最終話(4/4) トッププレイヤーの仲間入り ――
「ウキナ!?」
カナがウキナに近づいて状態を確認する。
「大丈夫よ、幽体化しただけ……いや、大丈夫では無いわね……」
幽体化したウキナはダメージをしばらく無効化できるもののステータスはいつもの半分となる。
これでは実質戦線離脱となってしまうだろう……。
「更に速度が上がってるの……!?」
カナが言うように、竜の動きは状態異常が付与される前よりも更に速度が上がってカナに襲いかかってきた。
【先読み】スキルのおかげで速度が上がってもギリギリ回避できているものの、余裕は無い。
「恐らく火力も上がっているよ! 多分かかっている状態異常に対してバフを発生させる能力だ!」
「っ、罠だったって言うわけか……」
「これは迂闊に攻撃もできないね」
「ごめんなさい、判断を間違えたわ……」
「こっちこそごめん、他はともかく石化がかかるのはおかしいと思ったんだ……即死では無いけれどボス級の敵にかかるのは致命的過ぎる!」
ウキナの謝罪に周りは仕方が無かったとフォローするが、現状はとても窮地に立たされていた。
今の竜に敵意を向けられれば、カナ以外は10秒も持たずHPが0になりかねないので迂闊に手出しもできない。
「カナ、耐えきれる!? 竜のデバフが切れるまで耐え切れれば、まだ巻き返せるからそれまで……!」
「大丈夫! ギリギリだけれどこのまま避け続ければ……え?」
「何だ!?」
カナと相対していた竜が急に空高く舞い上がる。
竜は翼で身を包み、回転しながら光と炎を纏っていくと……。
「ちょっと待て、まさか……!?」
「これは……まずいね?」
「全員防御態勢! 可能なら回……、駄目か、どうやっても耐えられない……!」
ルユが言い切る前に竜は墜ちてくる。
ルユはその光景を見て仕方無く大剣を構えた。
「【剣聖の心眼】、【オーバーブースト】、【エネルギーブレイド】!!!」
自身の今出せる最高火力の技を、落ちる前に間に合う限界ギリギリまで貯めて竜へと叩き込む。
それによって竜の技の威力は大幅に減衰した。
しかし、それでも爆炎と光が周囲を包み込む。
このくらいであればぎりぎり防げるものの、直撃すれば全員無事ではいられなかっただろう。
「っつ、切り札も使い切っちゃったな……」
爆炎と光が晴れた後、尚も竜はその姿を保ち続けていた。
「ほぼ自爆みたいな技使っておいてまだピンピンしてるのね……」
「……ねぇ、これは1度諦めた方が良いんじゃ無い?」
「え!?」
魔王の一言にカナは驚く。
そうして魔王は【帰還結晶】を取り出す。
「……そうかもね、もう一度挑めば勝てるだろうし、此処で一旦諦めた方が良いかも」
「そっか……それなら」
ルユも同じ意見の様である。
カナもそれを聞いて【帰還結晶】を用意する。
「アイテムの調達とかがまた大変だけれど、引き返すなら今しかないな」
「あ……」
クロのその言葉を聞いて、カナはこの攻略に乗り出すまでにかかった準備時間を思い出す。
恐らく、此処で引けばまたしばらくの期間は準備に時間を費やさなければならないだろう。
折角ここまで来れたのにという思いもあるが、仕方が無い事だろうと諦めてカナは【帰還結晶】を見た。
「……いや、まだよ。今の攻撃にカナの【恐れぬ姫】【白砂姫の闘心】なら削り切れるかも知れない」
そこに口を挟んだのはウキナである。
「それは余りにもリスクが高すぎるよ? 特にカナが……」
「第1、そういう効果のスキルは作戦から除外する提案をしたのは君じゃ無かったけ?」
「ええ、この作戦は失敗すればカナのリスクが大きい作戦……、だから使わない方針だったのだけれど……、私はもう役に立たないし判断はカナに任せるわ」
そう言ってウキナはカナの方を向く。
「本当はここで戻った方が良いのだけれど、折角ここまで来れたのだから最後まで戦いたいんでしょ?」
「ありがとう……、でも、良いのかな? 私がそんなわがまま言って……」
「遠慮はしなくていいぞ、戦いたいなら俺達はついていくから大丈夫だ」
「分が悪い賭けでもないしね、だけどカナこそ本当に良いの? 駄目だったときのリスクが一番高いのはカナだよ?」
「……うん、わかった、それじゃあ私に任せて!」
「そうか、それじゃあ僕達はそれをサポートするとしよう」
竜は再び空高く舞い上がる。
竜は翼で身を包み、回転しながら光と炎を纏っていく。
「固定行動……? いや、どちらにしてもチャンスか!」
カナは竜の降下地点へと先回りする。
「【白砂姫の闘心】!」
スキルの発動と同時に竜の降下が始まる。
「チャンスは一度切り、一か八かだけれど決して分が悪い賭けじゃない!」
「一撃で仕留めるのよ!」
「大丈夫!」
落ちてきた竜をカナは拳で受ける。
当然、オーバーキルのダメージがカナに襲いかかるが、【恐れぬ姫】が発動する。
他の討伐メンバーはカナのカウンターから竜を逃がさないよう攻撃を加えた。
「【強打Ⅳ】!」
竜の頭に拳がめり込む。
放たれた技はただの基礎スキルだったが、凄まじい威力となって竜を貫いた。
その衝撃は、龍の体を光と変えて消し去るのだった。
そしてステージ全体にcongratulationという文字が浮かび、アナウンスが流れる。
『レジェンドモンスター古代光炎竜・ラシュロンが倒されました』
そのアナウンスは今MakeO.S.にログインしていた全てのプレイヤーに流されたのだった。




