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第1話 ファストタウン ――出発

「わぁー……!」


 いよいよ、最初の街へと出てきたカナは様々な事に驚いていた。


 視覚は勿論、先程の初期設定部屋(正式名称では無いが勝手に名付けられた)では感じられなかった、他の五感もはっきりと感じられるのだ。


「これでゲームの中なんだ……現実と変わらないみたい……これもペインシンクロ率を100%にしたおかげかな?」


 そう思わずには居られないほど感覚に違和感が無い、どこまでも自然ではっきりとした感覚がある。


「初期設定だけのつもりだったけれど、もうちょっと遊んでみようかな……」


 そう言ってカナは次の行動を考える。


「でも、何をしよう」


 MakeO.S.には特にゲームの目的は存在していない。


 どこまでも自由で、プレイヤーのプレイスタイルの数だけ物語(ストーリー)が……タイプのゲームだ。


「まずはステータスの確認……ってあれ、どうやって開くんだろう……」


 カナは自分のステータスを見ようとするが、見方をそもそも知らない事に気付いた。


「……それじゃあ、街から出てみてモンスターを倒してみようかな」


 わからないものは仕方が無い、それなら分り易くモンスターと戦ってみよう。


 そう言って、カナは広場の自分が出現した場所からまっすぐに歩いて行った。


 ■


「あ……れ~?」


 あれから数十分、カナは最初の広場へと戻って来ていた。


 尚、街の外には出ていない。否、()()()()()()


 ずっと街の中を彷徨い続けた挙げ句、最初の大きな木がシンボルの広場に戻ってきてしまったのである。


「まさか、私の方向音痴がゲームの中でも発動するとは……」


 カナは広場に置かれたベンチに座って腰を落ち着ける。


「一旦ログアウトしてネットで情報集めてきた方が良いかな」


 そんな考えが出た所で更に疑問が出る。


「あれ……ゲームのログアウトってどうやってするんだろ?」


 その疑問に思い至った所で本格的にまずいと気付いたがもう遅い。


 流石にログアウトの仕方ぐらいは調べてからログインするべきだったと思い至るが後の祭りであった。


「……こういうのはきっと人に聞くのが一番だよね」


 そう言いながらカナは周囲を見る。


 大人気ゲームの始まりの街だけあってプレイヤーの数はとても多い。


 ただ、多すぎるのであった。


「うー……」


 クロデ=カナの中身、黒崎奏は別に人とコミュニケーションを取るのが苦手な訳では無い。


 ただ、控えめと心配性な性格が災いして積極性にはかけるのだ。


「どのアイコンがプレイヤーなのかわかっていないのがキツい。話しかけてNPCだったら笑い物だよね……」


 街の中の人々にはそれぞれ頭上に三角錐を逆向きにした様なアイコンが出ていたのだがその色はバラバラ過ぎる。青、赤、黄色、緑、更には赤混じりの黄色など紛らわしい色まであるのだ。


 大半がプレイヤーを指しているのだろうが前情報無しには、どの色がNPCなのかわからない。


 確率は低いと思うがNPCを引き当ててしまう可能性は十分にあった。


「後、結構速い人たちがいるし……」


 カナの目にかなり速い速度で駆けるプレイヤーらしき人達が写る。


 恐らくはステータスのAGIの差だろう、歩いている速度にほとんど差が無いが、走る速度には差が出るようだ。


「あの人達はプレイヤーだろうけれど私じゃ追いつけないだろうしなー」


 初期設定部屋で出せたあのスピードは、ステータスをチュートリアル仕様に変えられたからできた芸当であって、今のカナはLv.1、全能力値が現実と変わらないステータスに戻ったカナには彼らに追いつくことは不可能であった。


「……とはいえ、ずっと考えていても時間の無駄か……よし、勇気を出していってみよう」


 数分悩んで特に他の打開策も思い付かなかったカナは、頭上に緑色のアイコンが出ている人を見つけると決意を固め、近づきだした。


 ――その瞬間、後ろから肩をちょんちょんと突かれる。


「ひゃあああっ!?」


 意気込み、意識を集中し始めた直後だったので驚き、変な声を上げてしまう。


 後ろを急いで振り向く。


「ごめんごめん、そんなに驚かれるとは思っていなかった」


 振り向いた先には私とそう背丈が変わらない、少し困った表情をしながらこちらを見る青白髪の少女がいた。

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