最終話(3/4) トッププレイヤーの仲間入り ――滅びの時
「グルアァァァァアア!?」
鱗を砕かれた竜はクロの拘束を破るものの苦しそうな低い悲鳴を上げながら数歩後退る。
目の前の3人を睨み付けてはいるが攻撃に転じても来ず、ただただ苦しそうに地に伏せるのだった。
砕かれた鱗のヒビは全体へと広がっていき、幾つかの鱗は竜から剥がれ落ち、竜の体からは光が大きく漏れ出している。
「やった!」
作戦通り竜に攻撃が通じたカナは喜びの声を挙げる。
「やったのか?」
「取り敢えずこの形態は突破かな……HPは尽きてないと思うけれど……」
地に伏せてエネルギーを暴走させている竜の余波に、吹き飛ばされないよう手を前にかざしながらクロとルユの2人は話す。
「ちょっと、これはどういうこと? 何であれだけ強力な攻撃を加え続けてビクともしなかった竜が、たったあれだけの攻撃で力尽きかけてるのよ!?」
そこへウキナが近づいてきて3人に話し掛けて来た。
「僕も是非聞かせて欲しいかな?」
魔王も薄めの魔力壁を展開させながら近づいてくる。
「事の発端は、竜のエネルギーがカナには無効化されている理由を考えてみたんだ」
ルユは竜から目を離さずに説明を始めた。
「竜の纏うエネルギーは恐らく古代属性、詳細まではわからなかったけれど多分これは間違い無い」
特殊な括りではあるといえ古代属性という属性がゲーム内で実際に存在していること。
古代光炎竜・ラシュロンという名前からしても大いに予想できることだろう。
設定として文献にも幾つか記されているモンスターなので、そのような情報を何処かから入手できた可能性もある。
「そして、カナも同じ古代属性の魔力持ちになった設定が入っているはずだからダメージの無効化はこれが原因って考えても問題無い……というかぶっちゃけこれ以外に思い付かない」
カナは現在、トッププレイヤーに匹敵する程に強く、そのプレイスタイルは特異だ。
だが出来ること自体は余り多く無いといえる。
それ故にルユはこの原因に消去法ながら答えを見つけたのである。
「でもそれならどう無効化しているのかって話なんだけれど……私は同化だと思ったんだ」
「同化?」
「中和とかじゃなくてかい?」
「あの膨大そうなエネルギーが浸食や中和できると思う?」
「……無理だね」
「そう、他にも色々と可能性はあったけれど、私は可能性が高そうな同化の説で結論づけたんだ」
勿論、ルユが把握出来ていないゲーム内要素が絡んでいる可能性も有ったので一種の賭けではある。
「……成程、そういうことか」
「でもそれならカナの攻撃時にも何かしらの反応がありそうなもんじゃないの?」
ウキナはカナやクロと同じ疑問を持つ。
「そうだね、でも私はカナの攻撃が効いていない理由は、竜のエネルギーを無効化できてないんじゃなくてまだ何か足りてないって可能性の方が大きいって思ったんだよ」
ルユは、カナが実は自身の魔力で竜のエネルギー自体を無効化する事はできていたという仮説で話す。
「それで、ウキナが最初に砕いた鱗に着目してみた」
「鱗……? あ!」
そこでウキナは今の竜が最初に砕けた鱗が、自分が第一形態の一番最初に砕いた鱗と全く同じ位置だと気付いた。
「凄いよねルユって……。他の鱗は砕けなかったのにあれだけ砕けた事から、私も最初はウキナの【砕き鎌】の効果かと思っていたけれど、よく考えたら装甲の破壊効果があるスキルや攻撃は他にも与えていたのに、砕けたのはあれだけなのはおかしいってルユが気付いたんだよ」
カナが両腕で余波を凌ぎながらルユが気付いた理由を話した。
「だから、あそこが弱点部位である事を第1形態でヒントになっていたと思ったそうだ」
クロも片腕で耐え凌ぎながらルユの考えに説明を付け足した。
「恐らくこの形態の突破条件は古代エネルギーの無効化と弱点部位への一定ダメージ。古代属性のアイテムの持ち込みとか無効化手段は色々あるし、多分それが本来の攻略法だと思う」
そう言ってルユは自分の説明に区切りを付けるのだった。
「……なるほどね」
「……たしかにそれが標準の攻略法っぽいか」
「納得して貰った所で丁度みたいだよ」
