閑話 ――模擬戦 ウキナVSカナ & ルユVSカナ
時系列的には第10.5話、閑話①と閑話②の間の話です。
――ウキナの家
「あ、今日はラシュロン戦に向けて模擬戦としようか」
「え!?」
「珍しいわね。ルユが唐突に話を持ち出すなんて……」
ウキナの家で今日する事を話し合っていると、ルユが唐突にそんなことを言い出した。
因みに今、ウキナの家に集まっているのは私とウキナとルユの3人だけである。
「模擬戦って何をするの?」
「メニューに決闘モードってあるでしょ? それを使うの」
「えっと……これかな?」
メニューを操作し、アイコンを探すと2つの剣がぶつかり合っている様なアイコンを発見する。
「そうそう、多分それ~」
ルユは私の手元を見ながら返事を返す。
「多分それって……ルユ、あんたは見えてないはずでしょ……」
「んー、指の動き的に多分そこで合っていると思うけど……2つの剣のアイコンの奴」
「あ、やっぱりこれだ!」
他に特徴が合うアイコンは無いため、これで合っているだろう。
「……はぁ、まぁいいわ。取り敢えずそれを使えば色んなルールを設定した模擬戦が出来るってわけ」
「なるほど……でもなんでまた急に?」
ウキナならともかく、ルユが何の脈絡も無くこういう話をし出すのは珍しい。
それも私達3人しか居ない今言う意味がわからなかった。
「カナが何処まで動けるのかを作戦を立てる上で知っておきたいと思ってね。それと、特に私達2人の力量もカナには知っていて貰いたい」
「えっと、今まで何回か一緒に戦っているから大丈夫だと思うけれど……」
「1VS1の時の戦い方を知っておいて欲しいんだ。死神は勿論、私も本来ソロで活動する事が多いから、そっちが本命なんだ」
「?、そのボス戦ってパーティで戦うんだよね?」
「重要なのは、私達がソロで戦ったときの力量を知って貰って、それで負けたということを認識して欲しいって事なんだ」
「ああ、そういうことね。確かにそれはしておいた方が良いかも」
「……?」
いまいち話の意味が掴めない。
ルユ達がしたい事はわかるのだけれど、それが何故重要視されているのかわからないのだ。
「……カナはデスペナルティを受けさせるわけには行かない都合上、下見ができないって事になる」
「ああ!」
私はルユにそこまで言われて理由をようやく察せた。
たしかにそれなら納得できる。
「だから私達の強さを知ってもらって、そこから相手がどれだけ強いのかをある程度把握しておいて貰おうっていう魂胆ね」
「なるほど……」
「理解して貰った様でなによりだよ。それじゃあまずは……」
「私から行くわ。結果が分かりきっているのが先の方が良いでしょ?」
そう言ってウキナはルユの言葉を遮って行った。
「おお、凄い自信。1度負けているのに」
「あれは5VS1だったからでしょう? 1VS1ならカナでも絶対負けないわよ」
その言葉に私は少しむっとする。
最近、自身の強さにも自信が持ててきてそうそう負けないと思ってきた所なのだ。
幾らトッププレイヤーで、パーティ戦で勝てただけだったとしても、私の戦い方が通じていたのは事実だ。
トップ故の自信なのだろうが、絶対負けないなんて言われれば少しムキになったとしても仕方無いだろう。
「あら、珍しくムキになってるわねカナ。これは思っていたより楽しめそうかしら」
「そんなこと言ってて、足下掬われる事になっても知らないよ?」
そうして始めた私とウキナの模擬戦、その結果は……。
15戦0勝15敗、私の完全敗北でした。
しかも、一度もHPを2割以上削れなかったのである。
「どうかしらカナ? これがトップの実力よ?」
「うう……1回も勝てなかった……」
避けれるが当てられない……そうなってしまえば技量の差と武器の差によって、段々と押され気味になってしまった私の方が、HPが尽きるのは早かった。
「まぁ、そうなるだろうね。条件的には流石にレベルが同じならカナが勝つんだろうけれど……それはウキナのPKによるアドバンテージと変わんないし、PSは、種類は違えどほぼ同格かな。後は単純にプレイ時間の差と効率の問題」
