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愛用の大剣が銀髪美少女になった元傭兵は魔獣を狩る  作者: 日諸 畔
第4章 仲間殺し

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第61話『私を信じてください』

 人型魔獣は一定距離でリュール達を囲んだまま動かない。亡骸を無理やりに変質させられた、哀れな者達。


「あれは、使わないのか?」

「ああ、お前を逃がさないために立たせている」

「悪趣味になったな」


 戦場で命を散らした傭兵の成れの果ては、闘技場の壁として扱われていた。今のリュールであれば、ゴウトを振り切って街へ向かうのは難しくない。それを知っているからこそ、ゴウトは障害物を用意したのだろう。

 死者を冒涜する行為に、リュールは虫唾が走る。ゴウト達はもう、そんな感覚を持っていない。人を滅ぼすことを最優先にした彼らには、手段など関係ないのだ。


「さぁ、やろうか」


 ゴウトは斧槍を頭上で回転させる。動きを見る限り、重量は見た目通り。遠心力をそのままに、リュールへと切りかかるつもりだ。


「やらせるかよ」


 リュールは最軽量にしたブレイダを構え、前方に低く跳躍した。斧槍が振り下ろされる前に、体を支える足を切り落とす算段だ。

 地面を這うような軌道で、ブレイダを左から右に薙ぐ。ゴウトは斧槍をリュールに向け振るが、このタイミングでは間に合わないはずだ。白銀の刃が脛に食い込む。


『リュール様!』


 その叫びだけで愛剣の言わんとしていることがわかった。リュールはブレイダを上に向けた。

 咄嗟の反応では、充分に加速されたスクアを受け止めきれなかった。分厚い斧刃がリュールの左肩に深く埋まった。黒い鎧の肩当ては、いとも容易く切断されていた。


「ぐっ……」


 呼吸が苦しい。傷は肺近くまで達している。ブレイダで防がなければ真っ二つになっていたところだ。それでも、常人ならば命を失うほどの深手を負ってしまった。


「もう少し深くしたつもりだったがな。なかなか良い鎧だな」

『一瞬でも儂を止められる鎧なんて、珍しい』

「そりゃ……どうも……」


 人になる武器での怪我は、通常のものより治りが遅い。それはジルとの戦いで実証されていた。今の危機を乗り切ったとしても、手負いで戦うのは厳しい相手だ。


「しかし、俺とスクアの速度を見誤ったな。まだまだ未熟ということだ。なぁリュール」

『素直に誘いに乗るなど、儂とゴウトを相手にするには早かったな』


 小さな目をさらに細めたゴウトは、スクアをリュールの肩口から引き抜いた。激痛が走るが、治癒が始まっており流血は少ない。


「手を、抜くのか?」

『リュール様……』


 脂汗を流しつつ、精一杯の悪態をつく。リュールの失態は、ゴウト達の言う通りだった。愚かにも、足を狙えと教えられたことを繰り返してしまった。


「お前を殺すのは、例の騎士団が全滅したのを見届けてからだ」

「余裕かよ……」

「仲間になるのなら、そちらの方が良いのだけどな」

「お断りだ。あんたを止めて、俺は街へ向かう」

「街を守ったとしてもその後はどうする? 俺に勝てない程度では、ルヴィエには到底敵わないぞ」

「うるせぇ……」


 後方に飛び退き、右手でブレイダを構える。左手には力が入らない。


「その傷でどう戦う? 治りきるまで待ってはやらんぞ」

「どうにでも、するさ」


 いくつかの作戦が頭に浮かぶ。例えば、斬りかかると見せかけブレイダを人にした隙を突く。例えば、ブレイダを投げつけ弾かれたところを人にして、その隙を突く。どれもがただの奇襲であった。ゴウトほどの男であれば、その程度予想できるようなものだ。

 正攻法では勝てないとの認識がリュールを支配していた。情けないが、今はそれしかない。


『リュール様、私を信じてください』


 ブレイダの声が頭に響く。元気な普段と違い、優しくゆっくりとした話し方。


『先程おっしゃってくれたみたいに、信じてください。私のことも、リュール様ご自身のことも』

「信じる?」

『はい。リュール様と私ならば、あの丸いおじさんなんて、敵ではありません』

「そうか……」

『はいっ!』


 自分が愛剣に向かい叫んだ言葉をわすれていた。ブレイダに言われ、そう気付いた。

 いつの間にか、肩の傷が塞がっていた。


「わかった。やるぞ」

『もちろんです』


 リュールは両手でブレイダを強く握った。

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