閑話 ――ポーション事情(前編)
多分ほとんどの人に忘れられているだろう設定。
トウカの職業は《高位プリースト》であると同時に薬剤師系の生産職でもあり、調合のエキスパートです。
「それじゃあ、ラシュロン戦に向けて各種ポーションの調合をお願い、できれば各種回復結晶も頼みたいかな」
「はーい、取り敢えず集まった材料で作れるだけ作っておきますね」
「……」
「どうかしました、お兄ちゃん?」
「いや、なんでもないよ」
「そう?」
そう言って私は自分のアトリエへと転移する。
兄の何か煮え切らない態度は気になったものの、これからの作業に没頭するため私こと≪高位プリースト≫のトウカ、現実では優冴の妹、瑠璃鐘桃香が思考を切り替えて作業の準備をする。
今日は兄からポーションの調合、作製という頼まれ事があったのでこれからその作業を行うのだ。
「これで準備完了……っと」
私は材料を並べてポーション調合の準備が整えた私は早速作業を開始した。
その手順についてはまず、材料である幾つかあるモンスターの素材をすり潰して粉状にする。
そして粉状にした後は各種分量を調整しながら水に溶かし、ポーション瓶と一緒に並べて生産様のスキル【調合】を使用して……完成だ!
「よし!」
私はその出来に満足する。
どうでしょう、とても簡単そうに見えるでしょ?
……え?
簡単すぎる?
たしかに私も、ここだけを切り取ったらそう思ってしまいますね……。
ですが、このゲームにおける調合などの生産システムは、こう見えて結構奥が深いのです。
本来、調合には煮込みなどの相応に色んな作業が必要となるのですが、なんと【調合】のスキルによってその辺りの作業は全てすっ飛ばす事ができているのです!
所謂、オート機能ですね!
これで生産初心者さんも安心です!
え、それなら皆スキルを使って生産するだろうから意味が無い?
ふっふっふ、そこがこのゲームの生産システムの肝となっているのです!
【調合】のみならず、生産職のオート生産スキルには様々な要素が絡み合って成功率と評価ランクが算出されます。
まず、例として調合において一から十まで、スキルを使用せず全ての手順を正確に手作業で行えば成功率は100%と評価ランクは通常手に入る性能の平均1.5倍くらいになります。
そしてその反対の例、調合材料をそのまま適当な分量でおいてスキル【調合】で作製した場合は成功率10%と評価ランクは通常手に入る同名アイテムと比べて性能が平均0.4倍くらいになってしまいます。
この2つは極端な例ですが、ここからスキルの熟練度、アイテム毎の生産熟練度、アイテムの生産難易度、加工状態によって成功率と評価ランクは増減するのです。
リリース初期には、上級緑ポーション(かかったコスト、失敗合わせ通常の20倍、性能初級ポーション以下)という上級ポーション(笑)と呼ばれてしまうものを作製してしまったプレイヤーが出た事もありましたね。
因みに、失敗した場合にできるのは只のゴミというストレージを圧迫するだけのクソアイテムが出来上がります♪
料理などだと希にダークマターっていう珍しいアイテムが出来ることもあるらしいのですが、調合では今の所そう言うのは発見されてないですね……。
え?
それなら全て手作業で作製した方が良い?
たしかにそれなら高性能なポーションを作製できるのですが……、8人分が使用する各種ポーションを全て手作業で作った場合にかかる時間を知りたいです……?
……って事で、ここからが私の腕の見せ所でした!
成功率をできる限り落とさない様、ある程度手作業で加工した上でスキル【調合】を使います。
そうすることでこのように数百本単位のポーションをまとめて作ることができたのです!
因みに性能は1.08倍くらいですね。
良い生産プレイヤーはこのようにコストと時間と性能の兼ね合いを巧く調整して作るのです。
どうです?
面白そうじゃありませんか?
……そうして心の中で一人芝居をし始めていた私はポーション類をストレージにしまい……次の製作物に移るのでした。
もうちょっとだけ続きます。




