閑話 ――記録とアート
ちょっとだけ重要回なので、本編に入れるべきか迷いました。
大きく広がる森の中、崖の様にも見える岩山に空いた大きな穴の中では、一軒の家が建っていた。
その家の中では1人の少女がソファに座って半透明の浮かぶパネルを介し、ネットサーフィンしている。
「ウキナってよく家の中だとそうしているけれど、何を見ているの?」
そんな彼女の様子が気になり、声をかけた女性プレイヤーはカナだ。
今は2人で自由に、ゆっくりとした時間を過ごしている所だった。
「んー、普段は情報収集ねー。でも今はアートダイアリーを眺めていたわ」
「アートダイアリー?」
「簡単に言えばゲーム内で撮った写真を載せる所ね。ほら、これとか」
そう言ってウキナは自信の見ていたパネルをカナへと向けるよう操作し、拡大表示する。
そこには以前、カナがこのゲームを始めた日に見た様な、沢山のプレイヤー達によって撮られた写真が並ぶサイトが映し出されていた。
「あれ、幾つか私にも見覚えがある写真がある……」
「多分カナが見た写真は、此処以外にも写真を載せていた人達による物ね。こっちのは公式サイト」
「へぇー……」
そうして、カナはその写真を眺めていく。
そこにはプレイヤー自身をコーディネートし、自撮りした物。
自身がモンスターと戦う姿をできる限りカッコ良く見せて撮った写真など、色々な写真が飾られていた。
只の風景画や、絶景と呼べそうな景色を撮った物まである。
「何か、こういうのって良いね……」
色々な写真があり、他のプレイヤーの日常を感じさせる写真は見ていて何故だか飽きない。
このまま何時間か眺めていられそうであった。
「でも、ウキナはどうしてこんなのを見ていたの?」
ふと疑問に感じたカナはパネルから目を逸らし、ウキナに視線を送る。
失礼ではあるが、ウキナにこのような物を眺める趣味があるのは意外なのである。
「単なる暇つぶしね。こう言う画像からスキルの使い方のヒントを得たり、希に珍しいモンスターとか素材が映り込んでいたりもするから」
「あー」
その最も彼女らしい理由を聞いて、カナは納得する。
「何1人で納得したみたいな顔してるのよ」
「いや、ウキナらしいなーと思ってさ?」
「何よそれ……」
そんなカナの反応に、ウキナはため息混じりの苦笑いを返した。
「でも、そうだなー……私も皆とこう言う写真撮ってみたいかも」
「あら、カナはそういうのに興味あるの?」
「ちょっとね。沢山撮れるならこのゲームの色んな風景も撮ってみたいし、私自身が戦ってる姿を見てみたいし、それに何より……皆との思い出は、できる限り写真にして残しておきたいなーと思ってさ」
そう言うカナに対して、ウキナは自身の持っていた1つのアイテムを思い出す。
「それなら、良いアイテムがあるわよ」
ウキナは自身のストレージを操作するとそのアイテムを取り出した。
結構前に手に入れて埃……はゲームのため被っていないが、しばらくその存在を忘れられていたアイテムだ。
取り出したアイテムは一つ目の球体型機械人形。
そのボディは真っ白で一つ目部分は紅色だ。
それはウキナが宙で手を離すとカシャカシャと3つ程アンテナを伸ばし、空中に自立浮遊し始めた。
「これは?」
「多機能型のカメラアイテムね。ゲーム内で撮れる写真はデフォルト設定の他に、こういうアイテムを介して撮ることもできるのよ」
「へぇ~」
カナがその浮いた人形を指でつつくと人形はフワフワと揺れる。
「……ちょっと可愛いね」
「気に入ったなら上げるわよ」
「良いの?」
珍しく食い付きが良いカナ。
余程お気に召したのだろう。
「えぇ、結構高レアリティのアイテムだけれど、ストレージの奥に忘れ去られていたぐらいだしね」
「それって、貴重何じゃ……」
高レアリティという言葉に反応し、少し遠慮してしまうカナ。
「どうせ持ってても適当に換金されるくらいだから気にしなくて良いわよ。カナに使って貰った方が良いわ」
「そっか……、それなら貰っちゃおうかな…」
受け取る決心がついたカナはそのカメラを両掌の上浮かべる。
「心なしかカナに似合っているしね、使い方は私が教えて上げるわ」
「うん、ありがとうウキナ!」
そうして、ウキナに使い方を教えて貰ったカナが撮った最初の一枚の写真は。
まるで必然だったかの様にソファに座る2人のツーショットになるのだった。




