾い、俺たちが育ててきたつもりだった。

上位精霊と契約できる要素なんて、どこにもないはずだ。

ローランドさん、絶対に勘違いしてるだろう?!


それにしても……

さっきから、ぬいぐるみが喋っているように聞こえるのは気のせいか?

それとも、あの黒騎士がずっと喋っているのか?

分からないまま後を追い、王立治癒院に到着すると、オリオンたちは何食わぬ顔で中へと消えていった。

さすがに俺は奥まで入ることはできない。ここまでか……

そう思った時、宮廷治癒師の制服を着た男性が一人、建物から出てきたので思わず呼び止めた。



「すみません!」


「これはこれは。暁の翼のエドさんではありませんか。どうされました?お怪我を?」


「いえ!そうではなくて……

さっき、うちのオリオンが入っていったのが見えたんですけど。

あれはどういう?」



思わず「うちのオリオン」なんて言ってしまった。

この宮廷治癒師は俺たちが関係を終わらせたことを知らないのか、何の疑いもなく「ああ!」という顔をして話した。



「オリオン君、たまにローランドさんのお手伝いをしてくださっているようですよ。」


「え?荷物持ちなのに?」


「ローランドさんがとてもオリオン君と、そのお友達を気に入っているようです。

とても優秀だそうですよ。今度、我々も治療しているところを見てみたいものですね。

治癒ができる荷物持ちなんてそうそういませんから、得でしょう?エドさんも。」


「え……」


「では、私はこれで。失礼しますね。」


「あ……はい。」



オリオンが王廷治癒師のお気に入り?どういうことだ?!

何でただの荷物持ちをお気に入りにする必要がある?

だって何もできないだろう……

実際、俺たちと一緒にいる時だって――


そう思った時、本当にそうだったのか?という疑問が頭をよぎった。

ただの荷物持ちだと思っていたけど、アイツが居なくなってから感じている“違和感”の正体はこれなのか?

何もしていないようで、実は何かしていたのか?


……いや、そんなはずはない。

アイツはいつも俺たちの荷物を持っているだけで、何かしている様子なんてなかった。

それなのに、何なんだこの感じ。すごくモヤモヤするし、何だか気持ちが悪い。

そんな気持ちを抱えながら、ただただ王立治癒院を見上げるしかなかった――……

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