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短編

引きこもった私に残されたもの

作者: 見伏由綸

引きこもりになったのは偶然でもあったし、必然でもあった。

正しい子であろうとしたからこそ、正しさが気にかかって人と話すのが怖くなった。いい子であろうとしたからこそ、反抗もせずちゃんと学校に毎日通った。いつ崩れるかもしれない、けれど見た目ほど不安定でもない平衡は、きっかけさえなければ今でも平衡なままだったのかもしれない。しかし、実際には、正しさに囚われた恐怖が勝ってしまったのだった。


引きこもりになった。クラスメイトと会うのが怖くて、大学に行かなくなった。当てられるのが怖くて、オンライン授業に出なくなった。何を話すのも怖くて、友達と連絡を取らなくなった。

誰にも会わないから、自分の言葉で話すことも無くなった。家族に責められないよう、パソコンの前に座って授業を受けているフリをして誤魔化していたが、実際に授業に出ているわけではないので先生と話すこともない。家族とは普通に会話をしていたが、振り返るとそれは、連絡事項の確認ばかりで。意見を言うことももちろんあったが、それは全て、家族の機嫌を損ねない家族の望んだ言葉を選び出して音にするだけの作業で。自分の気持ちを言葉にして表すことは、全くと言っていいほど無くなっていた。


そんな中、最後に残ったのが、キーボードで打つ言葉だった。パソコンを閉じてしまえば見えなくなる文字たち。紙に書いた言葉と違って、家族に見られる心配をする必要がない。そこにあるようで無いような言葉たち。だからこそ、心の中の汚いところも脆いところも表現できて。だからこそ、誰かから見た正しさを気にかけなくてよくて。だからこそ、自分の思ったことを言える最後の場所で。


私は今日も文字を打つ。



引きこもりの方にも、そうでない方にも。世の全ての人に、幸あれ。


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