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『おめでたい』のは


 二、



 わらいごえがどうにかおさまったところで、ヒコイチは苦い薬をのむように、湯呑をいっきにあおった。

 むかいがわでは『先生』がめもとをぬぐい、ダイキチがまだ肩をゆらしながら、急須にお湯をたしている。

 さらには、黒猫までが、喉になにかつまらせたようなゲっ、ゲっ、という音を出し、どうやらわらっているらしい。



 ヒコイチの布団の上で『赤ん坊』のことをきいた黒猫は、驚くようすなどまったくみせず、丸く変わらない金色の眼をむけているだけだった。じれたヒコイチが、驚かねえのか、ときけば、いや驚いちゃいるがよ、とゆっくりと動き出し、「いや、ほんとおどろきもものき、だぜ。まったくおめでてえなあ。 ―― おめえの頭はよ」と、顔だけふりむけた。

 

 それに腹をたてたヒコイチが猫をひっつかんで懐につっこみ、ダイキチのお屋敷まできて、いきなりこんなことをきくのは間違ってるとおもうがはっきり答えてくれ、と二人につめより、「 ―― 『先生』がダイキチさんの子をうむのは、いつだい?」ときき、顔をみあわせた二人に大笑いされたのだ。



 そこから、どうしてそんなことを言い出したのかをきかれて、言い訳がましく元締めの名をだし、さらに二人がわらいだし、ようやくおさまったところだった。


「 ―― いやあ、まさか元締めがそんなことを心配してくださっているとは」

 ダイキチはヒコイチが置いたからの湯呑に手をのばすと、なにかかみしめるようにヒコイチの顔をみて、にっこりとした。


 なんだか身の置きどころがないようで、ヒコイチは身をよじる。

「 ・・・すまねえ。ダイキチさん。その、『先生』もゆるしてくれ。元締めのせいで、変なことをおもいつちまって、なんてエか・・・」

 恥ずかしさと、申し訳ないきもちで、言い訳がでてこない。

 


 いや、言い訳のしようがないか。



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