Microsoft社の無料イラスト生成サービス「Image Creater」関連
無料挿絵(例:アマチュア作品、AI挿絵)の評価は加点式で
Microsoftのサービス「Image Creater」で無料でさくさく挿絵を作れる良い時代になりましたね。
誰でも簡単にサクサク挿絵が作れる「Image Creater」の利用方法について知りたい方は以下のタイトルのエッセイを先にお読みください。
小説に挿絵が欲しい? ならMicrosoftの無料サービスImage Createrで指示→作成が簡単でお勧め♪ ただし、ご利用は計画的に。
……驚くほど簡単に生成できることが理解できるでしょう。
本エッセイは、そうして生成したAI挿絵や、アマチュア絵師の方が描いた作品への評価姿勢について語ってます。
「小説家になろう」に小説を投稿されている作家さんの皆さんは、一部、プロの方はいるけれど、その多くはアマチュアさんですよね。そして、「小説家になろう」の小説にイラストを贈ってくれるような方もその殆どはアマチュアさんでしょう。Microsoft社のImage Createrで無料で生成するイラストも無料ですしアマチュア扱いで良いでしょう。
となると、イラスト、挿絵についての評価について鉄則があります。
それは評価は加点式にすることです。
評価の加点式があるなら減点式もあるよね、って話になりますが、加点式ならこの表情がいいよね、とか絵柄が好きとか、塗りが綺麗だねとか、指折り数えて良い点を列挙していく訳です。
では、減点式なら?
手がちゃんと描けてないとか、大きさがおかしいとか、向きが変とか、気になる点を列挙していくパターンですね。
なぜ、こんな話をエッセイにしようかというとですね。日本人はイラストに対しての目が肥えているからなんです。そこらで目にする商業イラストを見れば、それはもう綺麗で構成も考え抜かれていて、拡大して細部を眺めてみても、怪しいところなんてまず見つかりません。
でも、ですね?
日本は絵を描く人口の層が異様に厚くて、そうして目にする商業イラストは、その中でも選りすぐりの人達が数多くのリテイクをしながら完成させた逸品なんです。ぱっと見、簡単そうに見えても、実は模写するだけでも多くの人は挫折するようなクオリティです。
そうして、目が肥えてしまった人は得てして、減点式で評価しがちです。生成AIが作成した挿絵などはぱっと見、そうしたプロ作品っぽい印象を受ける出来なだけに、商業イラスト並みのクオリティを基準として、あそこが駄目だ、ここが気に入らないと不満を列挙しちゃう訳です。
では、その姿勢はアマチュア作品に対して妥当でしょうか?
はい。
そんな基準で評価をする先生がいたら、生徒達は奮起する前に逃げ出しちゃうでしょう。
野球で言えば、基準とする選手は走攻守揃ったイチローとか、投手と打者でどっちも超一流な大谷選手を基準に小学生の生徒相手に、アレが駄目だ、コレが駄目だ、基準に追いついてない、とサンドバックにするようなモノです。
ちょっと野球に疎い人だとピンとこないかもしれませんね。
まぁ、そんな方でも、本エッセイのタイトルに興味を持つくらいですから、挿絵へのある程度の審美眼はお持ちでしょう。では、ちょっと素人の皆さんが大勢投稿しているpixivに行って、アマチュアの皆さんの作品を眺めてみましょう。
あ、2023年末時点だと、ちゃんと「AI生成作品の表示を除く」のオプションがあるので、そちらを忘れずに。
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さて、絵師の裾野の広さ、頂の高さを理解された皆さん。
どうでした? まずイラストに背景が付いてないパターンが多いことに気付いた方は多いでしょう。元作品の模写をしてるだけ、それもキャラクターだけ、というパターンも多いですね。顔はよく描けているけれど、身体に違和感がある、服装に違和感がある、とかはどうでしょう?
色の塗りはどうでした? 陰影のつけ方は? 質感は?
