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閑話 ――先輩と後輩

あれー、頭の中では500字くらいのエピソードだったんだけどな……。

 クロのお店にて、ゴーレムを制作中の少年とそれを後ろから見る青年が居た。


「そう言えば、ルギはカナと中学の時は同じ部活だったんだっけか?」


 青年の言葉に少年は工具を操る手を止める。


「そうですけど、急にどうしたんです? クロ先輩」


 少年は青年の問いに振り向いて応える。


 同じ工房メインの生産職同士、ゲーム内では特に2人はよく話す事も多いようだ。


「いや、俺達は高校……というか、よく話すようになったのは最近だったからな。中学の時はどうだったのかと思ってな」


「別に普通ですね。今と特に変わりありませんよ」


 そう言って、ルギは作業に戻る。


「そうなのか? 結構仲の良い先輩後輩だったのかと思ったんだが……」


「先輩は陸部でも、速い上に可愛いって男女共に人気ありましたからね。人当たりも良かったので、誰に対してもあんな感じです」


「そうか、じゃあ意外と関係は俺達とあんまり変わらなかったりするのか?」


「そうですね……」


 ルギは作業を続けながら昔のことを思い出す。


(僕と……奏先輩との関係かー……)



 ■



「君達が新しく陸上部に入った一年生かな? 私は女陸三年の黒崎奏! よろしくね!」


 奏先輩との最初の出会いはこんな感じだ。

 三年生である奏先輩と僕達新入部員の顔合わせを行っている至って普通の光景だろう。


 しいて普通で無い所を挙げるとするならば……。


「ちょっと、奏先輩! 今日はまだ仮入部日なのでまだ入ったわけでは無いですって!」


「あれ、そうだったっけ?」


「去年も私達に同じ事してたじゃないですか! しっかりしてください!」


 恐らく1つ下の後輩に怒られている奏先輩。


 そう、この日はまだ仮入部日だった為、僕達は正確には新入部員では無い。


 既に心に決めて選んでいる人も中には居るだろうが、お試し感覚で来た見学者も沢山居る。


 実のところ、僕も他の部活とまだ迷っていたため後者の内の1人だった。


「あちゃー……でもいっか。この中にも実際に部活に入る人は結構居るだろうし……その時はよろしくね!」


「も~、奏先輩!」


「ごめんごめん、すぐ戻るよ」


 そう言って、奏先輩は戻って行った。


(何か抜けてそうだけれど良い人そうだな……)


 この時思ったことはこれぐらいだったのだが、いやに印象だけは強く残っていた事を覚えている。


 尚、その後の練習風景で1人だけ独走状態で走る奏先輩を見たときには、更に印象づけられたものなのだが……。


 結局、僕は特にコレといって入りたい部活は無かったので陸上部に入る事になった。


 正直、あの日が印象的で、どうせなら部内の雰囲気が良いところに入りたい、そう考えただけの結果だ。


 実際、その判断は正しかったようで入ってからも部内の雰囲気は良く。

 とことん本気で取り組む人も、良くも悪くも部を楽しもうって人も居た。


 僕はやるからには、そこそこの結果は残したいタイプなので、それだけ充実した日々は送れていたはずでである。


 先輩との関係については……僕の方には相変わらず奏先輩の噂などが嫌でも耳に入るぐらいだったが、先輩は短距離、僕は長距離で練習メニューも違う為、特に関わることもなく向こうは多分僕の事など、印象にすら残らず引退していくのだろうと思っていた。


 そうでないと知ったのは初めて出場する大会前の事だ。


 1人残って練習をしていた僕に、先輩が話し掛けてくれた事があったのだ。


「こんな時間まで練習?」


「はい、大会前にできるだけ記録を伸ばしておきたいと思っていて……先輩は?」


「私はもうすぐ引退だからねー。まぁいつも関係無く最後まで居る気がするけれど……そうだ!良かったら一緒に走らない?」


「えっと……良いんですか? 先輩って短距離……」


「気にしなくて大丈夫だよ。ほら、走ろ?」


 そう言ってしばらく先輩は僕にフォームなどのアドバイスをしてくれながら、一緒に走ってくれたのだった。


 今でこそ余り見せてくれたことの無い、当時の真剣な顔は今でも印象に残っている。


「……先輩は何で陸上部に入ったんですか?」


「んー、私は特に……体動かすの好きだし、走るの楽しそーとかそんなくらいかなー?」


 謎の覚悟をしながら聞いてみた質問に、思っていたよりも軽い返答が来たことで僕は肩すかしを食らう。


「……もしかして、何か重めな理由とか期待してた?」


「……少し」


「あはは、友達や他の後輩からもよく言われるんだよねー……」


 そうやって少し困り顔を見せる先輩。


「でも……陸部に入ってみて、自分の伸びていく記録を見たりするのは結構好きになったかな。変わったのはそれくらいだけれど、入った意味がちゃんとあったと私は思えているよ」


 その言葉を最後に会話は1度途切れた。


 僕がこの言葉に、どう思ったかは割愛させて貰う。


 走り終えた後、僕は何故、こんな先輩がどうしてここまで教えてくれるのか気になって聞いてみた。


「毎日、遅くまで練習してるから気になっちゃって……もし大会で良い結果を出したくて練習しているなら、私が力になれないかと思ったんだけど。もしかして迷惑だったかな?」


 その不安そうに尋ねてくる先輩の顔に驚き、僕は慌てて否定する。


「いえ、迷惑だったなんてとんでもないです! こちらこそすみません! 僕はただ、大会に出るのなら恥ずかしい結果にはしたくないなーとか、そのくらいの気持ちで……」


「え、そうだったの!? 私はてっきり、君が仮入部の時から居たから結構本気な子だと思ってて……じゃあ、やっぱり私連れ回しちゃってるじゃん!? ごめん、勝手に練習に付き合わせちゃって!?」


 謝ったつもりが、かえって不安を煽ってしまった様で先輩は余計にあわあわしてしまう。


 そんな光景が何処か面白おかしくて僕は後先、考えずにこんな事を言ってしまった。


「でも、僕も前よりは陸上部を選んで良かったと思えそうです。これからも良かったら僕に教えてください、奏先輩!」



 ■



「そうですね……僕と()()()の関係は先輩と後輩です」


「ん? 俺とルユもそうだろ?」


 クロは何でわざわざルギがその様に言うのかわからず、困惑する。


「少し違うんですよ」


 少し笑みを浮かべながらそう言うルギがわからず、クロはますます困惑する。


 そこへ来客がやって来た。


「ルギ君! ゴーレム作ってるって聞いたんだけれど本当?」


 少し遠くの方から手を振るカナに、ルギは振り向いて返事を返す。


「本当ですよ! ですが、完成はまだまだ先の話です。見るのは完成してからのお楽しみと言うことで!」


「そっかー」


 その言葉に残念そうに納得の言葉を吐くカナ。


 恐らく興味の赴くままに、様子を見に来たのだろう。


「先輩、気分転換に外を一緒に走りませんか?」


「あ、良いね! 久しぶりに一緒に走ろうよ!」


 そう言って、()()()()()の2人は外を駆けに、店の外へと出るのだった。






「あいつ、何考えてるんだ……?」


 当然、今のカナの速度にルギが着いて行けるはずも無く。

 カナはカナで調子に乗って迷子になり。

 ルギはウキナによって絞められるのだった。

奏「ところで、あれで良かったの?」

2年のとある後輩A「奏先輩、あれで印象づけバッチリです!」

2年のとある後輩B「先輩可愛いので去年と同じく、これで何人かは部員確保できますよ!」

奏「そんなことは別に無いと思うよ?」

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