第2話 天才第七皇子。
―第1話(第七皇子誕生)から5年後―
「いや〜やはり第七皇子様は天才ですな!」
男性がそう第七皇子について皇帝に話している。
ここはミュールハイム・アム・マイン帝国宮殿、皇帝の間。
ここには今、皇帝と俺と俺の侍女、第七皇子とそれの執事が居る。
第七皇子こと俺の弟誕生から早5年。
5年経ったわけなのでもちろんなのだが、俺は成長し今は6歳、弟の第七皇子は5歳に成った。
そして5年間で凄い事があった。
まぁそれは俺以外のやつから見ればの事で、俺は知っていた事だ。
ある1人の記者が書いた記事が出回り、世間体ではこう言われている。
「末息子として生まれた第七皇子、兄上達をも上回る非常に非凡な才の持ち主! 第二皇子、第三皇子による皇帝権争いに割って入り皇帝への道まっしぐらか!?」
俺の考えていた通り、小説なんかの通りのような事だった。
ふざけてやがる。
その記事を書いたやつは勿論罰が下ったわけだが、そんなことお構いなしに第七皇子に対する支持はどんどん大きくなっていった。
第七皇子が生まれてから子供が増えることはなくこの国には今、皇帝と王妃の間に七人の子供が居る。
一番上の第一皇子は女の子で皇帝権はなし。
二番目三番目が第二皇子、第三皇子で皇帝権がある。
四番目五番目の第四皇子、第五皇子は女の子なので皇帝権はない。
六番目が俺、第六皇子。
第二皇子と第三皇子との歳が離れているのもあり皇帝権はない。
そして七番目が弟の第七皇子、第七皇子も俺同様第二、第三皇子と歳が離れているため、皇帝権はないはずだった。
第七皇子の皇帝権について皇帝は初めは無視を決め込んでいたが、それはあまりに大きく成りすぎてしまった。
そして収まりも効かなくなり皇帝は第七皇子に皇帝権を与えた。
結果この俺は、帝国で唯一皇帝権を持たない男の皇子ということになってしまったわけだ。
な、言っただろ。 第六皇子は第七皇子の影に隠れるって。
第七皇子の影にならないように俺も努力はしたさ。
が、しょせんは凡人の46歳おっさんの努力だ。
そんな努力が天才の才能に勝てるわけもなく、このざまってわけだ。
今になっては無駄な努力だったと思ってしまっている。
で、大切な事だが、第七皇子が転生したやつなのかって話だが…分からん!
才能というか、やってる事で言えば完全に5歳児のやる事では無い。
第七皇子は4歳には第七階が最高らしいのだが第四階の魔法が使え、こっちは最高位がソードマスターそれ以外は知らんが、ソードナイトと呼ばれるレベルの剣術が出来ていた。
が、普段の行動(生活する上での行動)で言えばどこからどう見ても年相応な行動しかしない。
俺の中での結論で言えば俺の弟、第七皇子は転生者ではないが、天才。
つまり、ナチュラル天才ということになっている。
1番たちの悪いやつだ。
前世の知識を持っているやつならまぁまだ対等だと思えはするが、ナチュラル天才には全くもってそう思えん。
「第六皇子、剣術のお稽古のお時間でございます。」
俺の次女がそう話しかけてきた。
「はい、わかりました!」
俺は元気いっぱいの声でそう答えた。
当たり前の事だが、6歳の俺がおっさんの口調では話すわけがない。
話すことに関して1番大変だった事は喋りだす時期だった。
なんとこの俺は魔法の力なのかは知らんが1歳と2ヶ月になる頃には言葉を軽く発せられた。
が、1歳の子供は意識もハッキリしていないはずだ。
つまり、この世界では1歳2ヶ月で話し始めるのが標準だとしても話してしまっては俺がおっさんなのがバレるのではないか? という不安から話し始めたのは3歳だった。
今考えれば、話し始めるのが遅かった事も俺には皇帝権が与えられなかった理由の1つだったのだろう。
第七皇子が2歳で話し始めて、兄の俺がまだ話してないのはヤバいとなってから話し始めた。
つまり、俺は弟よりも話し始めるのが遅かったのだ。
「お、第六皇子、剣術の稽古ですかい?」
俺と俺の侍女が剣術道場へ行くと顔にヒゲを蓄えた1人の陽気な男が声をかけてきた。
この陽気な男がなぜ毎回俺が剣術道場に来る時間にこの剣術道場に居るのかは分からん。
時間的に騎士の人なら仕事に就いているはずなんだが。
こいつは俺の剣の師匠というわけでもなく、ホントに何をやってるやつなのか分からない。
こいつは俺が来るとちょうどどっかに行ってしまう。
俺の知ってる情報で言うとこいつは42歳くらいのおっさんの(多分)無職剣士だな。
「今日も頑張って下だせぇよ。」
今日もそいつはそう言ってどっかに行った。
ホントにこいつは何なんだ?
「ハァ、ハァ、ハァ。 疲れた〜!」
「そうでございますね。 時間的にもそろそろ終わりでございます。」
俺が息を切らしながら一旦行動を辞めると侍女が俺にそう言ってきた。
俺の剣術の練習は毎日1時間だ。
この世界の人からすると少ないらしいのだが、俺の前世は地球生まれ地球育ち、今なおどちらかと言うと地球での価値観の方が大きい。
つまり、毎日1時間は頭おかしい。
「「お〜お、第七皇子様だぞ!」」
俺が汗を拭き、部屋に戻る準備をしていると剣術道場にそんな声が聞こえた。
俺がここに入って来た時とは違い、この剣術道場に居た人達は第七皇子の方へ集まって行った。
俺が剣術道場を使った後に第七皇子が毎回剣術道場を使う。
上の兄弟達、第二皇子と第三皇子は同時に剣術道場を使う。
普通なら年の近い兄弟仲良く同じ時間に使うというのが王家のモットーらしいのだが、俺と第七皇子は違う。
これは俺と第七皇子とのレベルの差を出来るだけ知られないようにするという皇帝からの配慮らしい。
俺の兄としての威厳が出来るだけ壊れないようにするためだろうな。
つまり、俺と第七皇子とのレベルの差を隠さなければならない程のレベルの差があるとのことだ。
俺の精神年齢は40歳超えのおっさんだからまぁ受け止められるが、俺がもし6歳児そのままの精神年齢ならこの年に弟に剣術で圧倒的なレベルの差をつけられていると知ったら立ち直れないだろう。
話しは変わるが、魔法の方に関してはこの宮殿内では全く習わないし、練習しない。
これは皇帝であっても宮殿内に魔法使いを呼ぶのが難しいのと、7歳から10歳まで家柄関係なく国立魔法学校に通うことになるからだ。
普通は俺は後1年、第七皇子は後2年だが、第七皇子が第四階の魔法を使えたのもあり、俺と同時期に飛び級して入学するらしい。
第七皇子はこれ程までに天才なのだ。
俺は完全に第七皇子の影に隠れてしまった。
街では俺の顔は知らなくても第七皇子の顔なら知っているやつも居るらしい。
覚悟は込めていたが、本当に第七皇子無双劇だな、全く本当に面白くねぇぜ。