静物(自動車とか)が描かれている作品、やけに少なく感じませんでした?
etc、etcと数え上げたらきりがないくらい、色々と気付きがあったかと思います。
まぁ、ちょっとでも絵を描いてみればわかるんですけど、線を一本引くのにも時間が掛かる訳で、トレース絵の一枚でもなぞってみればわかるように、漫画の中のたった一コマを模写するだけでも、結構な時間が必要です。
で、ちょっとした思い付きで描いていくと、だいたい途中で力尽きます。キャラクターだけに絞って描いて、背景は幾何学的なイメージを描いてポップな感じに、とかやれるだけでも大したもんです。
そして、イラスト、今回の場合でいくと挿絵ですけど、よくあるデッサン本などにあるような現実の模写とは決定的に違う部分があります。それは現実の様々なモノを組み合わせて、架空の絵を完成させるということ。
実はこの時点でもうハードルが爆上がりになります。風景画とか、写真を見ての模写とかなら、ある意味、完成品があって、それに倣えばいいのでまだ楽です。描いたモノと現実を比較すれば、問題箇所も見えてくるのでちまちま直してればそれなりにはなります。
では、挿絵は?
小説の中のワンシーン、或いは作品全体の世界観などを考慮して、限られた情報を元に、ほぼほぼ合っていて、現実目線で見ても違和感がない、そんな絵を創造しないといけません。現実にある自動車であるとか、テーブルであるとか、或いは人物などを参考にデッサンを描いても、組み合わせて整合性をちゃんと取って、なおかつ挿絵として成立させないといけません。
素人だとそもそも写真を見ながらですら、自動車一台まともに描けるかというとキツイです。それに参考資料が希望したアングルと一致してるとは限りません。でも挿絵的にはこの角度で描きたい、みたいな事になると不足分はあちこちの資料を漁って、多分こうだろうと考えて描くことになります。大変です。
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大変だ、という漠然としたイメージは持てたかと思いますが、ではイラストを一枚描き上げるのに、どういった事に配慮していくことになるでしょう?
では、Amazonさんを参考に、コンピュータイラストを描く参考書籍からそこを読み取ってみましょう。
今回は小説のキャラクターありの挿絵としますが、その場合、大雑把に分けると、①キャラクター、②静物、③背景、④塗り(色彩)、⑤遠近法、⑥構図、⑦世界観、⑧絵柄、くらいに分けられるでしょう。
①キャラクターですが、これは多様な概念の集合体です。老若男女、人種、体形などから始まって、髪、手、目(瞳)、表情、筋肉、おっぱい、ポーズ(一人、二人、男女、男男)、服飾、服の皺、場合によっては濡れ透け、見えそうで見えないポーズ、ドキドキ仕草、脱ぎかけ、萌えるパンツ、なんてところに拘ることになります。ちなみに列挙した項目ですが、そこだけ扱ったような書籍が販売されているんですよ。いやぁ、絵の世界は奥が深いというか闇が深いというか。
キャラクターは人が大半ですが、動物(特に犬、猫)なんてのも個別書籍が出てます。それくらい奥が深い、難度が高い、骨格から考慮しないとソレっぽく描けない、ってのもあります。仮想生物、クリーチャー、触手なんて書籍はあっても、昆虫を描くための書籍は見当たらないですね。ニッチな分野なんでしょうか。
②静物は机や椅子のような家具、文房具、自動車、観葉植物などなど身の回りにあるありとあらゆるモノですね。これもまたキャラクターにポンと一つ、傍らに椅子を一つ置くだけでも印象ががらっと変わってくるので、小道具として重要です。ちなみに書籍だと静物デッサンくらいの大枠でしか出てないですね。まぁいくらでも現物を眺めて模写できるのと、キャラクターと違って可動部がないか僅かだから、説明するとこが少ないってのはあるのでしょう。
③背景、これは風景とはちょっと違います。あくまでもキャラクターを支える名脇役でなくてはなりません。場合によってはかなり簡略化されたり、敢えて要素を省いて必要最小限だけ描くなんてこともあります。撮影した写真で背景の省略なんてのはありませんが、挿絵の場合、メイン部分、描きたい内容に注目して貰えるよう、空から雲を消すとか、敢えて月を大きく描くとか、キャラクターが立っている位置以外、足元の色を塗らないとか、工夫が多くみられる部分です。
④塗り(色彩)ですが、これもまた奥が深い分野です。光と陰影、色彩、質感、キャラ塗り、肌塗り、おっぱい塗り、といった具合です。キャラ塗りというのはキャラクターが映える塗り方、敢えて強調したり、他と違う雰囲気で整えたり、キャラクターのイメージに沿った色を選択するなど、単なる色ではなく、内面やキャラクター性まで訴える点が特徴ですね。