ルユが視線で前方を指す先を見ると、竜が鱗をボトボトと落とし自身の纏うエネルギーを制御仕切れずボロボロになりながらも立ち上がる様子が見えた。
「ちょっと嘘でしょ!?」
「おいおい、そんな状態でまだ戦うのか……!?」
「これは、まさかまた耐久……?」
「ルユ? これって逃げ続ければ良いの? ほっといてもHP減っていく気がするんだけど……」
そこで竜はステージを覆う量のもはや数もわからない火と光の魔法陣を展開し始めた。
「いや……これは多分――」
避けられないほどでは無いが、決して気は抜けない量の光の槍と火球がまだらに降り注ぐと竜自身も体の崩壊をものともせず襲いかかってくる。
「――やられる前にやるパターンだ」
竜の速度を読んでカウンターを決めたルユは大きなダメージを与えて竜を退けた。
鱗と流血エフェクトが大きく舞う。
ステージすら破壊しそうな咆吼がステージ全体に響く。
明確に確信を持てた最後の戦いの始まりだった。
■
第4形態目の竜は命を燃やしながらもその火力と速度を活かし、防御面に関しては全てを捨て去る勢いだった。
今まで弾き返していたような攻撃も崩れ落ち、光に包まれた肉体に当たれば大きなダメージになる、そんな状態だ。
だが、ルギとトウカは降り注ぐ雨から自身を守るので精一杯。
他の面々もあれだけの期間用意していたアイテムを殆ど使い切ってしまい、火力が大幅にダウンしていた。
お互いに満身創痍で戦い、各々の集中力の限界も超えている。
「一番キツいのは竜の強さよりもこの連戦だったかな……」
「俺の攻撃じゃ流石に大きなダメージにはなっていないぞ」
「……っ、追いつけない!」
唯一ノーダメージで元気なカナも、自身のリーチの無さが仇となり、光速で動き続ける竜には攻撃を当てられていない。
「大丈夫よ、【厄鎌】!」
そこへ、竜を怯ませようとウキナがスキルを打ち込む。
3つの鎌は2つ空振ってしまうが1つは命中した。
すると、思わぬ効果が発生するのだった。
「え、状態異常も効くようになっている!?」
【厄鎌】の追加効果である速度低下の状態異常が付与されたアイコンが、竜に浮かぶ。
「……毒も効いているね」
魔王の方でも、自身の放った魔法の状態異常効果が効く事を確認できた様だった。
「それなら……!【這い寄る影:死神(覚醒)】!」
ウキナはオッドアイ状態だった金色の瞳が紫紺色に変わる。
体に走っていたラインは桃紫色に輝き、髪の色も同じく桃紫色に変わり淡い光を纏う、額には紋章まで表れるが【刈り取る者:死神(覚醒)】の時とは紋様が違った。
彼女の周囲に浮いていた大鎌は1度消えたと思うとすぐに、4つの大鎌に増えるが何も纏う物は無かった。
「えっ!? それって大丈夫なの!?」
カナがウキナを心配する。
当然だ。
この様な姿になったウキナは、常時狂化状態で指示も聞かずにとにかく暴れ回るはずと聞かされているのだから。
「こっちはアレの対になっているだけのスキルだから安心して! 狂化もつかないわ!」
そう言うと、ウキナは合計五つの鎌を構えて竜に向かう。
その速度はたしかに、オッドアイの状態時と変わらないようだ。
「こっちは――」
紫紺の瞳が妖しく光り、毒々しいオーラを纏った五つの鎌がそれぞれ独立した動きで竜へと殺到する。
「状態異常特化よ!」
竜は速度が低下した事により、ウキナの大鎌の全段ヒットを許し、苦しそうな声をあげる。
そして、幾つもの状態異常アイコンが竜へと浮かんでいった。
今の一撃だけでも相当な数のデバフをかけられた様である。
攻撃低下に防御低下に毒に盲目、風邪や幻覚、石化に腐食など約20近い状態異常のアイコンがつけられた。
「石化……? まさか!? まずいウキナ!?」
何かに気付いたルユがウキナに注意を促す。
「え?」
ドスッ
しかし、その注意の甲斐は虚しく、ウキナの体には彼女でも認識できない速度で尻尾が突き立てられていた。
尻尾は体を貫通し、ウキナの8割近く残っていたHPを一瞬にして0にする。
そうしてHPが尽きたウキナは光りとなって消えた後、半透明の体になってその場に再出現した。
「……え?」
状況を理解出来ていない彼女の声がステージに響くのだった。
サブタイトルは両方の意味




