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第12話 古の魂の正体

「我が先ほど言った“厄災”とは、通常の武力や魔法では退けられない、世界を覆う“闇の瘴気”のことだ。

魔物であれば、冒険者が集まり討伐隊を編成すれば良いだろうが、瘴気相手ではそうもいかん。

それを払うには、この国で最も聖魔法を扱える初代国王が作り出す、特別な結界を張る以外に救われる道はないとされていた。


その結界は、ただ張ればよいというものではない。

命を結界の中に捧げ、その命をもって国土全体に聖なる結界を張り巡らせることで、闇を払う。

そういう言い伝えのある、特殊な結界の生成方法だった。

そして、その方法を王家に伝えたのが、我ら竜族なのだ。」


「命の結界……ってことか?」


「そうだ。我ら竜族は、生まれた瞬間から膨大な知識が血に刻まれており、

精霊とも深いつながりを持つ一族だった。

初代国王が我らを国の道標として招いたのが始まりで、

それ以降、我らは数ある種族の中でも“最強”と呼ばれるようになった。

これが、我の中にある古の記憶だ。」



ラミンから語られた、竜族と王家との繋がり。

それは、俺が思っていた以上に重いものだった。

この国を護るための結界が、命と引き換えになっているなんて想像もしていなかった。

初代国王が亡くなった理由は、これまで明確にはされていなかった。

けれど、その裏にこんな理由があったなんて……

結界を張る方法って、一体どんなものなんだろう?

そう思っていると、ライオネル王とされる鎧騎士が、自ら語り始めた。



【……あの結界を発動させる方法は、私自身が結界を張ったのち、自ら命を絶つ。というものだ。

私の場合は、自分の命を捧げたあと、契約精霊イグニスもその命を捧げてくれた。

我は竜族との繋がりができ、その時たまたま良くしてくれたイグニスと契約を結び、その名を授かっていたのだ。】

【そして、それが功を奏したのか、私とイグニスの行為によって、この地は闇の瘴気から護られた。

だが、精霊の力が弱まると、国は再び闇に覆われるという“呪”とも呼べる宿命を背負うことになった。】

【そのため、ウィンエバー王家は代々、精霊の力を引き継ぐ“精霊王権”となり、

王の選定は“精霊と契約できた者”とされ、王のミドルネームには契約精霊の名を入れるという決まりが生まれた。

そして、歴代の王は必ず“結界が弱まらぬよう聖魔法で力を与え続ける”という使命を持って生きている。

これが、王家が精霊との契約を続ける絶対的な理由とされているのだ。

まぁ、私は死後すぐに魂だけで浮遊し続けたおかげで、現代の王家の様子が分かったのだが、何とも申し訳ない運命を背負わせたなと思っているよ。】


「国と民を護るために、自ら命を……

俺には真似できない行為だ……」



鎧騎士から結界の生成方法を教えられた俺は、言葉を失った。

自分で自分の命を終わらせ、その命を結界に捧げる。

想像しただけでも、背筋が凍るような行為だ。

しかも、精霊までが命を捧げて協力してくれたなんて……

ただ“国王”という立場だけで、そんなことができるとは思えない。

この人は、この鎧騎士は、本当に自分のことよりも民のことを考えられる、

心から尊敬できる王だったんだなと、知らされた瞬間だった。

……嘘つきとか言っちゃったなぁ。

さすがに、謝るか。



「あのー……ライオネル王…嘘つき呼ばわりして、申し訳ない、です。」


【良い良い。竜族の血を引く者よ、オリオンと言ったか。

それよりも、この地を離れることができず、

鎧を魂の器として彷徨っていた私の魂を引き抜くとは、大したものよ。

そこのドラゴンの魂も、オリオンが引き抜いたのか?】


「え?あー、ラミン。ラミンっていう名前なんですけど。

ここじゃないダンジョンの地下に落ちちゃった時に、頭で卵を割っちゃって。

そこから出てきたのが、すでに亡くなってはいたけど、

思念体として残っていたラミンだったんです。

だから、仮の器に入って動いてるって感じなんです。」



ちょっと申し訳なくなって謝ると、ライオネル王は笑って許してくれてホッとした。

そして魂を引き抜いたことを褒めてくれたけど、俺は全然そんなつもりじゃなかったんだよ。

触れたら出てきちゃっただけなんだから。

なんて思いながらラミンのことも説明すると、ライオネル王はとんでもないことを言い始めた。



【そういうことか。

それならばオリオン、私にも仮の器を用意してはくれぬか?

今日から私も、そなたと一緒に生活してみたい。】


「……ええ?やだよ。」


「そこは素直に“分かった”と言わぬか、バカたれ!

こんなに貴重な人物と暮らすことなど、二度とないのだぞ!

このライオネルがいることで、貴様もこの国の知識が身につくであろうが!」



何を思ったのか、自分も一緒に連れて行ってくれと言い始めたライオネル王。

即座に断ると、さすがにラミンが鬼の形相で俺を責め立てた。

とはいってもぬいぐるみだから、威嚇にもならないんだけど。



「だからー!俺は言ってるでしょ?

もうSランク冒険者をクビになった時点で、頑張りたくないの!

国がどうとか、すごいと思うけど、俺はこの王都でスローライフを送って過ごすんだからな!

でもまぁ…ライオネル王が邪魔しないって言うなら……いいですけど。」


【おお!そうかそうか!私はオリオンの邪魔はせんよ。

どうか私も連れて行っておくれ。ひとまず、そなたの中に入らせてもらうぞ。】


「またか……あ、でもすぐには出ないよ?光の精霊石探してるんだ。

それが見つかってから帰るからな?」


【光の精霊石?ああ、それなら私のこの鎧の中にあるぞ。

精霊石を媒体にして、この鎧を動かしていたからな。】


「え?本当?!ラッキー!じゃあ、早速王都に帰ろうぜ!」


「はぁ……オリオン、貴様は本当に……」



ラミンに言われて、さすがに初代王をこのまま放っておくのは祟られそうだと思った俺は、

ライオネル王に「スローライフの邪魔をしないならいいよ」と軽い気持ちで伝えた。

するとライオネル王は大きく頷いたあと、ためらいもなく俺の体の中にスッと入っていった。

ねぇ、なんで皆、迷いもなく俺の体に入るわけ?!

俺の体、本当に大丈夫なの?!

そう心の中で叫びながら、ハルクさんにもらっていた帰還石を使って、王都の外へと出た。



「魂が2体かぁ。恐ろしいことになったなぁ……」



ダンジョンを出て、ゆっくりと歩く中、一人そんなことを呟いた。

俺が今どんな気持ちでいるかなんてお構いなしに、

ラミンは俺の頭の中でライオネル王と永遠に喋ってる。

それがまぁ、うるさいのなんのって。


頭の中で俺の知らない話ばかりするな!う思ってみたものの、二人は話をし続けた。

俺のスローライフは、果たして守られるんだろうか?

そう少し弱気になりながら、王都へと続く道のりを歩いていった――

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