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最終話(2/4) トッププレイヤーの仲間入り ――反撃開始

 竜との激戦を繰り広げる1つのパーティ。


 その戦いは激しさを増す一方だが、戦況は全く揺るがなかった。


 いや、段々とパーティ側が押され始めているだろう。


 高いステータスと磨かれたスキルが可能にする人外の動きと力は、死力を尽くさんとする竜にすら対抗できる手段へと化しつつも、竜を脅かす脅威とは成り得ていなかった。


「はぁっ!」


 カナは氷の魔力を纏った拳で竜の鱗を叩き付けるがビクともしない。


 続いて闇魔力を纏った蹴りも叩き込むが結果は変わらなかった。


「カナっ! 横!」


 ウキナの声を聞いたカナは直感的に構え、横から来る竜の尻尾の急襲に備える。


 アクティブスキル【空受】、受けた衝撃をそのまま大気に逃がすスキルだ。

 練度や状況にも寄るがカナの場合、ほぼいつでも全ての打撃系攻撃が無効化可能と言えるくらいには使い方をマスターできていた。


 そうして衝撃を逃がしたカナは竜の尾を掴み、【フルスイングⅣ】で空中背負い投げを決めようとする。


 竜の巨体を持ち上げられるカナの姿は逞しいが、残念ながらこれも竜は翼を使って地に叩き付けられる前に一回転し、態勢を立て直す。


「これも駄目かー……」


「カナ、流石に無茶し過ぎよ」


 カナは今の所ノーダメージに等しいが、被弾が死に直結する彼女にとってそれは全く安心できる材料とはならない。


 有効手段が見つからない現在、被弾し易い状況を作ること自体に相当なリスクがある。


「ごめんごめん、気をつけるよ」


 それを知ってか知らずか、カナはそう言いながら一旦距離を取る。


 そうして後方に下がったカナにルユが話し掛けて来た。


「ねぇカナ、今のってどうやって対処したんだい?」


「え?普通に【空受】で回避しただけだよ」


 カナは質問の意図がわからず、戸惑いながら返事を返す。


「いや、それだけじゃ無いはずだよ。尻尾の衝撃だけなら【空受】でも大丈夫だけれど、あれが纏うエネルギーは属性の付与効果もあるはず……」


「あ、確かに……それじゃあなんで私は無事だったんだろ……」


 竜の尻尾は大きな光を纏い、周囲には白い炎まで渦巻いている。


 あれで叩き付けられれば、明らかに打撃の他にもダメージを喰らう要素があるだろう。


「……もしかして職業効果?」


 何かに気付いたルユが、そうボソッと呟いた。


「どういうこと?」


「同じ古代が関係する者同士、何かが作用してたのかもしれないと思ってね」


「あー、ありえるかもな……」


 ルユの意見にクロも同意を示す。


「同じ古代のエネルギーだから相殺し合っているとか普通にありそうだ」


「成程……」


 クロの推測を聞いてカナは納得しかけた。


「でも、それなら何で攻撃するときには全然効果が無いんだろ?」


 だが、カナは攻撃時には全くその影響が見られない事に疑問を覚える。


 そういう設定であるのなら攻撃時にもある程度、相手の防御性能を低下させても良さそうなものだ。


「それは……わからんな……」


 クロはカナの疑問には答えられず、首を振る。


 そこに口を挟んだのは何かを思い付いた様子のルユだ。


「……クロ、カナ。ちょっと試したい事があるんだけれどいいかな?」


 ■


 一方その頃、前線を保つ主軸となっていたウキナと魔王だったが、二人は徐々に押され始めていた。


「……大丈夫かい、死神?」


「全然平気、って言いたいけれどそろそろまずいかしらね……近接スキルが底をつきそうだわ」


 第1形態で戦い始めた時にはそこまで大きく動くことの無かった竜だったが、現在は状況が一変。


 進んで攻めの姿勢に出た竜の動きには、ウキナのステータスを持ってしてもついていくのはギリギリだった。


 竜が地面を叩き付けると地面の爆発と衝撃波でウキナは打ち上げられる。

 すぐに態勢を整えるが、最早瞬間移動に等しい動きで竜が頭上を取るとその爪によって叩き落とされる。


 それにも咄嗟の反応で鎌を合わせて対応できたウキナは地面から飛び退き、竜の追撃からは逃れる事ができた。


 攻撃を外した隙を魔王は見逃さず、魔法で竜の動きを一時的に留める。


「……こっちも、この規模の魔法を行使し続けるには魔力の回復が流石に追いつかないな」


 先程までであれば押さえ込んでいる間にウキナが一撃入れることくらいは出来たのだが、竜は即座に拘束を破るとウキナへと襲いかかる。