肌塗りはその名の通り、人の肌で陰影によって凹凸を表現したり滑らかさを表現したりと拘るとそこだけで底なし沼になります。透き通るような肌とか、吸いつくような肌とかとか。おっぱい塗りだけで独立書籍があるんですよね、日本って……。
⑤遠近法ですけど、これは遠いモノは小さく、近いものは大きく。キャラクターのポーズによってはカメラ視点に近いところはめっちゃ大きく、遠いところは極端に角度を付けて、といったように現実的な遠近だけでなく、カメラワーク的な要素を入れて現実より敢えて強弱をつけることで、絵に勢いをつける、迫力を付ける、なんてのもあって、これだけで一冊の書籍になる内容ですね。描く内容を一通り、カメラ目線で整える必要があるので、ある程度、筋の通った絵が描けるようになってからでないと、ここで悩めるようにはなりません。
⑥構図ですけど、これだけで一冊の書籍になる悩ましい内容です。絵としては正しい、遠近法も正しい、だけど、挿絵として見ると、何も訴えてくるモノがない、なんて事ありませんか? それは絵のどこに注目させるか、何を訴えたいか、というポイントが押さえられてないからなんですよね。細密に描かれた部分と、敢えて開けた空間といったように、ある程度の強弱がないと、人の目線が滑ってしまい、奇麗なイラストだね、で終わってしまう事に。
……中には要素をこれでもかとぎゅうぎゅう詰め込んでイラストとして完成させているようなパターンもあるけど、それはそれで要素詰込みイラスト、なんて書籍があるくらい高難度ですので、別枠で考えるべきでしょう。
⑦世界観、はい、だいぶ大きな概念になってきました。これまでの内容が全部クリアできていても、小説が描いている世界が江戸時代なのに、絵が現代日本だったりしたら全てがご破算です。描かれる背景、人物、静物などなど、全てで場所、時代、雰囲気といった統一感が無くてはいけません。まぁ小説によっては、現代日本だけどメカ少女が飛んでいる、みたいなのもありますけど、その場合は敢えて放り込まれた異質な存在、メカ少女が他と馴染むように外見を合わせるといった工夫をする必要が出てきます。持ってる小物一つ、髪型一つでも拘りが必要です。勿論、何でも現実に合わせる必要はありませんが「らしさ」は出さないといけませんね。
⑧絵柄、こればっかりは絵師の個性としか言い様のない部分ですね。これまでの全てがクリアできていても「なんか絵柄が気に入らない」とか思われたら、それでお終いです。逆に言えば、これまでの要素であれこれ足りなくても「絵柄は好き」だと許せたりするから不思議なモノですね。
……という訳で、ざっくり八つの視点から挿絵について語ってみましたが、いかがだったでしょうか? 一枚の挿絵を描き上げるのも大変なのがイメージできたかと思います。
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挿絵は多くの要素で構成された集大成であって、アマチュア作品の場合は各要素について加点式に評価していくべき、といった本エッセイの内容ですが、最後に人と生成AIの違いについて語っておきましょう。
人の場合、先に挙げた八要素については段階を追って修得していくモノですが、生成AIの場合はそういった事がありません。全てが並列に行われていて、どの要素もそこそこ、といったところがあります。これは生成AIが描いている各要素を実のところ理解してない事から起こる現象です。人間なら人と自動車はどちらが大きいかなんてすぐ理解できるけど、生成AIはカメラに寄せているから大きく描かれている人なのか、実際に巨人なのか、そもそも人の大きさがどの程度なのか、などなど、全てが考慮されてません。学習元となる絵から特徴を学んでいるだけなので、物体の前後関係すら判断されてないのです。
これらはMicrosoft社のImage Createrが無料なのでばんばん生成してみれば、そういった仕掛けが見えてくるので色々と試してみると良いでしょう。老人妖精とエルフ少女、それぞれ単独だとちゃんと描いてくれるのに、両者が一枚絵に入る指示にすると殆どの場合「少女妖精+老人」、極稀にエルフ少女が入る、なんてように、学習元データにかなり影響を受けていると思われる癖があったりするんですよね。他にも「人+ヘリ」にすると必ずヘリが上方、人が下方に描かれてしまうとか。
