表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/32

つぶ



『先生』がダイキチに首をかたむけ、ほんとうにお手間をとらせてしまって、とわびるような顔をする。

「なにしろ、むかしからすこしわがままを言うおかたなんですけれど、めったに外にもでられませんから、きいてさしあげようと、毎度、こちらが骨おるような始末でございまして」 

 それが楽しいことであるように女はわらう。


「いや、こちらだって、お迎えするのが楽しみなんですから、手間だなんて思っちゃいませんよ」

 ダイキチも言葉のままの顔でうなずいた。



「じゃあ、その『生き人形』をつれた方ってのが、『先生』のお友達ってことですかい」

 ようやく合点がいって、眉をよせたままのヒコイチが腕をむく。



 どこから来るのかしらないが、きっと『生き人形』に困り果て、『先生』をたよって来るのだろう。



 いや、まてよ。



「・・・その、先生のむかしからのお友達ってエのは・・・いつぐらいからの・・・お友達で?」

 ヤオビクニ仲間なのだろうか?それでも、『生き人形』には、困るのか。




 いやですよ、と先生が若いむすめのようにかわいく口元をおさえた。

「『生き人形』はつれておりませんし、『桐箱』は、海にも川にも流しません。 中におさめた布団で休むのは、人形ではなく、ここに来るわたくしの古いしりあいでございます」



「・・・そのひとが、・・・赤ん坊くらいの大きさってわけじゃねえでしょ?」



 ええ、と『先生』はほがらかにうなずいた。


「赤ん坊ほどの大きさもございません。 なにしろ ツブ でございますから」



「・・・・なにですって?」



「 ツブ、 タニシ でございますよ。 ああ、でも、わたくしが初めてあったときよりは、すこしおおきくなってきているようでございます」


 先生は仔犬こいぬのはなしでもするように、ヒコイチとダイキチにゆったりとうなずき、鞠をかかえるほどに両手をひらいてほほえんだ。



 









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