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花風船  作者: 奇群妖
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八章

「小日向さん、これ。遅くなっちゃったけど昨日のお礼と、借りてた傘」

「ありがとうございます!わ、お菓子まで!」

「うん。支柱だけだと悪いからさ。家に持って帰って食べてよ」


 翌日、会社から帰る時間になって脇本さんから話しかけられた。

 脇本さんの手には大きめの紙袋と、昨日渡したビニール傘。紙袋の中には支柱だけじゃなくてお菓子の入った箱まで入れられている。

 傘は有り余ってるしわざわざ返してくれなくても良かったのに。

 しかもお菓子。これそこそこ値段するやつだ。テレビで見たことあるもん。

 この前どこだかの芸能人が美味しそうに食べてた。


「支柱ってそれで大丈夫そうだったかな?いちおう広げるとこんな感じなんだけど……」


 脇本さんにスマホの画面を見せてもらう。

 トマトの写真だ。私の持っている植木鉢のようなもので育てられており、鉢を丸く覆うように支柱が立てられている。

 

「これぴったりですよ!本当に何から何までありがとうございます!」

「いやいや、お礼を言うのは僕の方だよ。何かあったら言って。他にも恩返しさせてもらうから」


 脇本さんはそう言うと、いつものようにふにゃ、と笑うのだった。


***


「っはぁああ!美味しいいいい!」


 自宅に帰って、私のテンションはMAXに達していた。ちなみにそのテンションをぶつけるのは例の植木鉢。

 なにが悲しくて植木鉢に話しかけてるんだろう私は。

 でも作物に読み聞かせをしたりして美味しく育てたとか言う農家の人もいるぐらいだし、愛の成る木に恋バナを仕掛けたらご利益が上がったりしそうじゃない?あ、しませんか。はい。


「このお菓子美味しすぎるでしょ……」


 私が今食べているのは脇本さんに貰ったクッキーみたいなもの。チョコやら何やらで飾り付けられていて可愛いし、何より美味しい。

 そう、美味しい。いくらでも食べられるんじゃないだろうか。


「っと、支柱も立ててあげなきゃだよね……」


 片手にお菓子を持ったままで脇本さんから受け取った紙袋から支柱を引っ張り出して広げてみる。

 植木鉢の縁ぐらいの大きさの輪っか型針金が三つ、等間隔で並んでおり縦に六本ぐらいまっすぐな支柱が入っている。

 縦に伸びた支柱に輪っかが括り付けられているから何と言うか、柱の骨組み、みたいな。


「これを植木鉢に刺せばいいのかな……?」


 とりあえず植木鉢にサイズを合わせてみる。

 ……うん、ぴったりだ。本当に刺すだけで大丈夫そう。


「……」


 土に、ゆっくりと支柱の根元をめり込ませてみる。

 柔らかい土に支柱が潜っていく感触が心地良い。

 そのまま、ゆっくりと差しこみ終えて私は少しだけ確認した。

 少し葉っぱには触りにくくなってしまったけれど、植物自体が傷ついた様子は無い。これで大丈夫そうだ。


「つるとか、巻きつけてあげた方が良いのかな……?」


 少しとぐろを巻くようにしているつるがあったので絡まりを解いて支柱に引っかけてあげる。

 これで少しでも、たくさん成長できるのなら良いんだけど。


「どんな花を咲かせるんだろうな……」


 この植物の花がどんなふうになるのか。今から楽しみだけれど、最近は日光に当ててあげられていない。

 最近は雨が多いからなぁ。

 この雨が止んだら『愛の成る木』もしっかり成長できるだろうに。


「あ、今日はまだ水あげてなかったよね」


 今朝は暑く無かったので、朝は水をやらなかった。

 そのせいで土の表面はからからだ。

 サイトには、水は土の表面が湿る程度に上げるようにと書いてあった。だから今日もその通りに、キッチンから水を汲んでくると植木鉢に注ぎ込む。


「最近は大変だけど、頑張ろうね」


 植物に少しだけ語り掛けて、私はベッドに向かうのだった。

 明日の仕事で脇本さんに会うの、楽しみだなぁ。

そろそろ『愛の成る木』が何という植物なのか、分かった方もいらっしゃるかもしれません。

そんな貴方は植物博士を名乗っても良いレベルでしょう。



ヒント8:『愛の成る木』の原産地は日本外の暖かい地域です。

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