第11話 古代光炎竜・ラシュロン ――決戦前日
久しぶりの本編
攻略戦前日。
ほとんどの準備を終えた攻略戦に参加するメンバーは、ラシュロン戦に備えた最終調整として全員が集合していた。
「やぁ久しぶり、この前のイベント戦以来だね。ルギと死神に関してはもっと前か」
当然、魔王もこの場には集まっていた。
「お久しぶりです、魔王さん」
「あー、君はたしかカナちゃんだったっけ……? この前は驚いたよ。幾ら捨て身の攻撃だからって、まさか初心者に2000近くもHPを削られるとはね」
魔王はカナの事も覚えていた様で前回のイベントでのカナの健闘をたたえる。
「9000近いHPを持っててよく言うよ、あのくらいなら回復も間に合うんだろ?」
「まぁね、でも驚いたのは事実さ。あれからかなり時間も経っているし今回は味方の様だから期待しているよ」
「はい、よろしくお願いします!」
「正直、癪だけれど魔王も今回の役割だと外せない。ヘマをしないよう頼むよ」
「あれ相手だと全員外せない役割を持っているのだけれどね」
そんな事を言いながら死神とPSトップの剣士、魔王は作戦を詰めていく。
カナ達は何をしているかと言うと、ルギの作成したプレイヤー枠のゴーレムを眺めていた。
「これは凄いなぁ……」
「凄いですね」
「俺も少し手伝ったが見事な出来映えだな」
「自分でも間違い無く最高傑作だと思っています」
そのゴーレムは凄くずんぐりとしているが、かなり大きくてしっかりとした熊の様なゴーレムであった。
その体には至る所まで線が刻まれ、蒼い炎の様な高出力のエネルギーが、隅々まで行き渡っているのを感じる。
「カナ先輩、かなりの素材の提供をありがとうございました。おかげでとても良い仕上がりです」
「ううん、気にしないで。お役に立てたなら何よりだよ」
そう言ってカナは微笑んだ。
「……こうしていると少し前を思い出しますね。先輩がまだ中学に居た頃の」
「そうかな?」
「そうですよ」
そう言ってルギも笑う。
「今回は完全に防御特化型だな」
「パワーもありそうですけれど、今回は守りの要ですね」
そんな2人をよそにクロとトウカはゴーレムを見上げる。
その大きな巨体はパワーがありそうな見た目だが、今回の戦いでは火力では無く盾役を務めるらしい。
「名前とかはもう決まっているんですか?」
「特にまだ……決まってませんね」
「なんだ、まだ決めてなかったのか」
「それじゃあ今決めちゃおうよ、ルギ君!」
「え、うーん……」
そう言われ、考え込んだルギはしばらくすると何か思い付いた様で顔を上げる。
「それじゃあ『ベア丸』とかどうですかね?」
「これまた安直だな、熊っぽいからか?」
「はい、流石に安直過ぎますかね?」
「というより、いやに可愛い名前ですね……」
「え?」
「わ、私は良いと思うよ『ベア丸』!」
そんなこんなで名付けられた熊型ゴーレム、ベア丸は軽い動作確認を終えると動きを止め休眠状態に入る。
全力の性能は明日、実際に本番で戦う時でのお披露目にするらしい。
「燃費が悪いのは欠点ですね、エネルギー貯蔵容量は大きいですがコストが余りにも高すぎます」
「まぁ、今回使う分には仕方無いだろう。今日は休ませて明日フルチャージで戦える様にしておくといい」
「はい、そうするつもりです」
「おーい、作戦会議は終わったよー。今から全部説明するからこっちに来てくれない?」
ルユの呼びかけに対して私達は集まり、作戦の説明がされる。
情報が限られている為、臨機応変になるところもあるが、わかっている所は緻密な作戦が立てられ、未知の部分もルユがはっきりとした根拠を説明しながら予測を立てていく。
そうして立てられたラシュロン攻略作戦は、このメンバーだからこその案ではあるが、しっかりと現実味を帯びた作戦として形になるのだった。
「それじゃあ今日の所はこれで解散。後は皆、各自でしっかりと復習して明日の戦いに望もうね!」
作戦概要を全員が理解したのを確認すると今日は解散となる。
後は明日に備えて、各自コンディションを整えるだけであった。
■
古代光炎竜・ラシュロンとの決戦の日。
私達が魔法陣で召喚された場所は夜空が広がる遙か上空だった。
地面は大きな魔法陣のようなものが足場になり、ここは事前の確認で見えない透明の壁で囲われた大きな箱庭の様になっている事がわかっている。
何となくチュートリアルで戦ったあの空間を思い出すのはわたしだけだろうか?
しかし、私はあの時と決定的に違う全てを実感する。
上空に居る私達より更に上からゆったりと翼をはためかせて降りてくるのはドラゴンだった。
しかし、チュートリアルで戦ったドラゴンとは全てが違う。
同じドラゴンのはずなのだが、何もかもが違う。
初めて見たときのあのドラゴンも中々の迫力だったが、これと比べてしまうとまさに次元が違うというものだろう。
その鱗は記憶のものより遙かに白く硬質であちこちに光と炎の結晶のようなものまで生えている。
その瞳は記憶のものより何もかもを見通していそうな程鋭い。
その爪は記憶のものより全てを切り裂きそうな程凶悪である。
その口から滾らせる白炎はあらゆるものを何も残さず燃やし尽くせそうな程神聖だ。
周囲に漂っている数々の結晶は、その身から溢れ出る膨大なエネルギーが固まったものだろうか?
その姿は、私が、私達が今まで見てきたどんなモンスターよりも強いと実感させるには十分なものだった。
そんな怪物に今から私達は挑む。
このとても楽しいと感じさせてくれるこのゲームの世界で。
竜の発する巨絶な咆吼が、この戦いの始まりを告げる合図となった。
私達の戦いはこれからだ!
……嘘です、ちゃんと続きます




