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〈08〉王立学院2年生・歌劇

オレリーに観劇に誘われました。

彼女は、最近の私をひたすら気遣ってくれています。

どうにか元気づけようと、このチケットを用意してくれたのでしょう。


ですが。


私は、扇でかくして何度目かのため息をつきました。

上演されているのは有名な歌劇で、一流の歌手が出演していることもあり、会場は盛況です。

今は、思いを通わせた主演の男女が、圧倒的なデュエットを歌っています。

劇そのもののクオリティは素晴らしいと思います。

思いますが、オレリーがこの劇に私を招待したことに落胆しかありません。

彼女は、相変わらず私とブリス様を結び付けようとしているのです。


この劇は、数百年前に実際にあった出来事を元にしているそうです。

一人の、身分は低いものの美しい女性がおりました。

彼女に一目ぼれをしたとある貴族の男性は、何が何でも彼女と結ばれたいと四苦八苦します。

時にこっけいに、時に大胆に、冷たい態度しかとらない彼女の想いを得ようと、手を変え品を変えアプローチします。

そして最後には、その真心に打たれて、彼女は想いを受け入れ彼を愛するようになるのです。

眼下では、結ばれた二人の結婚式の様子が繰り広げられています。

この劇のストーリーは、オレリーからのメッセージとしか思えません。


「ねぇ、クラリス、とても素敵だったわね!

特に、夜のバルコニーで歌われる男性のアリアが……私もあんな愛の歌を捧げられたいわ!」

オレリーが、興奮を隠さずに私に話しかけてきます。

私は曖昧に微笑みながら、「主演の歌が圧倒的だったし、衣装も大道具も豪華だったわね」と答えました。


劇としては素晴らしいのかもしれませんが、私は主人公の彼女に思いを馳せるしかありません。

彼女は、本当に、彼のことを愛していたのかしら。

もし仮に、彼女には他に愛していた人がいたとしましょう。

だとして身分が低い彼女には、貴族の求愛を突っぱねることはできなかったでしょうね。

下手をしたら、想い人は貴族の権力で殺されてしまうことだってあるかもしれないのだから。


それに、愛する人がいなかったとしても、求愛してきた男性を彼女が必ず愛するとは限りません。

似たような立場に立たされた私には痛いくらいに分かります。


もしかしたら、彼女は……あまりにもしつこい求愛に折れただけなのかもしれないわ。

愛されることは幸せだから、私も彼を愛していると、己を偽っただけかもしれないわ。

手の中の扇を握りしめて、私は、今は知るすべのない彼女の真意に思いを馳せました。

幕間のような話なので短くなってしまいました。すみません

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