第11話 古代光炎竜・ラシュロン(4) ――未知なる戦いの前
「よしっ!」
自身の狙い通りになったウキナは喜びの声を上げる。
「行けた?」
「多分ね、前に奴が第3形態へ移行したときと同じモーションだよ」
「それじゃあ次の行動は……」
竜は傷を負い、溜め込んだエネルギーを霧散させながら数歩よろめいていたと思うと、急に四つ足状態で地に着けていた前足を高く上げる。
「姉さん! 早く先輩を連れて戻って来て!」
ルギが叫ぶ頃にはウキナは完全沈黙状態のカナを連れて竜から離れようとする。
そして――。
竜が足を振り下ろすのと、散っていたエネルギーが竜に再度、とてつもない勢いで集まるのは同時だった。
竜を中心に激しい爆発が起こり、ウキナとカナは吹き飛ぶ。
「っと……」
「……っ」
カナはルユが抱き止め、ウキナはルギの流体金属をクッションにして受け止められる。
「大丈夫?」
「大丈夫……ってあれルユ?」
「姉さん、賭けに出過ぎだよ……」
「うるさいわね、何とかなったんだからいいでしょ」
「そういう問題じゃないよ全く……」
ルユの呼びかけにもカナはまだ感覚が戻り始めたばかりなのか、ルユに足から地に降ろされているという謎の状況に表情には?を浮かべ、ウキナは弟に叱られている。
「まぁ、作戦には状況に応じて臨機応変ともあったんだから良いじゃないか」
「それより、あっち……凄いですね。初めて生きた状態でこの形態まで行けましたよ」
トウカが指す方向には完全復活した竜がこちらを見下ろすようにして翼をはためかせて宙に浮いている。
纏う白い炎や体に生えた結晶は更に輝きを増している。
「如何にも本気形態って感じよね」
「……何か綺麗」
「カナもそう思う? 私も同感かなー、何か神々しいし綺麗だよね、コレ」
「俺には眩しすぎて少し目が痛いな」
「私にもちょっと眩しすぎますねー」
「第1と第2形態は様子見だったって所ですかね……」
第3形態に突入した竜、ラシュロンの姿を見て各々が感想を述べる。
「……君達少し呑気過ぎない? 第1と第2でも散々苦労したのに、ここからが本番ですって言われている訳だけど?」
ルユ達の様子に魔王は呆れた様に苦言を呈する。
「そう? 私は寧ろ楽しいけれど」
「久々に歯ごたえのあるモンスターだもの、このゲームを始めたばかりの頃を思い出すわ」
「全く君達は――」
竜の様子見が終わったようで、こちらに特大級の白炎球を放ってくる。
それを合図に全員は元の陣形に戻り始めた。
先程と違うのは魔王も最前線に立ち始めたぐらいである。
そうして魔王は歩きながらマジックスキルを使い、魔法陣から発射された幾つかの魔法で竜のブレスを相殺する。
「――僕も同感だね」
弾けた火の粉が降り注ぐ先で、竜は次の行動に移ろうとしていた。
「皆、ここからは正直情報が全く無い! だから色々と試しながら行くよ! 最悪負けてもいいから次に活かせる情報を持ち帰るんだ!」
「要はいつも通りって事だな」
「このまま倒せたらラッキーぐらいで行きましょうね」
「勿論、倒すつもりで挑むのもいつも通りですよね?」
「当然!」
そうして第3形態に入った竜が本格的な行動に移る前に士気を高める。
同じタイミングでウキナとカナは別の会話を繰り広げていた。
「カナはどうする?」
ウキナの言葉にカナは自身に持たされた1つのアイテムを見る。
【帰還結晶】、離脱アイテムだ。
砕けば即座にパーティが解消されて帰還できる。
カナだけは唯一、一度もデスペナルティを受けたことが無かったのでこの戦闘はリスクが高いのだ。
ルユ達からはそれもケアしてこの段階に入った時点で帰還し、具体的な攻略法を見つけてから再度挑めば良いと言われている。
今がその時なのだ。
それをカナは……。
「うん、やっぱり私も皆と一緒に戦いたいかな。こっちの方が楽しいよ」
そう言って笑顔でカナは【帰還結晶】は取り出さず、戦闘の準備をする。
「そう、私もカナと一緒にこんなボスと戦えるのは嬉しいわ!」
ウキナも笑顔で戦闘準備に入る。
全員が準備完了となった時、竜は本格的に行動を始めた。
[補足]
ルユ達の言う形態変化とは正確には違います。
彼女達は便宜上、そう言っているだけです。
第2形態は正確にはHPが一定値まで下がった事による行動パターンの変化
第3形態はHPが0になった事による形態変化です。
よって正確には第3形態目が第2形態なのですが、ややこしいので彼女達もそう言っているだけです。
彼女達もそれは理解して言っています。
ですので、今後も形態変化=HPによる行動パターンの変化&形態移行の認識でお願いします。
因みに、第3形態目の移行に結構余裕があるのはそれが原因だったりします。
第2形態目最後の爆発と第3形態目最初の火球は固定行動です。




