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愛用の大剣が銀髪美少女になった元傭兵は魔獣を狩る  作者: 日諸 畔
第4章 仲間殺し

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第51話「白くてよかったなって思っています」

 元親友との再開から十五日後、リュールとブレイダは懐かしい場所を訪れていた。見知った場所であっても、あまり良い思い出はない。


「久しぶりですね」

「そうだな」


 ここは、かつての最前線近くの街。東に進めば広い平原があり、そこで多くの兵士が死んだ。

 騎士の宿舎や傭兵の一時的な住処として発展した町。戦争が終わった後に足を踏み入れたのは初めてだ。あの頃ほどではないが、かなりの賑わいを見せていた。


「まだ壁はあるんだな」

「壊すのも大変でしょうしね」


 平原に面した側の端には、大きな壁がある。石を積み上げ形作られたそれは、この街が最後の砦も兼ねていたことの証明だった。


「とりあえず、夜までは待機だな」

「お宿を探しましょう。せっかくなら良いお宿を」

「まぁ、金はあるからな」


 リュールが一応所属するゼイラス騎士団からは、報酬とは別に路銀が支給されている。金勘定が得意ではないリュールへの配慮との事だが、少々渡しすぎなくらいだ。

 ブレイダはそれに対し「リュール様が重要だと認識しているのですよ」とご満悦だった。ただし、リュールはそこまでの贅沢を求めないため、大半が騎士団に預けたままだ。


「ぱーっといきましょう! ここだけはスカしのいいところですね」

「いい加減ちゃんと呼んでやれよ」

「ご命令ならば」

「じゃあいいや」

「はいっ!」


 傭兵時代によく使っていた安宿の前を通り過ぎ、風呂食事付きの宿に向かってみせた。そこまでの重要性は感じないが、はしゃぐブレイダが微笑ましかった。


 騎士団に捕らえられたジルは、驚くほど従順だった。黒紫の短剣を失い、あらゆる気力が抜け落ちてしまった。少なくともリュールからはそう見えた。

 しっかり拷問の用意をしていたマリムは、微妙な顔をしていた。拍子抜けしたような安心したような、なんとも言えない表情だった。


 彼からは貴重な情報がもたらされた。リュールが感じていた謎の多くを明かすことができた。

 魔獣とは、人に恨みを抱いた生き物の死骸から作るそうだ。人を殺すという利害の一致のもと、作成した者に従う。

 例えばリュールとブレイダが初めて戦った猪型の魔獣。襲われた農村の人々が、農作物を荒らす猪を駆除した結果とのことだ。村人たちは山に罠を仕掛け、多くの猪を駆除していたことが後の調査で判明している。


 魔獣は黒紫の剣で作られる。恨みを残した死骸を突き刺し、剣を通じて対話をする。両者の合意がなされれば、死骸は魔獣として蘇る。リュール達がこれまで狩った魔獣は、ジルが作り出していたものだ。

 魔獣は陽の光に弱く、昼間はまともに活動できない。夜にしか襲撃がなかったのは、そのためだった。

 

 魔獣を作る方法は、ガーラとダーラから伝えられたらしい。ブレイダやレピアがそれを知らなかった理由は不明だ。ジルもわからないと言った。刃の色によって何か違いがあるのではないかと、マリムは想定していた。


 剣が人になる理由は、ジルも知らなかった。ある朝、愛用の短剣が二本とも女の姿になっていたそうだ。名前をつけたら黒紫の短剣に姿を変えた。

 そして、突然現れたルヴィエに誘われた。傭兵団壊滅後、生きることに苦しみ人への恨みを募らせていたジルは、喜んで仲間になったとのことだ。


「リュール様は、人を恨んでいないですよね」

「まぁ、そうだな。知ってるだろ?」

「はい。知っておりますよ」


 少し高級な宿のベッドで一息ついた時、ブレイダが唐突に尋ねてきた。リュールは天幕で交わした会話を思い出し、少し恥ずかしくなる。


「それはきっとレミィも同じです。だから私とレピア姉さんは白いのだと思います。レピア姉さんの場合は、たぶんスカしがいるからですね」

「そんなもんかね」


 ブレイダがマリムを褒めるのは珍しかった。素直に言葉にできるのは、レミルナと仲良くなったからかもしれない。


「はい。何の確証もありませんから、スカしの前では言いませんでしたけどね」

「そうか」

「私は白くてよかったなって思っています」

「そうか」

「はいっ!」


 満面の笑みを横目に見て、リュールは軽く目を閉じた。たぶん自分の口元も緩んでいる。夜には動き出すことになるから、今は少しでも休んでおきたい。

 ブレイダが感じるルヴィエが持つ剣の反応。それを追って遥々こんな所までやって来たのだ。

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