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一年生交流会2


「なあ、ここ、どこだ?」

「えーと、今向いてるのがこっちで、3階にいて、近くには扉があって……わからない」

「とりあえず進んでみる?」


 タイガ君が聞いて、アラタ君が地図を見ながら頭上にはてなを浮かべて、しほちゃんは迷いそうな提案をしている。

 学校探検が始まって数分で、わたしたちのグループは迷子となった。


「あははははっ、方向音痴すぎだよ!」


 もちろん迷子と言っても元来た道は覚えているし、地図も覚えているのでいつでも体育館に戻れるけど……探索が始まってすぐに、タイガ君とアラタ君が任せて! と言ったのでそれに着いていっているのだけど、面白いくらいに道を間違えたり全く違う方向に歩いたりしていて、見ていて楽しい。

 ふたりが止まって考えようとすると、しほちゃんが「進んだら目印になる場所があるかも」と言ってわからないまま歩いている。


「だって地図が難しいんだよ」

「うんうん」

「みゆちゃんはわかるの?」


 そう聞かれて、今いる場所を地図上で教えてあげる。そしてまた歩き出して、迷ってしまう。さっきからこれの繰り返しで、面白くてついつい笑ってしまう。

 しほちゃんがそれを見て、なんでかわからないという表情をしたあとにわたしと同じように笑うんだからもっと面白い。しほちゃんかわいいなぁ。


 そんな感じでゆっくりとしたペースで進んでいって、やっと一つ目のスタンプを押してもらった。残りは3個ある。


「ここからならわかる! ついてこい!」


 今度はタイガ君がアラタ君から地図を受け取って、かなりのスピードで進んでいく。一つ目であんなに時間がかかったのは、アラタ君が地図を見るのを苦手だったからかもしれない。


 あ、スタンプの数は全部四つで、誰が地図を持ってみんなを導くのかは好きなように決められる。私たちは一人一個担当することにしていて、アラタ君、タイガ君、しほちゃん、わたしの順番だ。

 タイガ君は最初に言った通り一度も迷わずにスタンプの場所まで来て、アラタ君にどや顔をしている。こうして見てると、なんで喧嘩があったのかあ全然わからない。


「お~すごい、はやかったね!」

「タイガ君すごいです!」


 わたしとしほちゃんが褒めると、さらにどや顔になる。これまたちょっと面白い。


「それじゃあ次はしほだね。たぶんこっちだと思う!」


 そう言って地図を逆さまに持った状態で、今来た道を引き返すように歩くしほちゃん。それに気づいたアラタ君が、しほちゃんに地図が逆さまなことを教える。

 うんうん、子供どうしで助け合っていいですね。え、わたし? 保護者目線というか、今日はちょっとやりすぎちゃった気がするから大人しくしていようかなって。いわゆる後方腕くみ保護者面というのをしている。あれ、使い方違う? まあいっか。


 逆さの地図を教えてからは、しほちゃんをアラタ君が手伝いながら先に進んでいる。しほちゃんは地図を両手で持っているので、左手がさみしい。


「みゆさん、は地図読めるの?」


 しほちゃんを見守っていると、となりにアラタ君が来ていた。読めるけど、1年生なら読めなくてもいいと思うけどね?


「そっか……。あ、タイガはね、入学式の日にもああやって学校までの道を教えてくれてね、すごくすごいんだよ」


 幼なじみではないのかな? わからないことだらけだけれども、今仲がいいならそれでいいや。


 そのあともアラタ君と話なたら歩いていると、スタンプの場所についた。3個目のスタンプを押して、しほちゃんから地図を受けとる。

 それを畳んで右手に持ってから、しほちゃんと手を繋いだ。


「え、地図見ないのか?」

「覚えてるから大丈夫だよ!」


 タイガ君が聞いてきて、それを自信満々に返す。体育館に一番早く戻れる道を通っていくと、窓から授業中の先輩たちがいる教室が見えた。


「何かの授業をしているみたいだね」

「何年生かな、大人っぽいよね!」

「手振ってみようぜ! おーい」

「お、おーい」

「あはははっ、ここからじゃ聞こえないと思うよ~」

「あ、気づいて振ってくれてるよ!」


 声が届いたのか、窓際に座っていた先輩たちが控えめに手を振ってくれていた。あ、先生にバレて怒られてる。その様子を見て、わたしとしほちゃんは笑って、タイガ君は「授業に集中しないからだ」とか言っている。その横でうんうんとアラタ君が頷いているけど、手を振り始めたのは君たちだよね? ツッコミ役は不在らしい。


