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お前さえいなければ  作者: 冬馬亮
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プロローグ

 




 お前さえいなければ、俺が跡取りだった。


 お前さえいなければ、彼女は俺を見てくれた。


 お前さえ―――お前さえいなければ。



 ―――そうだ。お前さえいなければいいんだ。






 だから俺は石を手に持った。石を持ったその手を振り上げた。



 お前さえいなければ、何もかも上手くいくと思ったから。



 俺は必要な人間になり、愛される男になり、両親にとって大切な後継ぎになれるから。




 実際、上手くいった。



 そう、上手くいっていたんだ。



 俺は全てを手に入れた。







 ―――なのに。



 お前は戻って来た。







 


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