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〈07〉王立学院2年生・プロムナード後

プロムナード開催後、私の状況は更に悪化しました。

まずは、ブリス様の人気と知名度が一気に高まったことが原因でしょう。

学生の大会といえど、2年生で3年生に打ち勝って優勝したというのは、間違いなく快挙です。

騎士の卵として、今一番の有望株であることは間違いありません。

それから彼は、お人柄もよいのです。

謙虚で努力家、人当たりがよく騎士科でも人望が集まっているとか。

容姿は優れているとはいわないでしょうけれど、清潔感があって、なによりもあの力のある瞳は人目を惹きます。

更に、私に対して礼を尽くしながらも情熱的なところなどは、女性から見て理想的なのだそうです。

つまり、まだ婚約者が定まっていない女性から見て、彼は最高の金の卵なのです。


対して、私はといえば。

顔は人並み、成績は上位に食い込んでいますが、女性だとそれがあまり評価に結び付きません。

真面目を自負していますが、それを長所と言えるかは微妙です。

別に社交的でもありませんし、はっきりいいますと学院の学生のなかで埋没した存在です。

そんな私が、ブリス様から一心に愛を捧げられているのに、それに応えようとしない所など、第三者から見ると腹立たしいようです。


プロムナード本番で、私はブリス様への対応に苦慮しました。

微笑んで卒なく相手をするなんてできません。

私は、彼に、私への想いを諦めていただきたいのです。

友人となるくらいなら譲歩はできますが、それ以上はお受けできません。

だから、プロムナードで寄り添ってダンスを踊るなど、本当に無理なのです。

彼に気を持たせたくないのです。

楽しくもないのに、なぜ無理をして笑わないといけないのですか?

彼と踊り終わったときには、思わずため息がこぼれてしまいました。


オレリーいわく、私は彼と踊っていても集中しておらず、視線を彼と合わせようともせず、ずいぶんと失礼な態度を取っていたようです。

ブリス様はそんな私を盛り上げようと必死でしたが、私はどこか不機嫌にすら見えたと。

彼女から誠実ではないと怒られましたが、その言い方はないと思います。

だって、私は彼の気持ちには答えられないのですもの。



ブリス様の恋物語が学院の生徒に周知されるということは、私は常につれない態度で彼に接しているということが、知られるということでもありました。

私について、あっという間に悪い噂が広がりました。

一度など、廊下をすれ違いざまに、知らない女性に「たいして美人でもないくせに、お高くとまっているのね!」と言い捨てられたことがあります。

そして、彼女に連れ添っていた友人と思しき数人が、私を見て意味ありげにクスクス笑っていました。

聞かせるつもりがあったのかは分かりませんが、耳に届いた「性格が悪いのよ」という小声が、私の心にグサリと刺さりました。


逃げ込んだ図書館の隅で、私は涙をこらえられませんでした。

では、私はどうすれば良かったのでしょう?

あの舞踏会で、彼ににっこり笑いかけるべきでしたか?

そんなことをしたら、ブリス様はより私を好きになってしまうかもしれないのに?

そう思うことすら、第三者は思い上がりだと私を嘲笑するのでしょうか。


ブリス様にたいして、私はずっと心苦しく思っていました。

せっかく想っていただけても、袖にするしかないので罪悪感に苛まれています。

彼のことを考えると、ずっしり心が重くなります。

それがどうしようもなく私の負担となっているのに、悪評が広まっているせいでクラスの中でも腫物を触るような対応をされていますし、見知らぬ人からも悪しざまに言われています。


心臓はまだバクバクと鳴っていて、足に力が入りません。

泣き声をあげるまいと、ただひたすらに歯を食いしばっても、涙は一向に止まらずハンカチが濡れていくばかりです。

その日、私はずいぶんと馬車の御者をまたせてしまいました。

ただただ心苦しいばかりの、最悪な一日でした。


好きでもない相手に言い寄られて、なぜか周囲が二人をくっつけようと盛り上がるとか、当の本人にはしんどすぎませんか?


予約投稿をここから試してみます。

もう一話、1940に投稿予定です。

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