「そこ曲がったら体育館までまっすぐだよ~」

「おっし! だれが体育館に一番でつくか競争しようぜ! よういどん!」


 タイガ君が走り出すのを見てアラタ君も走り出した。わたしたち女の子はゆっくり行きましょう、男の子って落ち着きがなくてやーねー、しほちゃん。……しほちゃん、しほちゃん!? 走るの? あ、ちょ、まって、手繋いだままだから引っ張られる! 

 しほちゃんは意外とノリが良いらしい。わたしもしほちゃんに並んで走りながら、体育館に入る。


「おかえりなさい。全員いるわね? スタンプは……全部集まってる。ゴールおめでとう」


 古郡先生にチェックをしてもらって、わたしたちのグループはゴールした。

 体育館では、3.4組の子が間違い探しをしている途中で、1.2組の子はまだ誰も戻ってきていない。これはもしや、あるのでは?


 とりあえず適当な場所に座って、しほちゃんと小さな声で喋りながら他の子たちを待った。


 10分位で全てのグループが戻ってきて、レクリエーションも終わって、クラスごとに並んで校長先生のお話を聞く。


 そのあとに発表されるのが、学校探索を一番早く終わらせたグループの子たちの名前だ。

 若干しほちゃんの手を握る力が強くなった気がする。わたしもちょっと緊張するけど、1番はないと思う。


「一番早かったのは、朝霧みゆさん、佐々木タイガくん、星野しほさん、峰岸アラタくんのグループです」

「やった!」

「とーぜんだな!」

「やったね!」


離れたところから二人の声が聞こえて、隣でしほちゃんが喜んでいる。わたしもしほちゃんの方を向いて、両手を組んで喜びをわかちあう。というか腕を上下にぶんぶんする。


「でも、体育館の目の前で走っていましたね。他のグループの子たちも走っていましたが、廊下で走ってはいけません。わかりましたね?」

『はーい!』


 元気よく返事をして交流会が終わり教室に戻ると、机の上に数種類の本……教科書が置かれていた。新品の教科書独特の匂いがする。

「机に置いてある本が、明日から使う教科書です。持ち帰ってもいいけど、授業で忘れないようにしてくださいね」


 そう言われて、軽く教科書に目を通す。

 やっぱり1年生の内容なので、少しつまらないかもしれない。面白そうなのは国語や道徳の教科書で、小説などがのっている。とりあえずノートを自前で持ってくるようにして、なにかして遊ぼう……。


「それと、朝霧みゆさんと星野しほさん。二人に賞品があるから、前に来てくれる?」

「「はい!」」


 二人で元気よく返事をして、古郡先生の前に立つ。


「二人ともよくがんばりました」


 そう言って先生がくれたのは小さなメダルで、わっかが着いている。首にかけられるみたい。

 あることを思い付いたわたしは、しほちゃんの方を向いて言う。


「しほちゃん、こっち向いて!」



 不思議そうに向いたので、背伸びして手を伸ばして、しほちゃんの頭を通してメダルを首にかけてあげた。

 そしてわたしが膝をついて頭を下げると、察したのか今度はしほちゃんがメダルをかけてくれる。うん、いいね。


「「ありがとーございます!」」

「二人ともどういたしまして。はい、席に戻ったら帰りの挨拶をしましょう」


 きりつ、きをつけ、れい。


『さよーなら!』


 お母さんはいないので、昨日は4人で帰った道を二人で帰る。

 わたしたちの首にかかったメダルが、陽の光にあたって輝いていた。

 しほさんがメダルをみゆさんの首にかけるところ、王女や女王が騎士に勲章を渡すところを想像しました。クラスの子にはどういう風に見えていたんでしょうかね。

 ちなみに下校についてですが、主人公の住んでいる町は治安が良く、決まった道順を集団下校で歩き、途中で抜けるかたちとなっています。

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