「っ、【諸刃鎌】!」


 不吉なオーラを纏った鎌の凶撃は自身にも傷を付けるが、竜の強襲は何とか防ぎ、僅かながら残りの2撃が鱗を削る。


 その攻撃を後にして、竜は大きく距離を取って翼で宙へと留まった。


「……形態変化では無いわね、大技かしら?」


 第3形態目では、第1形態で行った距離を取った堅実とも取れる立ち回りを辞め、魔法もブレスも火力と速度に極振りしてこちらを確実に潰しにきていた竜だ。


 この行動も火力を重視した物だと想定すると、距離を取った事からも範囲または命中率に長けたものが来るとウキナは予測する。


 その予想は正しかった様で、竜はその位置で開いた口の中にエネルギーを集中させ始めるという明らかな大技の準備をし始めた。


(本来なら阻止に行くのが定石だけれど……)


 それが可能では無いと判断したウキナは次善策を選択する。


「下がるわ!」


「わかった」


 魔王と共に後方へと下がる。


「全員大技が来るわ! 全力で備えて!」


「「……っ!」」


 ウキナの警告を聞いたルギとトウカと魔王は全体をカバーできる様に防御態勢を整え、更にその前方でベア丸が障壁を展開する。


 ガチガチに固められた防御の上から、竜は蓄えたエネルギーを炸裂させる。


 もはやそれはブレスなんてものでは無く、まるで超高エネルギーを持ったレーザー兵器や光線のような威力であった。


 その光線はまず、障壁を貫きベア丸の右腕部を破壊。

 更にルギの流体金属も易々と砕き、トウカの多重な防御魔法でもほとんど減衰されずに貫き通してしまう。

 幸い、魔王の膨大な魔力が威力を分散させることに成功するものの、ほぼ全員を大幅に消耗させる結果となってしまった。


 周囲に煙が舞う。


「けほけほっ……皆無事?」


「無事だけれど……完全にガス欠だ、しばらく大規模な魔法は使えないね」


 全員無事な様子ではあるが、それぞれが満身創痍な様子で後衛組に関してはもはや無力化一歩手前であった。


 だが、そこで三人分の人影が飛び出す。


「ちょっ……貴方達!?」


「ごめん、説明してる暇は無さそうなんだ! カナ、クロ、行けるね?」


「うん、大丈夫、私は行けるよ!」


「おう、俺も平気だ、さっき立てた作戦通りで良いんだよな?」


 そう言って三人は竜へと向かっていく。


 そんな三人に向かって竜は何発かの火球と魔法陣からの白炎弾を放った。


「はぁっ!」


 それをカナが恐らく【白砂姫の摩砕】の効果によって勢いそのままに蹴り飛ばす。


 飛ばされた火球は火柱を上げて燃え盛り、白炎弾は弾ける。


 そうして突き進み続けたカナ達は【瞬歩】を使って竜に肉薄する。


「【強打Ⅳ】!」


 そうしてカナの打撃が炸裂する。


 だがしかし、【白砂姫記憶】に【エンシェント・スイッチ・エンチャント】をかけた状態でも竜には傷1つつかない。


 竜はそのままカナに爪を叩き着けようとする。


「おっと、動きは封じさせて貰うぞ?」


 クロが動きを封じるようと、スキルを使って竜の体に鞭を巻き付ける。


 それによって一瞬だが竜の体は拘束された。


 だがそれでも、今度は至近距離からのブレスが放たれようとしていた。


「っち、頭に巻き付けられればブレスも封じられたのかね」


「無い物ねだりしても仕方が無いさ。ここは私に任せて、【聖騎士の守護領域】【不動の死構】!」


 ルユがスキルを使用すると足下に光の陣が発生する。


 竜はお構いなしにブレスを放つが3人共その場で凌ぐことが出来ていた。


「これはっ……!?」


「ダメージを肩代わりするスキルと動けない代わりに効果中はHPが1未満にならないスキルだよ!」


 そういうルユは光の陣の中心に剣を突き立てダメージを耐えている様だった。


「私は大丈夫だからカナ行っちゃって!」


「俺もできる限り竜をこの場に留める!」


「わかった!」


 そうしてカナは前を向き竜に再度打撃を重ねる。


「【乱打Ⅲ】【回し蹴りⅣ】【掌打Ⅳ】【震脚Ⅱ】【二段蹴りⅢ】【ムーンサルト】【踵落とし】【瞬撃】【強打Ⅳ】――!」


 今まで獲得してきた怒濤の基礎格闘スキルの嵐が竜へと殺到する。


 そうしてカナが最後の打撃を放ったと同時……。


 パキッ


 竜の全身を纏う鱗の一点、ウキナが最初の形態の時に砕いたのと同じ鱗へとヒビが入るのだった。

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