表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/42

第10話 偽りの旅支度

ダンジョンでの人命救助依頼を達成して三日後。

ハルクさんから「時間がある時にギルドに顔を出してくれ」と通達があった。

行きたくないなぁと思っていたら、ぬいぐるみのラミンが俺を家から叩き出して、無理やりギルドに向かわせた。



「ねぇ、俺行きたくないんだけど。」


「呼び出しを無視する冒険者がどこにおるのだ!」


「ここにいるだろ。」


「貴様は本当に情けない……」


「へぇへぇ。」



頭の上にいるラミンは、毎日のように「竜族の自覚を持て」だの「鍛錬に行くぞ」だの、そればかり言う。

今日だって「ギルドからの呼び出しなら依頼だろう」とケツを叩かれ、家から追い出された。

スローライフするって言ってるのに、全然分かってくれないんだよな……

なんてラミンへの不満を心の中で延々と呟いているうちに、ギルドに到着。

扉を開けると、そこにはハルクさんと、王立治癒院の制服を着た見知らぬ治癒士が一緒にいた。

嫌な予感がしたんだよ。だから来たくなかったのに。



「オリオン。すまないな。こちら、王立治癒院のローランド・シンクレアさんだ。

ローランドさん、こちらが話していたオリオンだ。」


「初めまして、オリオン君。

私は王立治癒院所属、王廷治癒師をしているローランド・シンクレアと言います。

気軽にローランドと呼んでください。」


「はぁ……えっと、俺はオリオン。

――オリオン・カムエルと言います。」


「あ?オリオン、ファミリーネームあったんか!」


「最近できた……」


「ああ?」


「えっと……それよりローランドさん、ハルクさん。俺に何か用でしょうか?」



突然現れたこの人は、王立治癒院に所属しながら、王廷治癒師を兼任していると言っていた。

つまり、王立治癒院の治癒師の中でもトップの治癒師ということだ。


王廷治癒師は、難病や特殊な傷、治癒院に持ち込まれた魔法的な毒の解明と治療を担当。

王族や国の中枢を担う人物の治療も行うとされ、この国ではたった一人しかいない。

そして、その下にいるのが宮廷治癒師。

王族や高位貴族の日常的な健康管理や、王廷治癒師の補佐を行う治癒師で、五人しかいないと聞いたことがある。

そんなローランドさんが俺に用事…?

絶対に、あの人を治療した時の話だよな?!そう警戒していた。



「先日君が助けた男性。あ、彼はヘクターという男性なのだが、

そのヘクター君を治療した時の話を、私にも聞かせてくれないだろうか?」


「はぁ……」


「君が行ったと話した治療を聞いた時は、正直信じられなかったんだ。

そんなことができる人間がいるはずないってね。

だけど、実際に彼を診た時、体の中に精霊石があった痕跡が見つかって、

治療方法の話は本当なのかもしれないと思ったんだ。

だから今日は、どうしても君に会って話がしたくてね。」


「話すも何も……」



俺の嫌な予感は的中した。

やっぱり、俺の治療方法についての話がしたいっていう、何とも面倒な展開になった。

思わず、頭の上にいたラミンをギュッと抱きしめると、頭の中にラミンの声が響いた。



【良い機会ではないか。貴様の竜族としての能力を伝える時ぞ!】


(バカじゃないの!俺はスローライフを送りたいのに、説明したら絶対面倒なことになるって!)


【バカとは何だ!貴様の能力は、他人が知りたいと思うほどの力だぞ!】


(だからそれが嫌なの!んもう!!どうにかしてよ!)


【はぁ……情けない男だ……】


(いいから!!お願い!!お父様!!)


【……これからダンジョンに光の精霊石を探しに行くから、今度にしてくれとでも言えば良かろうが。】


(ああ!そうする!)



頭の中でのラミンとの会話。

ラミンはやたら俺の能力をひけらかそうとするけど、それだけは絶対に嫌な俺。

どうにかしてくれと頼むと、光の精霊石の話題を振ってくれて「それだ!」と思い、口にした。



「あのー、大変申し訳ないのですが、

これからダンジョンに光の精霊石を探しに行くので、お話はまた今度でもいいですか?

急がないと、ちょっと面倒なことになるので……」


「ああ、そうだったのですか。それは申し訳ないことしましたね。

では、日を改めるとしましょうか。

いつ頃こちらに戻ってこられそうですか?」


「最上階まで行く予定なので……2週間後とかですかね。」


「2週間ですね。

では、戻られましたらハルクさん経由で連絡をいただけますか?」


「……分かりました。」


「ハルクさん、オリオン君。今日は突然すみませんでした。

君といろいろ話せる日を楽しみにしています。それでは、失礼します。」


「はぁ……では。」



ラミンの提案のおかげで、ひとまず俺は面倒な説明をせずに済んだ。

そして「最上階まで行く」と嘘をついたことで、2週間は追いかけられずに済む。

そう思って、ひとまず安堵した。



「オリオン、すまなかったな急に。どうしてもお前に会わせろってうるさくてな。」


「やっぱりそうでしたか。いやぁ、前に説明した時にギョッとされてたので、

治癒院の制服を見た瞬間、絶対そうだろうなって。」


「また2週間後に来るぞ?ちゃんとどうするか考えておけよ。

それより、本当に行くのか?ダンジョン。」


「えー……」


【行くからな。】


「……はい。俺が精霊石を壊してしまったので。

可能であれば、見つけたいなって。」


「そうか……分かった。

帰還石を渡しておくから、危なくなったら戻ってこいよ。」


「ありがとうございます!助かります。

それじゃあ、準備したら行ってきます。」


「ああ、気をつけてな。」



ローランドさんがギルドを出て行ったあと、ハルクさんはすぐに「悪かったな」と声をかけてくれた。

あの手の人は絶対に諦めないだろうから、ちゃんと対策を考えておかなきゃな。

なんて思っていると、「ダンジョンに行くのか?」と訊かれ、少し迷ったけどラミンの圧力もあり頷いた。


もしまた精霊石が見つかれば、あの人……ヘクターさんだったか?

彼の願いと、彼女にとっての希望になるだろうから。

それに、俺自身もずっと罪悪感があった。

精霊石が見つかることで、この引っかかっている感じも、少しは消える気がしていた――



いつも読んでくださってありがとうございます!

登場人物たちのキャラクター紹介ページを作りました。

まだ未完成ではありますが…

AIイラストと一緒に、物語の世界を少しでも感じていただけたら嬉しいです。



https://note.com/sorariaru_17/m/m8f8c24816dc4

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