第10.5話 閑話② ――状態異常
明らかに筆の進みが良かった件、そんな話
とある更に別の日。
「そう言えば前に色んな状態異常があるって言っていたけれど、魅了とかって実際かかったらどうなるの?」
私はまた、不意に思った疑問を口にする。
今はウキナとルユと一緒に外で狩りをし、休憩がてら座り込んでお喋りをしている所だった。
「ん、あー……それは……」
「また降って湧いたみたいに急な話ね……」
私の言葉に、何故かルユは顔を赤くし、ウキナは呆れた様な顔をしながらルユを見ていた。
ルユがそんな顔を見せることは滅多に無かったので、珍しいなーと思いながらもじっと見つめる。
「魅了とかって如何にも本人の精神に依存してそうな状態異常だから、実際かかったらどうなっちゃうんだろうなって思って……、もしかして名前だけで相手に攻撃が当たらなくなるとかそういう効果……?」
流石に、ゲームなのだからスキルで本当に魅了されるなんて事は無いだろうと思いながらそう言う。
それに対しウキナは……。
「カナ……余りこのゲームを舐めない方が良いわよ? 現実と完全に分断できるからって結構世紀末なとこあるから」
「そうなの?」
余り実感が湧かない私は頭に?を浮かべる。
「何なら1回かかってみる?」
「それは辞めた方が……」
「ウキナは魅了使えるの? かかってみたい!」
「えぇ……」
私は特に考えもせず、興味本位でかかってみたいと言ってしまった。
ルユが苦笑いをしながらも気を遣って止めてくれていた時点で、引き返すべきだったと私はすぐに後悔することになる。
「本当は中身が異性じゃないと効かない結構特殊な状態異常何だけれど、私は同性にも効くスキルがあるから特大弱点のカナには簡単に効くと思うわ。それじゃあ行くわよ」
「うん!」
「【魅了の魔眼】」
後にして思えば、結構黒い顔をしていたウキナの片目が蒼の瞳から紫紺の瞳になると、次第にその瞳が放つ光はピンクがかっていくように見え、私は段々と不思議な気分になっていった。
「あれ? なんか段々……不思議な気分に……なっていくような」
凄く思考に靄がかかり、意識ははっきりせずにふわふわとした気分だった。
後から聞いた話では、この時の私はハート目になって凄くぽーっとしていたようだ。
「どうかしらカナ? その状態だと行動が一部制限されて、メニューもスキルも一切使えなくなるんだけれど、私の言っている事はわかるかしら」
「ごめん……よく……わかんない……」
朧気な意識で返事をするが、自分でも何を言っているのかわからない。
本能にそのまま従って動いているような感じだ。
ずっとウキナの目を見ていたくなり、私はウキナに近づいていく。
「……どうしようルユ。思っていた以上に深くかかっててカナが滅茶苦茶可愛いんだけど」
「君、あの戦いでもしなかったのにわざと上位スキル重ねたでしょ。そりゃ幾ら小耐性持っていても魅了特大弱点で無抵抗のカナにはぶっささるよ。後、口調崩れ始めてるよ」
2人が何を言っているのかわからないが、ウキナはルユの言葉に、はっとなり、ルユはルユで何故か私達から距離を取っている。
「そ、そ、そんなことないわよ! そういうこと言う人には実験台になって貰おうかしら! カナ、ルユが敵になったわ一緒に戦って頂戴」
「うん」
「ちょっ……!?」
私はウキナの言葉に従ってルユに拳を繰り出す。
ルユは大剣の腹を用いてガードした様だった。
「むぅ……邪魔」
私はその邪魔な大剣を蹴りで弾く。
そこでルユは距離を取ってウキナの方に何か言っているのだった。
「ちょっと、これは流石に洒落にならないんだけど!?」
「あら、私も参戦させて貰うから頑張ってね、ルユ?」
「それは流石に無理ー!?」
のどかな平原にルユの叫び声が響くのだった。
■
あれから数十分後。
「ぜぇぜぇ……凌ぎきった……よ」
満身創痍なルユだったが、見事に私達2人の攻撃を防ぎきった。
いつもより単調な攻撃しかしてこなかったので予測はし易かったらしい。
私はというと……羞恥で体育座り状態だ。
「えっと、ごめんねカナ、その……悪気は……あったけれど。ちょっと調子に乗っちゃったというか……自分の欲望に正直になりすぎたというかなんというか……」
「……ウキナのばか」
そう、魅了状態中の記憶は全部鮮明に残るのだ。
状態中の記憶は朧気なのだが、効果が切れた瞬間はっきりとした記憶となって返ってくる。
あの後も、ウキナによって最大効果時間ギリギリまで散々おもちゃにされた私は、思い出すだけで顔が真っ赤になりそうな程だった。
「たしかに私がかけて良いって言ったけれど、あそこまでしなくて良いのに……」
「えーと、ほら、今度私の家で……といってもゲーム内だけれど、カナの好きなデザート作って上げるから!」
「7回……」
「へ?」
「少なくとも1週間は毎日食べられないと忘れられない……」
「カナの為なら何日でも毎日作れるよ!」
「はぁ……それなら許すよ」
「……! よかったー!」
私が体育座りを解除すると、ウキナは飛びついてきた。
正直一刻も早く忘れたい出来事だったが、やってしまった物は仕方が無い。
我ながらちょろい気もするけれど、今は美味しい物を食べてさっさと忘れたい気分だ。
「あはは……、一応精神異常系は全般あんな感じ、意識が薄くなったり場合によっちゃ途切れたり、はっきりしてそうで書き換えられたりする時もあるよ。逆に意識ははっきりしているけれど体の制御が完全に持っていかれたりすることもある。かかったら強力な分、予備動作も大きい事が多いからカナなら大体は避けられるんじゃ無いかな」
息を整えたルユがゆっくりとこちらに近づいてその他の状態異常に関しての説明をしてくれる。
それはありがたいのだが……。
「ありがとうルユ、でもどうして目を合わせてくれないのかな?」
「……」
人の事を言えた義理じゃないが、ルユはこちらに近づいて説明をしてくれながらも私と目を合わせようとしてくれない。
ルユの顔も赤いが、きっと私の顔も赤くなっていることだろう。
(はぁー、しばらく気まずそうだなー……)
先行きが不安になりながらもその日はウキナの家に戻り、約束のデザートを食べさせて貰うのだった。
「えっと……、本当にごめんね?」
正直、こういうの描きたくて状態異常設定ができた所があるのでいつも以上に意味が薄いです。
でも、後悔も反省も全くしてません。




