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履物屋のご隠居

『雰囲気だけ時代小説』というゆるふわ設定でお送りしております。薄目でごらんください。  流しで売り歩く商売をするヒコイチが、ふしぎなことにまきこまれるはなし。



 一、



 そういやあ、と将棋盤のむこうで腕をくんでいた《元締め》が、こわくたちあがった髭をつまみねじりあげ、ヒコイチの顔をみた。


「ヒコさん、キナン町の履物屋だったご隠居を知ってるだろ?」


「・・・ダイキチさんかい?」


 ききかえすまでに間があいたのは、なにもつぎの一手を考えていたせいではなく、その『ダイキチさん』がらみのはなしには、いろいろ気をつけないといけないことがあるからだ。



 もともと不思議ばなしがすきなそのご隠居は、履物屋をあとにまかせてじぶんは街からはなれたお屋敷へと移りすみ、そこで『百物語会』という、怖くふしぎな話好きがあつまって披露しあう集まりをひらいている。

 いや、じっさいにひらいているのは、ヒコイチの知り合いの坊ちゃまこと一条ノブタカという男で、じぶんが金をだす文士のあつまりで『百物語会』というめいもくで、そのてのはなしを披露しあっているらしい。


 やるのは勝手だし、ダイキチもそれを楽しみにして隠居生活をおくっているのだが、そのお屋敷には、ダイキチといっしょに、女が住んでいる。


 『ヤオビクニ』という、としをとらない女が。


 そして、そういうまったくとしをとらない者のことを、世間ではたいがい、『ばけもの』とよぶ。




 ヒコイチや坊ちゃま、ダイキチの知り合いである西堀の隠居は、その女のことを知っているし、会っているし、いっしょに外へでかけたこともある。


 が、ほかのものには、その女のことは、ダイキチのお屋敷に『いる』ということからふせてある。



 なにしろ、としをとらないので、大昔にあった人にみつかると、めんどうだ。

 これはすでに起こったことで、坊ちゃまの家に通う手伝いのばあさんは、その女を、《こどものころにみた女といっしょ》だとみぬいた。ばあさんは口がかたいからいいが、よそでまたそういうことがおこるとも限らないので、外へでかけるときは、なるべく顔を隠すようにしている。 




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