おれと変わらぬ
あの箱の中には小さな煙草盆まであり、チョウジュロウは、古いが立派なつくりの座布団にのっていた。
恥ずかしいというので、あの小さな煙管をどうやって吸っているのかはのぞけなかったが、羅宇をもつ柔らかそうな手のようなものは見えたし、布団にもぐりこむのを、はいずりはじめた赤ん坊をみるように、じっと見守ってしまった。
『 なんでエ、おめえ、あのタニシがそんなにかわいかったのか? 』
チョウジュロウから、世話になった礼だとしてもらった赤い玉をながめていたら、よこから黒猫の手が玉にのび、さわられる前にヒコイチは、玉を懐にしまう。
ダイキチがいうには『サンゴ』という海でとれる貴重なもので、唐渡のかんざしなどには、これの細工物がついているらしい。
「まあ、ちいせエのにうまいこと動くもんだから、かわいいかときかれりゃ、かわいいだろうよ。『先生』だって言ってたろう?」
布団に寝ころがると、このごろこの玉をとりだして、ついつい、こんどのことを思い返してしまうのだ。
するとたいてい、この黒猫がどこかでみていたように、するりと入ってくる。
『 《 毎度、こちらが骨おるような始末でございまして 》ってやつか。でもよお、ありゃあ、見た目がちいせエってだけで、タニシのなかみはただのジジイだろ 』
おれとかわりねえじゃねえか、という乾物屋は、ダイキチのお屋敷でも遠くからタニシをみただけで、近寄ってはこなかった。




