第10話 古代魔闘士(4) ――作戦会議
「ちょっ……皆、どうしたの!?」
テーブルに突っ伏した4人を見て、カナは驚きの声を上げる。
「ちょっとね……、珍しいボスモンスターを皆で狩りに行ってみたんだけれど」
「ものの見事に……」
「全滅しちゃいました……」
「ええ……? 皆で駄目だったの……?」
いきなりの話に困惑するカナ。
トッププレイヤーの彼らで駄目なんて一体どんなモンスターなのだろうと疑問に思う。
「どんなモンスターなの?」
「古代光炎竜・ラシュロン、ドラゴンのモンスターだよ」
「ドラゴン……古代……」
カナの疑問にはルユが答えた。
印象強いドラゴンに、最近聞いたばかりの古代というワードを聞いて興味を引かれる。
「町の図書館とかに入ると、伝承とかでよく見かけるワードなんだが、三大古竜の一角らしい」
「光や炎を作ったとか、大袈裟な設定だと思っていたけれど、あれを見ると相応の肩書きに見えます……」
「そんな強いんだ……」
設定だけでも重々しい響きにカナは緊張する。
そこで今まで黙っていたウキナが、ガバッと顔を上げた。
「何あれ、流石に頭おかしすぎない?」
「ウキナでも駄目なの?」
「正直、あの強さは異常すぎる。何回やっても負けると思うわ……」
「そんなに……」
ウキナは全プレイヤーのトップだ。
彼女で駄目なら本当に倒せる者は居ないという事になってしまう。
「多分あれ、AIじゃなくて運営が直々に設定した特別なモンスターなんだよね、きっと……」
「どういうこと?」
急にポツリと呟いたルユの言葉の意味がわからず、尋ねるカナ。
「このゲームは、ほとんどがAIの作成した膨大なデータによるものだって事は知っているでしょ?」
「うん」
最新鋭の超高性能AIが作り出す、大量のランダムデータからなる史上最大規模のゲーム。
それがこのMakeO.S.最大のウリなのだ。
このゲームをプレイしていてそれを知らない人は流石に居ないだろう。
「でも全部が全部、AIが全てランダムに作っているわけじゃない。ゲームの根幹を作るのは当然人で無ければならないし、運営が直々に、意図して作成したデータだってあるはずって事」
「それがそのドラゴンって事?」
「多分ね。今までのモンスターに比べて手が込み過ぎてるから間違い無いとは思うけれど……」
「そっか……」
運営が直々に用意したモンスター。
特別な意味を持つモンスターなら現時点では倒されることを前提にしていない、あるいは絶対に倒せない類いのモンスターなのかもしれないとカナは感じた。
しかし……。
「倒しに行ったって事はクエストのボスモンスターか何かなの?」
「いや、幾つものクエストで得られる情報を繋ぎ合わせてようやく出現条件がわかる、どっちかというと召喚系のボスモンスターだったよ」
「それなら……」
わざわざ出現条件を隠し、突き止めたプレイヤーがようやく戦いに行けるボスモンスターが負けバトル?
ネットゲームに詳しくは無いが、制作者の意図としてそんなことをするだろうか……とカナは考えた。
「多分カナが考えている事は合っていると思うわよ」
「俺達も同じ見解だしな」
「多分、ギミックで弱体化するタイプでも無さそうでしたしね」
「制作者ができるだけ倒されて欲しくないタイプのただ強いボスモンスター、その可能性が一番高いと思うよ」
実際に戦って見た彼らもカナと同じ意見だったようで口々に自身の見解を述べる。
「……私もそのボスモンスターと戦いに行っちゃ駄目かな?」
最近レベルも上がり、足手纏いにはなっていないという自信がついたカナは、初めて自身から要望を口にする。
始めて数週間のプレイヤーがトッププレイヤーと肩を並べられるとは流石に思っていないが、足手纏いにはならないと思えるだけの自信はついたのだ。
ボスモンスターなら、職業のデメリットが余り機能しない事を確認してきたばかりなので、十分戦えると考えている。
無論、ルユからは幾つものクエストをクリアしたと聞いたので、そんな資格があるかと言われればそれまでなのだが……だからこそ、立場と相手に甘えた純粋なお願いだった。
カナも当然、それは承知の上で言っている。
それに対し、ルユ達は……。
「カナが意外と乗り気で助かったよ……」
「カナさんが居ないといきなり破綻する割に、一番旨味が無いですもんね……」
「だから言ったでしょ、絶対カナは乗ってくるって」
「え?」
当然、そんなことを一々気にする彼らでは無かった。
「元々カナも誘う予定だったんだよ、今日呼んだのはその為で行ってきたのは下見」
「こういう系って大体身にならない称号が多いからな……そういうのに興味が無さそうだし、最高級の素材も当分必要が無いカナには旨味が少ないんだ。その上カナはまだ1度もデスペナルティを喰らってないから、正直リスクのがでかい」
「でもこのモンスター、カナの回避力と火力が無いと序盤から破綻するんだよね」
「私の覚醒スキルは、パーティーを崩壊させかねないから実質戦力が落ちるし」
「だからどうやって、カナさんに乗り気になって貰うか色々考えてたんですよ」
「えぇー!?」
まさか、自身の戦力をそこまで当てにされているとは思っていなかったカナは驚く。
カナ目線では足手纏いにならない程度の自信だったのだが、他者から見たカナは既にトッププレイヤーと並べられる程に強くなっていたのだった。
「カナが乗り気なんだったら話は早いね、早速攻略会議をしよう」
「パーティの限界値は8人。ルユ、俺、トウカ、ルギ、カナにウキナと魔王でそれぞれ役割を決めとかないとな」
「第2形態までは確認できましたから、取り敢えずそこまでの確認をしないとですね」
「ちょっと待って!? パーティの人数早速1人欠けているし、魔王さんも来るの!? それに第2形態って何!? 後、そう言えば忘れてたけれどルギ君は!?」
何故か、いきなり急スピードで話が進み始めてカナは着いて行けず、頭は疑問で一杯になる。
「あー、魔王も出現条件を教えてあげたら1人で試しに行ったらしいけれど、見事に返り討ちにあったから協力してくれるそうよ」
「私としてもあいつ入れるのは不本意だけれどそうも言ってられないしね。今回ばかりは協力関係だよ」
「ルギの奴は欠けているパーティーを埋める為に、プレイヤー扱いになる魔導ゴーレムの作成だ。その関係で今日は席を外している」
「第2形態はさっき5人で下見に行った時に、ある程度削れたら明らかに行動パターンが変わったんですよね。できればリスクの高いカナさん抜きで倒しきりたかったんですが……、何度やっても無理でしたね……」
「情報過多だよ~!?」
■
そんなこんなで数日後。
「皆準備は良い?」
ルユの言葉に全員が頷く。
私達はとある火山エリアの山頂に来ていた。
火山に指定のアイテムを投げ込むと魔法陣が出現し、中に入れば古代光炎竜・ラシュロンとの決戦の場に召喚される。
ここ数日間で準備を整え、今日はいよいよ決戦の日なのだ。
「それじゃあ行くよ」
ルユがそのアイテムを投げ込むと魔法陣が出現した。
「後は作戦通りに」
その言葉に、再度全員頷きながら全員魔法陣の上に立っていくのだった。




