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第1話 ファストタウン(2) ――ルユ

「初めまして! 私の名前はルユ、驚かしちゃってごめんね!」


「は、初めまして、私はクロデ=カナです。カナって呼んでください」


「カナちゃんって言うんだ? そっかー」


 青白髪の少女は珍しそうにこちらを見る。


 彼女の容姿は女性にしては短めな青髪で少しボーイッシュな印象を受ける。


 身長はカナと変わらないか少し高いぐらいだろう。


「えっと、その、ルユちゃん?は、私に何か用があったの?」


「ああ、そうだ。君って多分初心者さんだよね? 何かお困りのようだったから声をかけたんだけれど違った?」


 ルユと名乗る少女は、どうやら挙動不審なカナを見て声をかけてくれたらしい。


「あ、そうです! 色々わからない事があって……誰かに教えて貰おうと思っていたんですけれど、その……NPCとプレイヤーの区別もつかなくて……」


「ああ、なるほどね……もし良かったら、私が教えて上げようか?」


「本当ですか! 是非、お願いします!」


 親切な人が居てくれて助かった。


 そう思いながらカナはルユに質問をしていく。


「まずはNPCからだね。頭上に緑色のアイコンが出ている人は全員NPCだよ」


 ルユは先程、カナが話し掛けようとした人を指し、説明する。


 ……ルユが話し掛けてくれて本当に助かった。

 危うく、大恥を晒すところだったようだ。


「それで、青のアイコンは一般プレイヤー。自分のアイコンは見えないけれど、君にも青いアイコンが出ているよ」


「そうなんだ……」


 カナは頭上を見上げるが青空が広がるばかりで何も無い。


「黄色アイコンは残HP20%以下の状態、灰色はデスペナルティ状態、その他の色は所属ギルドや持っている称号に色変えできるのがあるからそれかな。大体はプレイヤーだよ」


「ルユちゃんのはそれで色が違うんだね」


 カナはルユの頭上を見た。


 彼女のアイコンは白銀のアイコンをしており、他のプレイヤーと比べても目を引く。


「そうそう。街の中で見かけるアイコンはこんな感じかな。モンスターが出てくるフィールドだと、赤色のアイコンには気をつけないと駄目だよ。プレイヤー、NPC問わず敵対状態が確定した存在全てに表示されるアイコンだからうかうかしていたらやられちゃうよ~。因みに敵対状態じゃないモンスターとかは黄緑色だよ」


「わかりました。凄く複雑なんですね……」


 今聞いた色の数だけでも覚えるのは大変そうだ。


「最初はそう感じるかもしれないけれど、やっている内に慣れてくるよ。むしろ、パッと見で判断できるようになってくるから便利だよ」


「なるほど、そういうものって考えた方が良いのかな」


 感覚で慣れろと言う事だろう。


「まあ、アイコンを過信しすぎるのも危険なんだけどね。他に知りたいことは無い?」


「あ、えーっと……ログアウトの仕方……と……その、メニューの開き方が……」


 アイコンの色は元から複雑そうな印象受けていた為、聞くことにためらいは無かった。しかし、流石にメニューの開き方やログアウトの仕方すら知らないのはおかしいだろうとカナは思う。


 よってその羞恥で声は自然と小さくなり、視線も迷子になってしまう。


「え、あー……こうやったら開けるよ」


 ルユは少し驚いた顔をしていたが、手をグーからパーにするような仕草を行う。


 カナもそれにならい、仕草を真似すると幾つかの丸いアイコンが円状に開いていった。


 真下のアイコンが一番明るく、時計回りに段々暗くなっている。


「多分それで開けたと思うけれど、アイコンを反時計回りになぞってみて」


 カナが言われた通りにすると、アイコンは反時計回りにスライドしていき、途中でとあるアイコンが表示されるとそこでスライドは止まった。


 どうやらメニューは円状ではなく、螺旋状に開かれていたようである。


 一番最後に表示されたアイコンは扉から出るようなマークがついている。


「扉から出るようなマークのアイコンが出てきたら、それがログアウトだよ」


「わあ、ありがとうございます。とても助かりました!」


「いーよー、折角の初プレイなのに右も左もわからないんじゃ不便だろうしね。因みに、今説明したのは全部、ゲームソフトについてる説明書に全部書いてあったはずだから、後で読んでおくと良いよ」


「え゛……」


 少し言いづらそうな困った表情をしながら話してくれたリユの言葉に、カナは固まった。


「まあ、説明書なんか見ないで始めるプレイヤーも多いよね。でも、このゲームの説明書はちゃんと読んでおいた方が良いよ? あ、でも紙じゃなくてゲーム内でも、さっきのログアウトアイコンの一個手前がマニュアルアイコンだから、そっちの方がわかりやすいかもね」


「ご……」


「ご?」


「ごめんなさい! ちゃんと説明書すら読んでなくてっ!」


 説明書すらろくに読まず時間を取らせてしまっていた事実に、感謝よりも罪悪感の方が強くなってしまった。


「え!? 別に気にしなくてもいいよ? 初心者だとよくあることだと思うし……」


「でも……」


 ルユはそう言ってくれているが、カナとしてはどうしても、申し訳ない気持ちで一杯になってしまう。


「……うーん、そうだ! それなら、私とフレンド登録してくれない?」


「フレンド登録?」


 オンラインゲームをほとんどやった事がないカナには、それが何のことを指すのかわかっていなかった。


「あー……、メリットは色々とあるけれど、主に特定のプレイヤーと連絡を取る機能だよ! モンスターを一緒に狩りに行ったりもできるし、どうかな? 私としては、遊ぶ友達が増えるからお願いしたい所なんだけど……」


「是非、こっちからお願いしたいくらいです!」


 カナはルユの説明を聞くと、続く問いには即決した。


「それじゃあ、決まりだね!」


 そう言ってルユが何かを操作し始めると、カナの視界の隅っこに何か通知のような物が届く。


 メニューを開いてみるとログアウトアイコンの2つほど手前、手を繋いだ2人の人型のアイコンがピカピカと点滅していた。


 カナがそのアイコンを押すと、フレンド申請が届いていますというメッセージの後、ルユのプレイヤー情報と承認、拒否の選択肢が現れる。


 迷わず承認を押すとフレンド一覧にはルユの名前が並んだ。


「はい、これでフレンド登録は完了だよ。私は一旦ログアウトするけれど君もかな?」


「私も一旦ログアウトして、ネットで情報を整理しようかと」


「そっか、それがいいね」


 親切に接してくれる少女に、再びカナは感謝の心が湧いてくる。


「あの……本当にありがとうございます……。とても助かりました」


「どういたしまして、たしかにログアウトの仕方がわからないのは困るよねー」


 そんなカナの様子を知ってか知らずか、そう言ってルユは茶化す様に苦笑いで返してきた。


「でも、これからはよろしくね。他にわからない事があったらまた聞いてよ!」


「はい!」


 そんな会話の中、ルユの体はノイズがかった様になり、半透明になる。


「それじゃあ!」


 続けて彼女がそう言うと、ルユの姿はヒュンッと消え、ログアウトしてしまった。


「私も……」


 カナも続けてログアウトを実行する。


 こうして、カナは初回ログインを終えたのであった。

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