1/12
プロローグ
お前さえいなければ、俺が跡取りだった。
お前さえいなければ、彼女は俺を見てくれた。
お前さえ―――お前さえいなければ。
―――そうだ。お前さえいなければいいんだ。
だから俺は石を手に持った。石を持ったその手を振り上げた。
お前さえいなければ、何もかも上手くいくと思ったから。
俺は必要な人間になり、愛される男になり、両親にとって大切な後継ぎになれるから。
実際、上手くいった。
そう、上手くいっていたんだ。
俺は全てを手に入れた。
―――なのに。
お前は戻って来た。