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最終的に:全裸土下座で愛を叫ばれた。




 ◇◇◇◇◇




 相変わらず、お風呂のたびに竜王陛下からの一緒に風呂入ろうぜ攻撃がやまない。

 何回嫌だと言っても、諦めない。なんなんだ。そもそも一緒に入る理由も訳が分からない。


「お互い見慣れているんだ、別にいいだろ」

「いや、お互いって。私、晒したこととかありませんけど?」

「あっ…………」


 ――――あっ? 


 その『あっ……』ってどういう意味よ? え? 見たことあんの? 見慣れるくらいに見られてたの? いつ? え? 覗きか? 覗きとかやってんのか? 竜王のくせに。


「あ? おいこら竜王、どういうことよ? あぁん?」

 

 立場とか忘れて、つい軽くキレてしまった。犯罪行為は許さないぞ?


「見慣れてるって口を滑らすほどに、日常的に見てるってことよね?」

「違うっ! 違うというか……違わないというか……」


 湯船の中で金色の瞳をグリングリンと動かしながら、なにやら必死に考えを巡らせている陛下。この反応は黒よね? 鉄拳制裁とかやっちゃってもいいくらいのヤツよね?


「心の底から、軽蔑します……」


 流石に竜王を殴るとかは駄目だろうから、いったん心を落ち着けようと思って湯殿から出ようとしていたら、陛下が慌てたように湯船から飛び出て、土下座した。全裸で。


「おわっ!?」

「ウィスタリア! 聞いてくれっ――――」


 なんだろうか、一年くらい前にも同じ状況を体験した気がする。何で風呂場なんだ。何で全裸なんだ。何で土下座なんだ。


「番なんだ!」

「……はい? 誰が?」

「ウィスタリアが」

「誰の?」

「俺の」


 いやいや、ないない。

 匂い関係が欠陥だらけの竜王陛下は、匂いでなんて判断出来ない。番探しも諦めたと言っていたし。


「私がいなくなったらお風呂とか諸々のお世話とか困るからって、それはないです」

「風呂くらい一人で入れるわっ!」

「知ってますよ」

「あーもぉぉぉ、なんでこうなった!」


 陛下が床に額を付けたままで頭を抱えていた。全裸のままで。そして、ガバリと顔を上げて、また土下座スタイルに戻った。


「俺と結婚してくれ!」

「もうしてますけど」

「本当に、結婚してほしいんだ。愛してるんだ」


 声は真剣そのものだった。格好は……横には置けないレベルで全裸だけど。


「そりゃ……その…………好きになってもらえるのは嬉しいですけど…………番なんて嘘つかなくても。あと、覗きを正当化されても」

「王という立場に誓って、覗きはしてねぇ!」


 ――――覗きは。


 じゃあ何したんだと聞けば、毎晩一緒に寝ているから色々触っていた。感触を脳内で再現していたと。

 実際に見てはいないが、寸分の違いなく脳内再生しまくって、それはそれは淫靡な妄想を繰り広げていたと、謎のカミングアウトをされた。


 竜王陛下、なんかやべぇヤツだった。


 確かに、色々諦めて抱き枕として一緒に寝ていたし、なーんか際々なところを撫でたりしてくるなとは思っていたが、まさかそんな妄想に使われていたとは。

 こちとらまじめに、抱き心地のいい枕はないものか、とこっそり探していたのに。

 滅茶苦茶裏切られた気分だ。


「あと、本当に番なんだよ!」


 聞けば、蜜月期間の途中で体調が悪くなったあの日、色々とあったらしい。

 色々の内容を聞いて、あまりにもバカみたいな経緯での発覚で、大笑いしながら話を聞いてしまった。


「俺にはお前しかいないんだ! ウィスタリア、頼む。俺の番に、妻になってくれ!」

「ま、まぁ、いいですよ?」


 そもそも、竜王陛下のことは結構好きなのだ。そうでなければ、命の危険を伴う場合がある湯殿係も、同じベッドで寝たりしながらの偽装妻も続けられなかったと思う。


「とにかく、服を着てくださ――――ぎゃぁぁぁ!」


 全裸土下座からのジャンピング抱きしめ。

 どこまでも一年前のデジャヴのような状況に、苦笑いするしかなかった。




 どうにか服を着てくれた竜王陛下に聞けば、既に周囲には通達済みで、みんな私が番だったと知っているらしい。

 なんで私が一番最後に知ったんだといじけていると、人族だから、という理由が大きかった。


「人族には、番の匂いが分からないだろう? 恋焦がれ、締め付けられ、それでも幸福に感じる匂いなんだ。襲う」


 ――――襲う!?


 性衝動が尋常じゃないらしい。

 あれはやばかったと陛下がブルッと身震いしていた。

 今はだいぶ落ち着いたものの、気を抜くと本能がムクムクするらしい。するな。

 

「襲って得られるのは、嫌悪だろ? ウィスタリアに嫌われたら、死ねる」

「重っ」

「竜族をナメるなよ? 番との痴情のもつれでの事件率一位だぞ」


 それは誇れることなのだろうか?


「監禁率も一位だぞ」

「あー」


 そういえば、私もほぼ監禁状態だったわ。元来からそんなに出かけないタイプだから、全く気付いてなかったけど。


「蜜月期の長さも一位だ」

「…………どういう意味で?」

「今から、蜜月期に入る」

「いや、蜜月期やりましたよね?」

「やってない。一ミリもヤッてない」

「やりました」


 無駄と分かっていても、ちょっと足掻いてみたい。だって、なんか愛が重たすぎて。

 絶対にねちっこい蜜月期になりそうなんだもの。絶対に燃え尽きそうなんだもの。

 なんか「一年間本当によく我慢した。この日のために、俺の人生はあったんだ」とかよく分からないこと言っている竜王陛下。そっと後退りしようとしたものの、素早く抱き上げられてしまい、退路は断たれた。


「覚悟しろよ? 逃げてもいいが追いかけるからな? 公衆面前でも土下座して、絶対に囲い込むからな?」

「重っ……」

 

 というか、土下座は必須項目なんだ?


 このぽんこつで欠陥だらけの竜王陛下を愛してあげられるのは、自分だけなのかもしれない、という気分になってきた。

 だって、本当に番みたいだし、何よりそう分かる前から私のことは気に入っていて、偽装妻を頼むなら私以外は嫌だったとか、耳を赤くして言われたら、そりゃ落ちるしかない。


「もう。優しくしてくださいよ?」

「んっ!」


 幸せいっぱいに破顔して、赤い髪をふわりと揺らす竜王陛下の優しい口づけは、なんとなく甘い気がした――――。




 ―― fin ――




最後までお付き合いありがとうございました!

話タイトルはわざとでふ!(*ノω・*)テヘ


ぽんこついいよね!ぽんこつ!とんこつ?って感じでいいので、ブクマや評価をしていただけますと、笛路が喜び舞い踊ります(*´艸`*)


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