人形は顔が命です、なんて言われるように普通、人なら挿絵で、キャラの顔が破綻しているような絵は描きません。他の要素、例えば塗りを多少端折ったり、なんてことはあっても、ソコをミスったら終わりと理解してるからです。でも、生成AIは他の要素をだいたい及第点で仕上げてきてるのに、ボケた顔だったり、目が歪んでいたりします。そこ間違えちゃ駄目だろー、みたいなのが結構、ゴロゴロ生成されるんですよね。
はい、ちょっと愚痴が入りましたので最後の締めということで。
加点式で評価していけばわかるように、実のところアマチュア絵師の九割九分九厘は、総合評価で行けば生成AIにはまるで届いてません。でも不思議と味わいのある絵だったり、どっちの方が好み?と聞かれると、人が描いた絵の方が良かったりするのもまた面白いところだと思います。それぞれの良さがあるので、皆さん、アマチュア目線でそれぞれを愛でて行きましょう。
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オマケで、私のアクション小説「ゲームに侵食された世界で、今日も俺は空を飛ぶ」に登場するメカ少女をイメージした白黒挿絵をImage Createrで生成したモノを紹介しますね。
お題としては「現代都市の上空を舞うメカ少女」です。ここで言うメカ少女は、少女がSFチックで空戦可能な戦闘ドレスを纏っているタイプで射撃武器装備。なのでロボ子とか、巨大ロボ子ではありません。
以下、加点式評価です。
①キャラクター
→メカと服装の割合、装備のデザイン、動きのあるポーズ、表情、軽やかに舞う髪などどれもが最高♪
②静物
→メカ少女が持つライフルも片手で持つには大き過ぎる感もまた良し。
③背景
→空を飛んでる感があり遠くが霞んでたり、あくまでも主役はメカ少女となってて大満足。
④塗り(色彩)
→光や陰影にも破綻なし。
⑤遠近法
→ちゃんと遥か眼下に現代都市、空を飛んでる感があり見事。
⑥構図
→ちゃんとメカ少女が主役、背景が名脇役になってますね。
⑦世界観
→現代都市と、メカ少女それぞれが綺麗に纏まってます。あと小説内でも装備の変遷があった旨は語られているので、左手の盾装備なしの時期もあったのかも、と納得できる範囲。
⑧絵柄
→めっちゃ好み。クールビューティな印象が小説にマッチ。
……という訳で、実はImage Createrでの生成(公開から五か月後のリトライ時ですが)で、一発目で引き当ててしまった当たり画像でした。よく見ると両足の付け根部分、本来は右足より左足を前に描かないといけないってミスはあるんですけどね。今だにこれを超える挿絵が生成できません。
あとこれ、模写で良いから描いてみろ、と言われても、メカ少女を線画で描く辺りで力尽きる自信があります。背景の都市部なんてこれ、手書きなら何時間かかることやら……。
はい、最後にオマケで付けた挿絵はちょっと例題としては微妙だったかもしれませんね。ぱっと見、おかしいと気付けるような部分が無かったので。
ただまぁ、挿絵に対して漠然とコメントするのと、八つの判断基準、視点からあれこれ評価してみるのでは、また違った印象を受けるだろうということで紹介してみました。
Image Createrは「この絵の〇〇だけ修正して」とかできないのだけが残念なんですよね。無料なのに文句言うのもどうかと思いますけど。
あと、一応、pixivのURLを書いておきますね。
pixiv
https://www.pixiv.net/
自分で描いてみるとわかるんですが、どんな品質だろうと1枚描ききってる時点で実は結構頑張ってるんですよね。日本語の文章を書ければ、小説書くのも余裕……かどうかは、実際に作品を一つでいいから仕上げてみないと、その難度って結構わからないものです。
私はキャラ絵の正面、側面の設定画を考えてみて、顔の向きを上、横、斜め上、斜め下、下といったように変えたモノを描こうとして、同じキャラの角度違いにすることすら素人には厳しい、という現実を知りました。絵師の道もまた遠く険しいですね。ミスってると秒でわかるとこがイラストの怖いとこです。
◆注意事項
・オマケの挿絵、実はImage Createrの苦手部分を回避してます。
・背景が無限遠に遠くキャラと直接の関係がない。
・キャラ単独で、他キャラとの絡みがない。
・一般的な衣服のような皺の要素を気にしないでいい。
・位置関係を考慮する要素がない。
・カラー挿絵での、もろ写真風だったり人形っぽい塗りが回避できてる。
・白黒挿絵は濃淡のみなので、カラー挿絵の質感問題がでにくい。
・これ以外の成果物だと手が三本あったり足が無かったり、棒立ちだったり、持ってる銃器が不思議形状だったりと、9割くらいは見た瞬間、残念判定するレベル。