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第1話 突然の解雇通知

「オリオン。ここからは危険だ。荷物持ちはもう必要ない。今日でお別れだ」


 俺はSランクパーティ【暁の翼】所属の荷物持ち、オリオン。

そして、たった今そのパーティをクビになった。


「……やっぱり、俺は何の役にも立たなかったんだな」



皆の荷物をまとめる手を止め、深く頭を下げる。

顔を上げると、彼らは優しい笑顔を向けてくれた。



「今までありがとう、オリオン。少しだが、これはこれまでの報酬だ」


「……ありがとう」


「それじゃあ、またな」



暁の翼のリーダー、エドのその言葉に、少しだけ胸が痛んだ。

“またな”……なんて、もう二度と来ないというのに。


長い間、俺はこのパーティで荷物持ちを務めてきた。

だけど、所詮は荷物持ち。

これからの冒険には“お荷物”は不要ということなんだろう。

そして、足手まといの俺が死なないための、最後の優しさ。

俺はそう思った。



「はぁ……家に戻るか」



自分の荷物だけを持ち、暁の翼の拠点を後にした俺は、小さな自分の家へ戻った。

いつもは拠点で生活していたけど、今日からは一人の夜。

静かな部屋の中、背負っていた荷物を下ろす。



「明日からどうしようかなー……単独で依頼受けてのんびり暮らすかな」



ベッドに寝転がった俺は、無職になった事実を改めて受け止め、明日からの生活を考えた。

当分の間、誰とも組む気は起きないし、いつものように一人でダンジョンに潜るかな。



「……まあ、何でもいいや」



色々と考えてみたものの、面倒になってきた俺はまた明日考えようと放り投げた。

まずは明日、冒険者ギルドに行って、ソロの冒険者になったと報告して……


ちまちま依頼を受けて……平和にのんびり暮らそう……

そう思いながら、急な睡魔に襲われて瞼は閉じていった——……







翌日——



「というわけで、今日から俺はソロでやることになったよ」


「そうだったのですね……なんだか切ない話ですが、

暁の翼の皆さんの優しさなんですよね、きっと……」



翌朝、俺は一番に冒険者ギルドへ向かい、受付のアリアに昨日のことを報告した。

アリアとは俺が10歳で暁の翼に入ってからの付き合いだから、もう8年になる。

メンバー共々いつも世話になっていたから、きちんと報告しなきゃと思っていた。



「そうだな。きっとそうだと思う。

それで、これから一人でやるけど、今のままSランクで大丈夫なのかな?」


「一度決まったランクは、降格でもない限り変わりませんので、そのままSランクです。

ですが依頼を受ける際は、自分で行けそうだと思ったものを選んでもらって大丈夫ですよ」


「そっか。ありがと、アリア」



これからはソロになるけど、ランクの状態が気になって確認すると、何も変わらないと分かった。

いいんだか悪いんだか……

俺のランクは、他のメンバーのおこぼれで上げてもらったものだったからな。

そう思いながら、アリアに言われた通り、

俺にできそうな依頼だけを受けていこうとギルドを出た。


向かった先は、森の中にあるダンジョン。

あのダンジョンは、俺が暁の翼に入ってから夜な夜な通っていた場所だ。

荷物持ちとはいえ、少しでも皆の力になりたいと思っていた俺は、

依頼が終わった後も毎日のようにダンジョンに潜って、自分のレベルを上げ続けていた。


俺たちは、冒険者ギルドや教会などで情報提示をしてもらわなければ、

自分のレベルなどを確認することは出来ないらしいけど、

何故か俺は自分のステータスが確認できていた。

ここ1年ほど冒険者ギルドで正式な測定はしてもらっていないけど、

自分のステータスが見えていた俺は、とにかく必死になってたくさんのことを覚えた。


最初はすぐに死にかけて、何度もダンジョンをリタイア。

だけど、少しずつレベルが上がっていき、探知系スキルはレベル30で習得。

回復系をはじめとする支援魔法は、レベル50からそれぞれ覚えた。

さらにレベルが上がると、少しずつ遠隔魔法も使えるようになった。

これで俺も、皆の役に立てるかもしれない。そんな淡い期待を胸に秘めていた。


——だけど俺は荷物持ちだから、何もしなくていいと何度も言われていた。

だから、暁の翼として依頼を受けた時は、

こっそりバレないように皆を支援して強化して、時には遠隔で事前に魔物を倒したり。

俺は俺なりに、皆のために必死に戦っていた。


……つもりだったけど。

やっぱり俺は、皆の足手まといという結果は変わらなかったんだな……



「さてと……今日も少しでもレベルを上げましょうかね」



考えても辛くなるだけだからと、俺はいつも通りダンジョンの最上部を目指して歩き始めた。

ここにいる時は、自分が少しずつレベルアップして、

自分という存在が認められるような気がして落ち着く空間だった。


気づけば孤児だった俺は、独りには慣れている。

だけど、あの日暁の翼の皆に拾われて、独りの時間から皆で過ごす時間が増えて、

人生ってこんなにも変わるのかと喜んでいた。


それが今じゃ、すべて夢だったんじゃないかとすら思う。



「はぁ……俺ってこんなに女々しかったか?」



突然の追放にナーバスになるのは分かるけど、

幼かったあの頃から今日までのことが頭に浮かびすぎて嫌になる。


もう全部忘れろ、俺。いくら考えても、あそこには戻れないんだ……

そう自分に言い聞かせながら、トボトボと歩いていた時だった。



ガラガラッ……



「ん?」



ピキッ  ピキピキッ



「え……ええええええええ?!」



何てことない、ただの地面。

いつも歩いている地面は、そう簡単に穴が開くつくりではない。

それなのに突然鈍い音を立てはじめ、気づけば俺の周りの地面に大きな穴が開き、

避けるすべもなく真っ逆さまに落ちていった——


普段ならこんなミスはしない。

ピキッと割れ始めた時点で、なんで避けなかったんだよ俺!

それもこれも、突然の解雇通知のせいだ……

気持ち新たに始めようとした矢先にこれかよ!


このまま俺は穴の底で死んでしまうのだろうか……

そう思うと、何ともあっけない人生だな。


まぁ……孤児だった俺には、お似合いの最期かもしれないな。

そう思い、何もかも諦めて、そのまま落ちるところまで落ちていった——……

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