表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

カチカチ山を分解してみる

 日本昔話の有名なお話である「カチカチ山」。

 あまりにも残酷で、教訓は欠片もみえず、報復場面もスカッと爽快というわけでもないという、謎な昔話。


 報復ものの昔話でほかに思い出すのは『さるかに合戦』。

 非業の死をとげた親蟹のために子蟹が仲間とともに敵討ちをするおはなしですが、こちらはスカッと感があります。

 この違いはいったい何なのか。


 ①敵を討つのは当事者の肉親である。


 『さるかに合戦』の場合は、親の仇うちで動機が分かりやすいのに対し、『カチカチ山』うさぎは単純に殺されたおばあさんの知り合いです。孫とかだったらわかりやすかったのかもしれません。


 ②敵討ちシーンの違い


 『さるかに合戦』の場合は、合戦というだけあって、一対多数ではありますが、ある意味、正々堂々と戦います。『カチカチ山』の場合は、無警戒なたぬきをうさぎが誘い出し、火傷をさせたり、親切を装って薬といつわって偽薬(たいていは香辛料入りの味噌みたいなもの)を渡す、最後には泥の舟にのせて破滅させます。

 手口がとにかく狡猾でお世辞にも綺麗ではありません。


 かの太宰先生は、このカチカチ山のうさぎを美少女、たぬきをうさぎに恋する中年男性とするお話にしています。さもあらん、とにかくうさぎのたぬきに対しての憎悪感と嫌悪感がすごすぎる。

 もちろん、敵討ちの物語ですから、憎悪感は当然であり、弱いうさぎが強敵に挑むわけですから、姑息と思えるような手段しか使えないという考え方は当然あるべきです。


 実は少し前に浦島太郎の二次創作を書いたのですが。

 同様に現代のコンプラなどにのっとって改変するとなると、『カチカチ山』って、全編改変になってしまいます。

 ちなみに私が改変するまでもなく、実際に市場に出回る『カチカチ山』は改変されているバージョンが数多いそうです。物語の原型は室町ぐらいに成立していたそうですが、江戸期とかにはすでに改変バージョンなどもでまわっていたとか。

 どれがオリジナルなのかはよくわかりませんが、一番残酷なバージョンの骨組みを書きます。


 ①たぬきが不作の呪いの言葉を吐いたり、畑を荒らしたりする。

 ②おじいさんがたぬきを捕まえる。

 ③たぬきがおばあさんをだまして殺害、婆汁にしてしまう。

 ④たぬき、おばあさんに化け、爺さんに婆汁を食わせたあと、殺害を告白。

 ⑤傷心の爺さん、うさぎに相談。

 ⑥うさぎ、たぬきをさそいだし、火傷を負わせる。

 ⑦うさぎ、火傷の薬といつわり、偽薬を渡し、さらに傷を酷くさせる。

 ⑧うさぎ、たぬきを泥舟にのせ、川に沈め溺死させる。


 こんなふうです。

 よく改変されているのは、③④の部分。さすがにお婆さんを殺して食べてしまうのは特に子供に読ませたくないと思って当然です。

 次に多いのが、⑦。やりすぎ感があるのでしょう。

 中には、⑧まで変更してしまい、ばあさんも死なず、たぬきは改心、めでたしめでたしってものもマジで存在するらしいです。


 たぬきとうさぎの対決シーンをもって、カチカチ山の本筋と見るならば、それもありです。その辺の根底の感情に着目してわかりやすく改造したのが太宰版なのでありましょう。

 同じことをしても偉大な先人には勝てません。

 ここで注目すべきは、さるかに合戦との相違点。


 なぜ、爽快感が違うのか?


 同じ敵討ちでも憎しみの質が違うのです。

 さるかにのさるには憎しみはあっても嫌悪感というものはあまりないのです。ですがたぬきには強い嫌悪感がある。

 つまり、人を喰らうという行為です。

 おそらく日本人の根底にある禁忌を、たぬき(そしてお爺さんも)犯しており、それゆえのうさぎの執拗な憎しみと嫌悪感なのです。


 そう考えると 単純に全て丸く全方位ハッピーエンドにすれば、カチカチ山の根底にあるものは消えてしまいます。


 それらを踏まえ、どうせ改変するなら、カチカチ山は子供向けに焼き直しをするより、エンタメ性に注目し、それでいて爽快感を加味したものに改変していこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