「そう、のんびりしていると抜かされるって事ね。気をつけておくわ」
私達の戦い方を見て、ルユが見解を述べてくれる。
「PSの種類ってどういうこと?」
「2人とも結構アバターの操作が巧いけれど、ウキナの場合はスキルの使い方の巧さだね。適切なタイミングで適切なスキルを使っているとかそういうの。それでカナの場合、それとは真逆でスキルとかは全て直感的だけれど、ウキナ以上にとにかくアバターの操作が繊細だからウキナのPSと釣り合いが取れているって訳」
「へぇ~……」
理解出来るような……出来ないような……そんな感じだ。
「何か、頭が痛くなる話ね」
「まぁ、話半分で聞いておけば良いよ。これでカナもウキナの強さはわかっただろうし」
「よーく身にしみました……」
自分でもかなり強くなったと思っていたけれど、案外私には弱点が多い。
1VS1となって弱点をカバーしてくれる人が居なくなり、それを的確に突いてくるウキナには勝てないことを思い知らされたと同時にウキナの万能差加減がよく身に染みた。
とにかく隙が無い為、ステータスによるゴリ押ししか手段が無いのだ。
その上で全プレイヤー中最大Lv.を維持されているので今のままでは勝つ手段が無い。
私は№1の実力を思い知らされたのだった。
「それじゃあ、今度は私と戦おうか」
「今度はルユかー……そういえばルユとは前にも1VS1で戦ったこともあったよね」
そう言って私はイベント戦の時のことを思い出す。
「あの時は決着つかなかったからね。今回はちゃんと決着をつけようか」
「お手柔らかにお願いします……」
この時の私は多少なりともルユにだったら勝てるかもと思っていたのだ。
だって、全プレイヤー中№2のレベルを誇る魔王さんのレベルがLv.86なのだ。
ルユのレベルはそういえば聞いた事無いがLv.86よりは低いはずなのだ。
それに対して、今の私のレベルはLv.52だがステータスだけならLv.104に匹敵する。
実際の強さ的にはそこまでの力は無いが、それでもそこまで大きな差も無く戦える位には強いはずなのだ。
「それじゃあ始めるよー」
そうして始まった私とルユの模擬戦、その結果は……。
30戦2勝28敗。
ウキナの時より回数が多いのは単純に戦闘時間が短いからだ。
「少しは手加減しなさいよ……」
「それ君が言う?」
戦闘を終えた私は疲れてウキナの家のテーブルでうつ伏せになっている。
ルユはぶっちゃけてしまえばウキナみたいな理不尽な強さは無かった。
ただ戦い方が余りに的確過ぎるのだ。
2勝は最初の2戦であり、その後全敗。
しかも回数を重ねる毎に、戦闘時間は短くなっていくおまけ付きだ。
最後の方は全ての攻撃にカウンターを合わせられ、回避も予測されての完敗だった。
「まぁ、これが私の戦闘スタイルかな。基本的に相手の行動を予測して詰めていく。これだけだよ」
「最後の方は怖かったです。というか、2人共それでどうして負けたの?」
ルユのやっていた事が言葉で言うほど簡単じゃ無いことはわかっているので次の話題に移る。
正直、あれだけの技量があって2人が負ける姿は想像できなかった。
「純粋に私達が太刀打ち出来ないレベルで強いのよね」
「私も、幾ら予測ができても対処不可な動きを要求されていたら為す術が無いからね」
「そんなに……?」
「うん、でも私はカナが私達とならウキナに勝てたように多分、全員が協力すれば多分竜にも届くと思っている」
「その為の模擬戦……かー……」
「そういうこと、今回の話、本当にカナにはリスクばかりでメリットは少ないんだけれどやってくれるかな?」
そこで私ははっきりと体を起こして言う。
「うん、大丈夫、まだまだ私が弱いことも今日は自覚したけれども皆と一緒に戦う為に決戦の日まで頑張るよ!」
そう言って私はまだまだ上を目指して頑張ることを決めるのだった。
ランキング1位&3位とタイマンで戦ってもそこそこ戦えるのに、更に強くなろうとする初心者プレイヤー




